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第73話 選ばれた勇者達

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第一試合、ミスターマッシブ対タケミ。

「俺様はミスターマッシブ!!ふん!!」

「おれはカヅチ・タケミ。よろしくな」
筋肉に力を入れて見せつけるミスターマッシブに挨拶するタケミ。

「中々マッシブだなお前!だが俺様には敵わねッ!」
「テンション高くていいねぇ!一戦目から楽しめそうだ」

するとミスターマッシブはポーズを取った状態で深く姿勢を下げる。

「マッーーーシブ、タッコゥッ!」
彼は全身に力を入れてタックルを放つ。

「うお!速いな!」
タケミはそれをジャンプしてかわす。

「ふん!俺様の能力は成長!この能力によりは何もせずともドンドンッ肉体が成長していくのだァァァァッ!!」
またポーズを取って見せるミスターマッシブ。

『なんというタックルだ!!まるで巨大な砲弾が放たれたようだ!!』
ウェルズの実況で会場が湧きたつ。

「何もせずにその体になったのか!スゲェトレーニングしてるかと思った」
「してない!ふん!最近はあるドリンクのお陰でドンドンッ成長しているぅ!俺様こそが選ばれし勇者様だ!」

「へぇー、おれは戦ったりしないと成長しないからさ、そういうふうに成長する肉体って感覚があんまり分からんが。凄い身体だな」
「ハハハッ!!可哀そうだな!いちいち身体を鍛えないといけないなんて!」

「同情してくれてありがとな、でもいう程悪いもんでもねぇさ」

ポーズを取るミスターマッシブに笑って答えるタケミ。



「うわ、なんか今も筋肉がデカくなってない?」
「確かに筋肉の密度も量も桁違い、ですがここは筋肉の量を競う場ではありません、闘技場です。それだけで勝てる程甘くはありませんよ」

戦いの様子を観ているユイとフォルサイトはそんな話をしていた。

ミスターマッシブは何度も攻撃を仕掛けるが尽くタケミに避けられてしまう。

(こいつ瞬発力はあるけど、全然力をコントロール出来てねぇじゃん)

「もう少し自分の力コントロールした方が良いぞ」
タケミはそう相手にアドバイスをした。

「うるせぇ!マッーーーシブ!タッコゥッッ!!」

「ふんっ!」
タケミは相手のタックルを受け止めた。

「グおッ!!?」
「それッ!」
そのまま相手を投げ飛ばすタケミ。

「クソ!俺様のタックルを木端微塵にならずに受け止めるとはな!今の筋肉ではダメだ!もっと、もっと筋肉をッ!!」

ミスターマッシブは背中から瓶を取り出した。

『おーッと!!マッシブ選手!背中から何かを取り出した!まさかまさか背中の筋肉の中に物を隠していたとはッ!!』

取り出した瓶はタケミも見覚えのあるもの、エリクサーだ。

「おいそれって!やめろお前!それ飲んだら……」

「あがっあがっあがっ!!」
タケミの声を無視して、ミスターマッシブは背中から取り出した5本ものエリクサーを一気に飲み干す。

「HURRRRR!!」

「あーあ、完全にぶっ飛んじまったな」

猛獣のように叫ぶミスターマッシブ。

「あのバカ者が」
その様子を観ていた女神が頭を振ってそう言った。

更に膨れ上がった筋肉が血管を浮き上がらせる。

力を一気に解放し、タックルを放つミスターマッシブ。

「ーーーッッ!!」
「そう来るなら、赤鬼ッ!」

タケミは赤鬼を発動する。

「オラァッッ!!」
突撃してきたミスターマッシブを殴り飛ばすタケミ。

「ぢぐしょうっ!!まだだ!こうなったら全部飲んでやる!」
殴り飛ばされた彼は背中から更にエリクサーを取り出す。

「おいおい、マジでそれ以上はヤバいだろお前」

飲み干したミスターマッシブの筋肉は更に発達し、もはや人間と呼ぶにはかけ離れた姿になっていく。

「ううっ!!!グアアァッ!!」
すると彼は突然頭を抑えて叫び始める。

絶叫し続ける彼の肉体は更に膨れ上がる。

そして最後に爆発し粉々に散ってしまう。
飛び散った肉体は灰となり消えていく。

「あらま」

『なんとなんと!ミスターマッシブ!爆発してしまった!パンプアップし過ぎたのでしょうか?!ともあれ、第一試合!勝者はーーーーカヅチ・タケミ!!!』
試合終了のゴングを鳴らすウェルズ。


