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4 燈籠祭りの夜

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(そんなに『成宮』ってすごい家なのかな……)

 確かにかなり大きなお屋敷だし、椿ちゃんのお父さんはいかにも地元の名士といったふうの貫禄と迫力の人物だった。
 椿ちゃんが自由に出かけることを禁止されていることもあるし、ひょっとすると私ごときが『友だち』と言える人ではないのではないかという疑惑さえ浮かんでくる。

(今時そんなの……って思うけど、このあたりではそれが当たり前なのかもしれないし……)

 ひそかに不安に思っていると、父が長く詰めていた息を吐いた。

「そうか……いつの間にあの子と知りあってたんだ?」

 私は懸命に説明する。

「上之社を探しに行った時、偶然会って……その次の日も、一緒に隣街へ行こうって約束して……それは中止になったんだけど、夏祭りは一緒に行く約束をしてるの」
「そうか……」

 父に心配をかけないため、上之社を探しに行った時崖から落ちてしまったことや、椿ちゃんの家へ遊びに行き、彼女のお父さんと対面したことはまだ話さないでおいた。
 そうでなければただでさえ強張ってしまった顔が、ますます困惑の表情になるような気がした。

 私と父を交互にちらちらと見ながら、ハナちゃんが口を開く。

「あの……」

 しかし、父が鋭くそれを制した。

「悪い、ハナさん。和奏には俺からちゃんと説明するから……」
「……はい」

 二人の深刻な表情を見ているだけで、『成宮』というのは何なのか、とても不安になるが、今はそれをゆっくりと教えてもらっている時間がない。

 腕時計をちらりと見た父も同じことを思ったようで、今度こそ本当に隣の部屋へ移動していった。

「もう時間がないな……ハナさん、和奏を仕上げてやってくれ」
「はい」

 仕事小屋へ帰る前に、父は一旦、ハナちゃんに帯を締められている私のところへ顔を出して、真剣な表情で約束する。

「今はもう時間がないから、帰ってきてからにするが……『成宮』について、お前に話したいことがある」

(――――!)

 どきりと胸を鳴らしながらも、私もしっかりと頷いた。

「うん。花火が上がる前には帰ってくるつもりだから……その時に……ここからも見えるよね?」

 父は懐から煙草の箱を出し、そこから一本抜いて口にくわえながら、にやりと笑う。

「見えるなんてものじゃない。直撃だ」

 ようやくいつもの調子に戻った父の様子が嬉しくて、私は笑いながら言った。

「じゃあ、一緒に見ようね!」
「ああ」

 頷いて去っていく背中を見送り、ほっと胸を撫で下ろした。
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