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第39話 港で勃発、釣り対決

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ウェルズと別れ、夕食していると突然現れたリベリオという女神。
彼女は女神の中でも上級女神と呼ばれる存在であるという。

そんなリベリオとの会話の中でネラが女神だった事を知るタケミ達。
彼らは女神なんてネラに似合わないと大爆笑していた。


「そういえばさっきのリベリオさんの動きどうやって分かったの?二人共さ」
焚火をつつきながらユイが二人に質問した。

リベリオは不思議な移動法を使う。それは魔力を探知する事に長けているユイでも全く理解できない移動法のようだ。

「私の場合は説明しづらい、ただ出来るってだけだ」

「俺の場合はアイツに意識を全て集中させたら分かるようになった。けど結局一瞬しか分からなかった。近づかれた時に香水の匂いで気が散っちまった」
二人の説明を聞いてもピンとこないユイ。

「つまり、えっと意識を彼女に向ければ良いの?それだけなら私の魔力探知にもひっかかる筈だけど。でも彼女はこんな何もない場所でその探知を潜り抜けて来た。

「いやそうじゃない、アイツの能力は【意識】の能力だ。意識あるもの全ての意識をアイツは把握する事が出来る。そして意識には揺らぎや隙がある、アイツはそれの隙に入り込むんだ。攻略法はタケミが言った【全ての意識をアイツにのみ向ける】って事ぐらいだ。それも奴の服や香水の匂いなんかに気を取られたら捉える事が出来なくなる」

「え、何その超初見殺し、いや分かった今でも出来る気がしないよ」

ユイがそう言うとネラが頷く。

「ああ、だからタケミが一発でそれに気付いて、やってみせたのはスゲェと思うぜ。正直戦闘になったらかなり厄介な相手だな」


「主神ってリベリオとかよりも強いのか?」
タケミがネラに聞く。

「うーん、確かに魔力量とかでは上だ。ただ戦闘ではって考えると言い切るのは難しいな。主神が一番厄介な点は会う事が難しいって所だな」

ネラが鎌で地面に2つの円を描く。

「ここが私達がいる大陸だ。それで女神達の本拠地、連中が天界ってよんでるのはこっちの小さい島だ」
ネラは小さい方の円を差す。

「なんだ空にあるんじゃねぇのか」
タケミがそういうとネラは首を傾げた。

「さあ、どうだかな」
「どうだかって、どういうこと?」
今度はユイが質問する。

「【天界】は常に移動をしていて、その場所が定まらない。外部に捕捉されないように認識阻害魔法なんてもんを張ってるから見つからねぇし、魔力をも感知できない」

「じゃあよ、今度リベリオにあったら扉作ってもらうよう頼んだら良いんじゃねえのか?」
タケミの発言にネラは首を横に振った。

「それができるなら、この前にあった女神でも脅せば解決だろ?そうはいかねぇんだあれは特定の魔力を持つ者だけが通れる。もし私達が通ろうとしても弾かれるだけだ」

「ほーん、上手くいかねぇもんだな」

「その人達を天界からおびき出すのがバアル・ゼブルたちの目的って事だよね」

ネラは頷く。

「連中もそうだし、私もそうだ。連中をどうにかしない限り女神達は止まらないだろうな。ま、今はひたすら目の前の敵をぶっ潰すだけだ」

「ならいつも通りだな!問題ねぇ」
「んー、まあそうなるね」



翌日、タケミ達は港街マリンネに到着した。
爽やかな風が吹く港街、街のあちこちから活気に満ちた声が上がっている。

「いらっしゃい!いらっしゃい!
「今日の目玉商品はこの丸々と太った大物だ!」
「今朝仕入れた羊の肉だ!うちの特製ダレをかけて食べてみてよ!」
「あのベスガから仕入れた生地、破れないし火にも強い!お買い得だよー!」

