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怪異16『バーサーカー』

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 僕はドラコニス大陸のほぼ中央に位置するドラコニス王国の旧王都・ドラコブルトの街に来ていた。
古くから栄えている街はどこか厳かな雰囲気がある。
中でも古くから営業しているという老舗の酒場に入り、約束していたドワーフの女性・アマリアの席に通された。

 彼女は、ドラコブルトの地下にある地下都市ウルプス・マーキナエに住んでいる。
地下都市ウルプス・マーキナエとは、ドラコブルトの地下に存在する広大なダンジョン【ドラゲバームター】の第十階層に存在する機械都市である。
ドラコニス王国より自治が認められており、多くのドワーフの鉱夫や職人が生活する街としても知られている。
そして、ダンジョンの奥深くより、珍しいアーキテクチャや伝説的な装備品などが発見されることでも知られている場所でもある。

 アマリアは、時折、地下深くで入手された珍しい品々を、こうして地上へ運び金に換えているという。

「それで、面白い話があるっていうのは?」

早速、僕は切り出した。

「あなた好みの、不思議な話よ。そのまえにロック鳥の胸肉の蒸し焼きを一皿頂戴!」

とウエイトレスに注文した。

「なかなか地下では味わえないですからね」
「そうなのよ、地下じゃ、洞穴ネズミとジャイアントバット、それとマタンゴが主食だもの」

と、おどけて見せた。

「それで僕好みの話というのは?」
「それはもう……不可思議な話よ」
「確かに、僕の好みですね……」
「あれは、つい先月の話になるわ……」

アマリアは、届いたばかりの鳥料理を一口食べると、語りだした。

----------

 それはウルプス・マーキナエからさらに地下深く13階層まで下りたところだったわ。
そこは、ミスリル銀の採掘場があってね……仲間と共に堀に行ったのよ。
ところが、その途中、奴が現れたのよ……。

バーサーカーだったわ。

「殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」

とにかく、それしか言わないで巨大なクレイモアを振り回してきたわ。
あたしたちは、距離を取り、石弓で応戦したのよ。

それこそ何十発も、矢を当てたわ。
鋼の鎧をも貫く石弓の矢をね……。

もちろん頭にだって命中させたわ。
確実に兜を貫き、脳天をにね……。

それでも、そのバーサーカーは死なないのよ。

「殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」

ただ、それだけを叫びながらね……。
もしかしたらアンデッドかもしれないと、仲間のラルスが言ったわ。

矢が尽きたところで、みんな斧に持ち替えて一斉に切りかかったわ。
いくらアンデッドだって、頭を切り落とせば動かなくなるもの……。
ラルスが囮として正面から切りかかって、その隙に、アタシが後ろから奴の首を切り落としてやったわよ。
もう、イガグリみたいに矢が突き刺さった兜ごとね。

地面を転がった頭を見て全員が勝利を確信したのよ。

でも、違った。

「殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」

奴は、何も変わることなく剣を振り回してきたわ。
最初にラルスが……そして結局4人がやられて、私たちは撤退を決めたのよ。

もう一目散に逃げたわよ。

でも、背後から「殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」って叫び声が追いかけてくる。

おかしいでしょ?
だって、首は地面に転がったままなのに、声が追いかけてくるのよ。

おかしいと思って振り向いたわ。
背後には首なしの大男が剣を振り回しながら迫ってきていたわ。
咄嗟に、たいまつを向けたら、わかったのよ……。

叫んでいたのは……そいつじゃなくて……剣だったのよね。

----------

「剣に口があって、叫んでたのよ……でも、誰も信じちゃくれないけどね」

とにかく、もう二度と、あそこには行かないわ……。
そういいながら、彼女は一人でロック鳥の胸肉の蒸し焼きを平らげた。
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