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第44話 巨人とお話しよう
しおりを挟む巨人を倒すことに成功したタケミたち。
「さて、この巨人の謎を解明するかな。おい何か見つかったか?」
クレイピオスとアスタムに話しかけるマリス。
姉弟は切り落とされた巨人の右腕を探っていた。
「お!ありました!なんか木で出来た輪っかです。腕輪?」
クレイピオスが何かを腕から取り出す。
「お!でかした!ちょっとみして」
クレイピオスはその腕輪のようなものをマリスに渡す。
「うん、間違いない。あの巨人はこれを使って炎やら瞬間移動をしていたな」
「なんなのですかそれは?」
マリスにアスタムが質問する。
「詳しくは分からない。今までに見たことない、感じる魔力、いやこれは魔力なのか?まあ恐らくこれはアーティファクトと言うもんだ。これはゼブル様の専門だな」
そういってマリスは腕輪を明かりにかざす。
うっすらと妖しい光を放つその腕輪を布でくるんで鞄にしまうマリス。
マリス達の後ろでユイとネラが空を眺めていた。
タケミが巨人に飛ばされた方向だ。
「タケミ……どうしよう」
「えらい勢いで飛んでったな」
「巨人が見せた死に間際の一撃でしたねー」
フォルサイトも一緒に空を眺めていた。
「タケミの魔力って本当に無いに等しいくらい量が少ないから、それを辿って追いかけるのも無理だし……」
ユイは肩を落とす。
「飛んでった方向を頼りに行くしかねぇか。まったく」
ネラも頭を振ってそう言った。
「ごっほ、ガボッ!!」
突然、倒れていた巨人が口から血を噴き出した。
「ッ!!コイツまだ生きてッ!」
「まて、クレイピオス!」
巨人に襲い掛かろうとするクレイピオスを止めるマリス。
「魔力の流れがさっきと違う。お前は何者だ」
マリスは巨人に質問する。
「はぁ、はぁ、ここは?!ああ、そうか俺は連中に捕まって……」
巨人は周囲を見渡した後にマリスへとその顔を向けた。
「ああ、そのお姿は……海帝様、海帝の一族様ですか」
「いかにも、そうだ。お前は捕まったと言ったな、どういう事だ?話して貰えるなら早めに頼むぞ」
マリスは巨人の身体をゆびさす。
「もうお前の身体は修復できない、もうじき死ぬだろう。肉体の外傷なら治せるが、無茶な魔力変換を繰り返したせいで魔力核がボロボロだ、これを治す術はないからな。言わなくても理解してるだろうがな」
マリスは落ちついた様子で話す。
「ええ、それは理解しております。私は巨人族の戦士、ギガンテと申します」
するとギガンテはマリスの後ろにいる人物に気が付いた。
「なぜ、そのものが……!なぜ罪人がここにいるのですか」
「あいつは死神だ、お前の知ってる連中じゃない」
マリスはそう答えた。
「ですが……!」
「いいから、さっきの質問に答えてくれないか」
ギガンテは何か言いたげだったが口を閉じて頷いた。
「私達は身を潜めて暮らしていました。今は小さき者たちの時代、我々の時代ではありませんから……。ですがある日、連中が罪人の末裔が私達の住処を嗅ぎつけたのです。本来はあり得ない事ですが、なぜか連中は見つける事ができたのです。一族は別の場所に移る事に」
「お前が囮になってか」
マリスの言葉に巨人は小さく頷いた。
「はい、まさか連中があそこまで力を付けていたとは。不思議なもので意識を奪われ、やつらの操り人形に成り下がってしまいました。なんともお恥ずかしい顛末」
ギガンテは悔しさで顔を歪ませる。
「そう自分を卑下するな」
突然空から声が。
「……ッ!あ、貴方様はッ!!」
ギガンテが目を見開いた。
その視線の先にバアルがいた。
「少し遅れた、すまんな」
マリス達に向かってそう言ったバアルはスーッと降りて来る。
