もう一度『初めまして』から始めよう

シェリンカ

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3 それぞれの思い

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「そうか……大事にしてくれてるんだな……父親らしいことなんて何一つしてやってないのに……嬉しいな……」

 独り言のように呟きながら、父は花の絵の周りに、タッチはよく似ているが違う種類の花の絵を次々と描き始める。

「可愛い……」

 私が呟くと、嬉しそうに肩を竦めた。

「最初に描いたのはお前だろ……まだ一年生なのに、なんて上手に描くんだって、我が子ながらすごいと思った。その絵をずっと残しておけるものに加工できたあの授業は、本当に感動だったな……」

 私が向かいあっているのではなく、横にいるからだろうか。
 今日の父は普段よりかなり饒舌だ。

「あれからすぐにこっちへ来て、何をして暮らそうかと考えた時に、親父が趣味で使っていたこの窯で、本気で焼きものを作ってみようと思ったのは……お前の絵を思い出したからだ」
「私の絵?」
「ああ……俺の親父も、趣味で絵を後付けする焼きものを作ってたが、ああいうのに和奏が描いたような絵を入れたらどうだろうって思った……結果、仕事としてやっていけてるんだから、和奏に感謝しないといけないな……」
「そんな……私は何もしてないよ……」

 父は、近くに置いてあったまだ絵を描いていない小さな皿を私に手渡した。

「描いてみるか?」
「え……?」

 私が返事もできないでいるうちに、次々と目の前に絵の具の入った皿と絵筆などが並べられる。

「お前が使う用にするから、好きに描いていいぞ」
「そんな……! 描けないよ!」
「描ける、描ける」

 父はすっと、私が首から提げたペンダントを指した。
 そこに描かれているのは、たどたどしい子どもの絵で、私から見ればとても下手なのだが、父にとってはそうではないらしい。

「和奏は天才だから」

 にやりと笑われて、脱力する思いだった。

「ほんとに、かなりの親バカだよ……」
「ははは、そうかな」

 笑う父の声を聞きながら、私は絵筆を手に取った。
 何を描こうかと思う間もなく、一つの光景が頭に浮かび、私は筆を動かし始める。
 父は興味津々といったふうに、それを見ていた。
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