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第三話『アングスティア』
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ダークエルフについていった僕は、森の中に建つ小屋にたどり着いた。
部屋の中はハーブなどが吊るしてあるが、それ以外は綺麗に片付いていた。
部屋の主、ダークエルフの女性はエルルーンと名乗った。
灰色の肌ととがった耳、青みがかった美しい瞳が印象的だった。
そして、暖炉に掛かっていた鍋からスープを一杯、僕に振舞った。木の皿に盛られたスープは、ただただ熱くて、正直、味はわからなかったが、それでも、一息つくには十分だった。
「あの……それで、ここは?」
「それが一番知りたいことでしょうね……ただ異界人には、難しい答えになるわよ……ここは、アングスティアと呼ばれる世界。あなた達のいるマーテリアル界からすると、異世界ってことになるわね」
「異世界!? アングスティア? マーテリアル界?」
「そう異世界。アングスティアと呼ばれている世界」
「はぁ……」
「それで、ここはドラコニス大陸。北東部ドルムス地方……フローレン王国領、ゼーヴァルト村のはずれ……ってところね」
「えっと……ドラコニス大陸? 北東部の……えっとなんでしたっけ?」
「慌てることはないわ……スープ、おかわりいるでしょ?」
「あ、はい! ご馳走になります」
この後、スープを4杯、おかわりする間に、この世界についてだいぶ理解することができた。
ここはアングスティアと呼ばれる世界の中のドラコニス大陸であること。
ドラコニス大陸には、いくつかの地域といくつかの国があるが、ここは北東部ドルムス地方と呼ばれるフローレン王国の領内で、ゼーヴァルト村という小さな村の近くだと言う。
いわゆる異世界である。
自分が、そんなアニメに出てくるような状況にあることは、にわかに信じがたかったが、とりあえずは、この世界で生きて元の世界、こちらではマーテリアル界と呼ばれる元の世界へ戻る方法を探そうと思うと、エルルーンには伝えた。
「見つかるといいわね……長い事生きてるけど……アングスティアに来た異界人には、何人かあったことあるけど……あっちに戻った人の話は聞いたことがないわ」
「えぇ……って、ことは、このアングスティアには、僕のいた世界の人がいるってことですよね?」
「そうだけど……気を付けてね……異界人は、この世界では、危険な存在として忌み嫌われてるから」
「え? そうなんですか?」
「もしも異界人だとバレれば、掴まって、ひどい拷問を受けることになるか……その場で殺されるでしょうね……」
「な、なんでですか!?」
「あなたたちの世界は、このアングスティアよりも、進んだ文明なんでしょ? 以前に会った異界人は、数百年前の中世みたいだって言ってたから……」
「あぁ……そうですか……だったら多分、そうです」
「何ていったかしら……民主主義とかいうんでしょ? この世界は、まだ王様が治めるのが普通だから……そういう考え方って権力者たちからしてみると、自分たちの権力を脅かす存在にしか見えないのよ」
「確かに……」
「だから、誰かに異界人かと聞かれても、バカ正直に答えないことね……いろんな罠があるから……その場で殺された人も少なくないわよ」
「ってことは、同じ異界人と会っても、わからないってことですよね?」
「そうね、でも、あなたは運がよかったのよ。最初に会ったのが私で……」
「はぁ……でも、なんで助けてもらえたんですか?」
「それはね……私たちダークエルフも、長い歴史の中で存在自体が忌み嫌われてきたから……少しは異界人の気持ちがわかるのよ……」
「……」
「それに、あなたの能力は、いずれ使えるから……」
「え?」
「その時になれば、わかるわ……」
その時がいつなのかは、はぐらかされた。
しかし、問題は山積みである。まずはヒカリという名前は、使えないらしい。
ドラコニス大陸には、そんな響きの名前はないばかりか、いかにも異界人っぽい響きに聞こえるのだという。
「じゃぁ……エルルーンさんが、僕に名前を付けてくれませんか?」
「ヒカリって、どういう意味?」
「あの……灯りとか、光と同じ意味です」
「そう……じゃぁ、同じ意味の名前をあなたにあげる……あなたの名前はルークス。旅人のルークスよ」
それから結局、数日、僕はエルルーンの小屋で世話になりながら、この世界の常識を学んだ。
そして、僕は旅立った。
人々に恐怖の記憶を思い出させ、黒マナを集めるために……。
あれから一年余りの月日が流れた。
一年の月日といっても、それはこの世界……アングスティアでの一年だ。
今、僕はドラコニス大陸を旅している。
