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5 知らない日常
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母と長倉さんが車で私の帰りを待っているため、来た道を戻ることはできなかった。
なんとかこの小屋の近くから、山道へ出る方法はないだろうかと、あちこち見てまわる。
(ここって、もとはお祖父ちゃん……誠さんが使ってた小屋なんだよね……あんな大きなイーゼルを、『うてな』まで運んで絵を描いてたんだもん、もしかしたらどこかに抜け道があるんじゃないかな……?)
予想通り、敷地の最奥の端に、今は雑草で塞がりかけているが、確かに細い道のようなものを見つけた。
「あった!」
私は手頃な長さの棒を拾い、なるべくそれで草をかきわけるようにしながら、道に足を踏み入れる。
『虫は逃げるし、なるべく汚れないで草をかきわけられるし、このほうがいいのよ?』
初めて『うてな』から椿ちゃんと一緒に帰った夜、彼女は器用に棒で草をかきわけながら、私に教えてくれた。
彼女と一緒の山道は、もう月が高くなるくらいの時刻だったにもかかわらず、ちっとも怖くなどなかった。
彼女が教えてくれる山のことや自然のことや町のことは、どれも私にはもの珍しく、今もしっかりと心に刻まれている。
(お祖母ちゃんだったんだね……)
とてもそうは見えない、あの美少女然とした風貌の彼女にぜひもう一度会いたくて、私の足は自然と速くなった。
なんとかこの小屋の近くから、山道へ出る方法はないだろうかと、あちこち見てまわる。
(ここって、もとはお祖父ちゃん……誠さんが使ってた小屋なんだよね……あんな大きなイーゼルを、『うてな』まで運んで絵を描いてたんだもん、もしかしたらどこかに抜け道があるんじゃないかな……?)
予想通り、敷地の最奥の端に、今は雑草で塞がりかけているが、確かに細い道のようなものを見つけた。
「あった!」
私は手頃な長さの棒を拾い、なるべくそれで草をかきわけるようにしながら、道に足を踏み入れる。
『虫は逃げるし、なるべく汚れないで草をかきわけられるし、このほうがいいのよ?』
初めて『うてな』から椿ちゃんと一緒に帰った夜、彼女は器用に棒で草をかきわけながら、私に教えてくれた。
彼女と一緒の山道は、もう月が高くなるくらいの時刻だったにもかかわらず、ちっとも怖くなどなかった。
彼女が教えてくれる山のことや自然のことや町のことは、どれも私にはもの珍しく、今もしっかりと心に刻まれている。
(お祖母ちゃんだったんだね……)
とてもそうは見えない、あの美少女然とした風貌の彼女にぜひもう一度会いたくて、私の足は自然と速くなった。
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