試合を見てカテナ・ベラードは感心していた。

「ほお、あれがエリクサーか。強大な魔力を得られるようだ」
「ですが爆発してしまいましたよ!大丈夫なのですか?」

「あのバカ筋肉が服用しすぎただけだ。問題ない」

部下をそう言っていさめるカテナ・ベラード。

一方、別の場所で試合を観ていた女神達。

「だから忠告したのに。この半日以内で彼が服用したエリクサーの本数は?」
「こちらです」
女神の部下が資料を渡す。

「よろしい、ミディカ様に報告を。では次ですね」



『気を取り直して第二試合に行きましょー!』

いきなり出場者が爆発するという展開になったが会場はむしろ盛り上がっていた。

「あんな終わり方見た事ないぞ!」
「この大会は大当たりですね!」

『それではご紹介します!漆黒の毛をもつ兎の獣人!魔神軍のクレイピオス!!』

「まぁ、もう魔神軍所属じゃないけどねー」
入場してくるクレイピオス。

『対するは謎に満ちた選手!アンノウン!!』

フラフラとした足取りで入場してくるフードを被った男。

『先ほどお名前を伺いにスタッフが参りましたが分からなかったのでアンノウン選手と呼ばせて頂きます!』

それを聞いて女神の部下が女神に尋ねた。

「名前はお伝えしなかったのですか?」
「彼はもうなんと呼べば良いのか分からなかったので。そもそももう彼なのか彼女なのかも分かりませんし。どうでもいい事ですから、そんな事よりもしっかり観察しておいてくださいね。アレのデータも今回収集する必要があるので」

そう答える女神。


闘技場中央で軽くストレッチをするクレイピオス。

「おーい、ウォーミングアップぐらいにはなってくれよなー」

クレイピオスの呼びかけに対してブツブツとつぶやいている、しかしどうも彼女に向けた言葉ではないようだ。

「なんだ?おーい!……無視かよ、感じわりぃ奴」

(にしてもなんだ?こいつの魔力、勇者なのは間違いないが変だな)

『さぁ!それでは第二試合、開始ィィィィィ!!』

ゴングを鳴らすウェルズ。


「様子見とかせずに行くぜっ!!」
いきなりクレイピオスが相手を蹴り飛ばす。

『入った!いきなり強烈な蹴りでアンノウン選手を闘技場の壁まで吹き飛ばした!』

力無く倒れるアンノウン。
身体が本来曲がらない筈の方向に曲がっている。

『おーっとまさかの一撃で終了か?!』

「俺は女神様と共にある、俺は女神様と共にある」
バキボキっと体から渇いた音を出しながら立ち上がるアンノウン。

『なんとアンノウン選手立ち上がった!』
「へぇ、そういう感じか」


戦いを終えたタケミが控えにいた者達に合流した。

「よー」
「タケミ殿、おつかれさまです。残念でしたね最後まで戦いきれずに」

フォルサイトが挨拶を返す。

「まあな。で、どうだクロイピアスは」
「クレイピオスさんですね、それがどうも妙なんですよね」

「妙?」
首を傾げるタケミは闘技場に目を向ける。

「姉さんの蹴りをあれだけ受けているのに立ち上がり続けてる」

アスタムが話す。

「単純に身体が頑丈なんじゃないのか?」

「それも考えたのですがどう見ても相手の肉体強度は高くないのです、蹴らる度に骨や筋繊維まで粉々にされてますから」

「すげぇ回復力ってこと?」

タケミがそう言うとマリスが首を振る。

「連中は魔力供給したら肉体は即座に治せる。だが相当な魔力量が必要だ、瞬時に回復できるのは女神位のもんだが。うーんなんか違う感じがするんだよなー、あいつの魔力変な感じだし」

「変って?どこらへんが」

「定まってない、すげぇ不安定なんだ」

「魔力ってね、基本はその人に応じた形や色をしてる風に見えるんだけどあいつのはそれがない。まるで色んな魔力が無理やり寄せ集められてるみたいな」

ユイが不気味なものをみるような目でアンノウンをみていた。

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