この世界で僕はヒカリではなく、ルークスだ。
今の僕は、ただこの異世界で怪異を収集する旅人。
怪異収集家ルークスである。
部屋の中はハーブなどが吊るしてあるが、それ以外は綺麗に片付いていた。
部屋の主、ダークエルフの女性はエルルーンと名乗った。
灰色の肌ととがった耳、青みがかった美しい瞳が印象的だった。
そして、暖炉に掛かっていた鍋からスープを一杯、僕に振舞った。木の皿に盛られたスープは、ただただ熱くて、正直、味はわからなかったが、それでも、一息つくには十分だった。
「あの……それで、ここは?」
「それが一番知りたいことでしょうね……ただ異界人には、難しい答えになるわよ……ここは、アングスティアと呼ばれる世界。あなた達のいるマーテリアル界からすると、異世界ってことになるわね」
「異世界!? アングスティア? マーテリアル界?」
「そう異世界。アングスティアと呼ばれている世界」
「はぁ……」
「それで、ここはドラコニス大陸。北東部ドルムス地方……フローレン王国領、ゼーヴァルト村のはずれ……ってところね」
「えっと……ドラコニス大陸? 北東部の……えっとなんでしたっけ?」
「慌てることはないわ……スープ、おかわりいるでしょ?」
「あ、はい! ご馳走になります」
この後、スープを4杯、おかわりする間に、この世界についてだいぶ理解することができた。
ここはアングスティアと呼ばれる世界の中のドラコニス大陸であること。
ドラコニス大陸には、いくつかの地域といくつかの国があるが、ここは北東部ドルムス地方と呼ばれるフローレン王国の領内で、ゼーヴァルト村という小さな村の近くだと言う。
いわゆる異世界である。
自分が、そんなアニメに出てくるような状況にあることは、にわかに信じがたかったが、とりあえずは、この世界で生きて元の世界、こちらではマーテリアル界と呼ばれる元の世界へ戻る方法を探そうと思うと、エルルーンには伝えた。
「見つかるといいわね……長い事生きてるけど……アングスティアに来た異界人には、何人かあったことあるけど……あっちに戻った人の話は聞いたことがないわ」
「えぇ……って、ことは、このアングスティアには、僕のいた世界の人がいるってことですよね?」
「そうだけど……気を付けてね……異界人は、この世界では、危険な存在として忌み嫌われてるから」
「え? そうなんですか?」
「もしも異界人だとバレれば、掴まって、ひどい拷問を受けることになるか……その場で殺されるでしょうね……」
「な、なんでですか!?」
「あなたたちの世界は、このアングスティアよりも、進んだ文明なんでしょ? 以前に会った異界人は、数百年前の中世みたいだって言ってたから……」
「あぁ……そうですか……だったら多分、そうです」
「何ていったかしら……民主主義とかいうんでしょ? この世界は、まだ王様が治めるのが普通だから……そういう考え方って権力者たちからしてみると、自分たちの権力を脅かす存在にしか見えないのよ」
「確かに……」
「だから、誰かに異界人かと聞かれても、バカ正直に答えないことね……いろんな罠があるから……その場で殺された人も少なくないわよ」
「ってことは、同じ異界人と会っても、わからないってことですよね?」
「そうね、でも、あなたは運がよかったのよ。最初に会ったのが私で……」
「はぁ……でも、なんで助けてもらえたんですか?」
「それはね……私たちダークエルフも、長い歴史の中で存在自体が忌み嫌われてきたから……少しは異界人の気持ちがわかるのよ……」
「……」
「それに、あなたの能力は、いずれ使えるから……」
「え?」
「その時になれば、わかるわ……」
その時がいつなのかは、はぐらかされた。
しかし、問題は山積みである。まずはヒカリという名前は、使えないらしい。
ドラコニス大陸には、そんな響きの名前はないばかりか、いかにも異界人っぽい響きに聞こえるのだという。
「じゃぁ……エルルーンさんが、僕に名前を付けてくれませんか?」
「ヒカリって、どういう意味?」
「あの……灯りとか、光と同じ意味です」
「そう……じゃぁ、同じ意味の名前をあなたにあげる……あなたの名前はルークス。旅人のルークスよ」
それから結局、数日、僕はエルルーンの小屋で世話になりながら、この世界の常識を学んだ。
そして、僕は旅立った。
人々に恐怖の記憶を思い出させ、黒マナを集めるために……。
あれから一年余りの月日が流れた。
一年の月日といっても、それはこの世界……アングスティアでの一年だ。
今、僕はドラコニス大陸を旅している。
この世界で僕はヒカリではなく、ルークスだ。
今の僕は、ただこの異世界で怪異を収集する旅人。
怪異収集家ルークスである。
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