市場では様々な商品が扱われていた。

その街の漁師たちが捕らえた魚介類だけではない、肉もあれば野菜もある。
生成食品だけでなく生地や宝飾品なども並んでいた。

「釣りしてくかい?」
そう言われたタケミ達は釣りをする事に決めた。

「うちは一定量釣ったらその分値段が加算されていくルールだ、だけど最大量の10kgを超えたらその分はサービス、タダで持ってってくれ!」

「よーし!一番釣り上げてやる!」
「負けないよー」
「へっ、釣りぐらい楽勝だぜ」

こうして彼らは釣り対決をすることになったのだ。


「おお!すごいすごい!また来た!」
「お嬢さんすごいな!やっぱ魚も美人には目がないってか!」
ユイはもう糸を垂らせばすぐに魚がかかる、まさに入れ食い状態だ。

「うおー!負けるか!」
「こっちの兄ちゃんもすげぇ、大物ばっかりだぞ!」

タケミが釣り上げるのは大物ばかりだった。

「近海の王者を釣り上げちまうかもな!」
「王者?」
釣りをしながらタケミがきく。

「ああ、人よりもデケェって伝説の主だ、そいつは船すら食らっちまうってな。まあ、あんたら二人は釣れるかもだが……」

釣り道具を貸してくれた男はネラをみる。

「こっちの姉ちゃんはからっきしだな。魚を取ろうって気持ちが前に出過ぎだ、もうほぼ殺気だな。それじゃあ魚は寄ってこねえぞ」

二人に対してネラは全く釣れていなかった。

「くっそ!なんでだよ!アイツらはあんなに釣れてんのに!ああもう!」
ネラは釣り竿を下に置く。

「お?なに試合放棄か?」
「リタイアですかな?」

ユイとタケミが煽る。

「うるせぇ!私はこっちのほうが性に合ってるんだよ!それ、海にぴょーんっと!」

ネラは海に飛び込んだ。

「ああ!!姉ちゃん!」
釣り竿を貸し出してくれた男が駆け寄る。

「おい、ルール違反だろそれは」
「というかマナー違反」

「そうじゃねぇ、ここは岸の側でもかなり深いんだ。あんな服を着たまま飛び込んじまったら溺れちまうぞ!どこ行っちまったんだ?!」

水面を覗き込む男。
既にネラの姿は無かった。

「それなら問題ないだろ」
「ちょっと沈んだくらいじゃなんともないから。どうせ何も捕まえられなくてもうすぐ顔を出すよ」

すると水面がボコボコと大量の泡が上がってきた。
「ほら、言ってれば」

かなり勢いよく泡が上がっている。

「いや、なんか違うぞ!」
男がそういうと、海面からネラが飛び出てきた。

確かにそれはネラだった、しかしそのシルエットはかなり違うものだった。

「うおおおお!!!」
彼女は肩から下が巨大な魚になっていた。

「ネラが魚に進化したッ!?」

タケミがそう言うと隣にいた釣屋の男が驚嘆の声を上げる。
「ぎょぎょ!!!あれはまさか伝説の主!」

ネラが魚に進化したのではない、巨大な魚に呑み込まれそうになっているのだ。その大きさは人間サイズなんてものではない、船すら飲み込めそうだ。

「ネラ!超大物じゃねぇか!!」
「言ってる場合か!あんたらも岸から離れろ!食われちまうぞ!」

男にそう言われるがタケミとユイは逃げる様子がない。

「よーし!ユイ頼んだ!」
「よし来た!」
ユイはヌシを目掛け竿を振った。

釣り針は勢いよく飛んでいき、ネラの服に引っかかった。

「よーし!ネラ!そいつ離すなよ!」
タケミはユイから竿を渡して貰う。

そして思いっきり引き上げた。

ヌシが海面に姿を現す。ついでに服が引っ張り上げられた事でネラの首がしまる。
「ぐえぇっッ!」

「がんばって!いけそうだよタケミ!」
「うおらぁぁぁ!!」

タケミが更に力を込めて引き上げるとヌシが海面から飛び出す。

周囲がその大きさに驚く。
「伝説で聞いてるよりもずっとでけぇじゃねぇか!」

しかし、その瞬間糸が切れてしまった。

「あ!」
「任せろッ!!」
タケミはジャンプしてヌシを飛び越す。

「みんな!行くぞ!!」
右拳を引き、構えるタケミ。

「え、行くってもしかして……おいヤバイぞ逃げろ!!」
周囲にた者達はその場から離れる。

「ちょっ、待てタケミ!!私いるから!」
「オラァァッ!!」

タケミの拳がヌシにめり込む。
ヌシとヌシの口から吐き出されたネラが宙を舞う。

そして大きな音を立てヌシが岸に打ち上げられた。
これをみた周囲の者は歓声を上げた。

「おおお!!こんな怪物を釣っちまうなんて!」
「最高だぜ!兄ちゃんたちの釣代はいらねぇ!釣った魚も持っていきな!今日は祝いの宴だぜ!!」
釣屋の男もこれには大興奮のようだ。

「やったなーネラ、タダで宴だってよ」
「ネラが餌になってくれたおかげだね。ラッキー♪」

頭からつま先までずぶ濡れの、ちょっと生臭いネラの元でしゃがむ二人。

「テメェら、覚えてろ……」



「はぁ、まったく昼間は散々な目にあったな。まあタダ酒のめたし、あいつらの腹も満たせたし、良しとするか」

宴を終えたネラは夜風にあたっていた。タケミとユイは部屋で爆睡中だ。

昼間の活気ある街とは違い、今はとても静かだ。月に照らされた海はキラキラと光っている。ネラは少しばかりこの光景を眺めていた。

すると遠くの方で何か光った、ネラはこれを見逃さなかった。
場所は街の反対側だ。

「ん?この魔力は……はぁ、マジかよ立て続けだな」

そう言ってネラは夜の街に飛び出して行く。

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