「さて、先の話を続けようか。ギガンテ、君は自身を犠牲にして一族が無事にひなんできることを選んだ。しかし、その結果君は女神たちに操られる事になってしまった。という事だね」
バアルの言葉に引っかかるギガンテ。
「女神……?」
「連中はそう名のっている、昔もそういって崇め奉る連中もいたが、とうとう自分達で言い始めたのだ。なんともみっともない話よな」
彼はそう答えると、続きをとギガンテに促す。
「は、はい、連中は妙なものを持っておりました。私にもそのうちの何かが埋め込まれています」
「ああ、これだろ、今しがたお前の腕から取りだした所だ」
マリスが腕輪をみせる。
「ええ、それです。お気を付けください、連中は何やら恐ろしい事を企んでいます。あのような品まで使い、それに多くの生贄を用いた術まで行っていました。私が操られたのもその術かと」
「確かに、君ほどのものを操るのは容易い事ではない。生贄か、なるほどな。最後にもう一つ質問だ、君の仲間がどこに行ったかは知らないかね?」
バアルの問いにギガンテは首を振った。
「いえ、連中に記憶を読まれる可能性もあったので。行き先を聞くことなく私は皆から離れました」
「実に賢明な判断だ、連中も得たい情報が得られずに地団駄を踏んだだろうな」
ギガンテは再び大量の血を吐き出す。
もう長くはないだろう。
「バアル・ゼブル様……私から、無礼を承知でお願いがございます。我が一族を助けてはくれませんか……どうか、どうか!我々には為すべきことが、その時までまだ滅ぶわけには、いかぬのです!」
「ああ、もとよりそのつもりだ、安心しろギガンテ。君の一族は我々が責任をもって見つけて保護しよう。あとは我々に任せ、今は眠るが良い」
バアルの返答をきき、安堵するギガンテ。
「ありがとうございます。それでは、我が一族を頼みました。皆さまにダイシンジュ様のご加護がありますように……」
そう言ってギガンテはゆっくりと目を閉じた。
ユイとネラは亡くなったギガンテの顔をみる。
「巨人族って本当にいたんだ……それにこの人以外にも……」
「どうやら想定内って感じだな」
ネラはそう言ってバアル達に振り向く。
「ああ、いる事は知っていたさ、当然な。しかしそうか、想定よりも女神どもは焦っているようだ、随分な強硬手段を取っている」
バアルは一瞬何かを考える。
「おっと、そうだ、ここに飛んでくる時に何かが空を飛んで行ったが」
「ああ、きっとタケミ殿ですね。ギガンテさんに思いっきり殴り飛ばされたので」
「なるほど、静かだったから奴はまた戦闘で負傷し眠りこけているのかと思ったわ」
バアルとフォルサイトがそう話して笑う。
「ああ!そうだった!タケミ!」
ユイがタケミの事を思い出し声を出す。
「しかし奴が飛んで行った方向は……いやはや、奴は騒動に好まれるようだな」
「ふふふ、タケミ殿は本当に面白い運命の星の元に生まれたようですね」
そう言ってバアルとフォルサイトは再び笑う。
「え、お二人共タケミがどこに飛んで行ったか分かるんですか?!」
「恐らくだがな。しかし奴の事だからそうなってもおかしくはない、という話だ」
バアルはそうもったいぶった答え方をする。
「とーっても怖い人たちがいる所ですよ♪でもタケミ殿だったら波長が合うかも」
「うわ、もしかしてあそこか?勘弁してくれよ」
フォルサイトの発言を聞いて頭を抑えるネラ。
「え?なになに!?もう!私にも教えてよ!」
ネラがため息をつく。
「恐らく、今この世界に存在する中で最も相手にしたくねぇ連中の所だよ」
「それって?」
ユイが加えて質問をする。
「グランドオークの里……きっとそこにカヅチ・タケミは飛んでった。生きてるアイツとまだ旅をしたいなら、早いこと追わないとな」
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