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5th フェーズ 決
No.134 決着
しおりを挟むイヴ達によってヴァーリのアサルトボット達は自滅し始めていた。
「クソォ!こんな最後を迎えるぐらいならば!」
ヴァーリがそう言うと、ウルルが彼の異常を察知する。
「体内の熱量が急上昇!イヴ様これは?!」
「チップの影響じゃない!そうきたか!」
イヴが相手の状況を理解した瞬間、シドーが飛び出す。
「テメェ自爆するつもりだろ?」
「貴様なぜそれを!?」
シドーはヴァーリに体当たりし、施設の屋上から海に落とすため押していく。
彼は事前にアルファとシータから彼が自爆機能を搭載するかどうか検討している、という話を聞かされていた。しかしそれだけではなかった、彼はヴァーリの目を見て自爆の事を確信したのだ。
(コイツの目、あのガンマと同じだ、嫌な目だなまったくよ)
「ぐっ!邪魔をするなぁぁぁ!」
ヴァ―リが暴れる。
「私も手伝うよ!」
「先生!」
「もう私に残された役目はお前を終わらせることだ、ヴァーリ!」
シドーとイヴはヴァ―リをこれ以上ユキチカ達に近づかせないように押しとどめる。
「みんなここから出来るだけ離れて!コイツの自爆がどれほどの威力になるかは分からない!」
イヴが皆に避難するように伝える。
「ダメ!私たちも手を貸す!」
「そうだよ!私たちも!」
「参ります!イヴ様、シドー様!」
ジーナ、シャーロット、ウルルは二人を助けようとする。
「……本当にいい子たちだな、ユキチカ!」
「わかった!」
ユキチカは手助けに入ろうとした三人を予備の網で包んで抱きかかえた。
「ちょっと!」
「何してんのユキチカ!」
「ユキチカ様!」
「またねー二人共!」
そう言ってユキチカは三人を離さずに走り始めた。
「本当にあの子は良い子だな、それに良い友達に恵まれた」
「ありがとう、ユキチカ、辛い役目させちゃったね」
シドーとイヴは微笑んだ。
「ふざけないで!ユキチカ!離して!」
ジーナがユキチカに怒鳴る。
「ダメだよ!二人を助けなきゃ!」
シャーロットが泣きながら彼に訴えた。
「ユキチカ様お願いします!お二人の元へ」
ウルルも涙ながらに彼に頼んだ。
「ウルル、ジーナ、シャロ」
これに対しユキチカは皆を優しく呼んだ。
皆が彼の方をみる。
「みんなだいすき!」
そう言って彼は3人が入った網を施設の上から投げた、投げられた網の中央から風船が現れる。網はゆっくりと落ちていく。
「え……」
「そんな!」
「ダメです……ユキチカ様!」
3人は網から手を伸ばすが既にユキチカはいなかった。
「たった2人の死にぞこないに俺が押される訳が無いだろうが!貴様らごと邪魔者を道連れに……」
ヴァーリが2人を押し返そうとした、その時だった。
「とう!」
走ってきたユキチカがヴァーリに体当たりをした。
「ユキチカ!?」
「ちっちゃいのはもう動かないし、これあげる!」
ユキチカの手には翡翠色に輝く立方体があった。
彼はそれをヴァーリの頭に押し付けた。
「これが!これが!ああ!なんということだ!真理がとめどなく流れてくる!そうか!私の役目が今わかった!奴らは神に裁いて頂くのが道理、私が出しゃばる必要は一切なかった!私は役目を全うできなかった……!」
知恵の実に触れたヴァーリは独り言を呟く。
「バイバイ!シドー、イヴだいすきだよ!」
ユキチカはそのままヴァーリと共に施設から落下。
「ダメ!ユキチカ!」
「そんなやめろ!」
咄嗟のことでイヴとシドーは動き出すのが遅れてしまった。
「最初からか、この道そのものが間違えていた。ああ憎いな、なにもかも」
ヴァ―リがそう言うと身体がより一層強く光り、爆発を起こした。
「なんだ?!」
浜辺で戦っていたヤスシ達のところまでその衝撃は届いた。
「爆発?みんなは……!」
ヤスシがそう言うと、施設からふわふわとゆっくり降りてくるものが。
それは風船がついた網で、中にはウルル、ジーナ、シャーロットが入っていた。
「あれは!おい!回収に向かうよ!」
Ms.ストレングスが走り出す。
「よっと、みんな大丈……」
彼女は落ちてきた網をキャッチした。
中にいる3人が泣いているのに気づき、話が止まるMs.ストレングス。
「おい、他のやつらは……」
彼女が聞くと、3人は泣きながら彼女を見上げた。
「ごめんなさい……」
この1言だけをなんとか絞り出す3人。
「そんな……」
Ms.ストレングスは膝から崩れ落ちる。
「嘘だろ、ありえねぇだろ」
ヤスシが涙を流す。
「おれは認めねぇぞッ!」
彼はそう言って施設に向かおうと走り出す。
その時だった、浜辺にいたキリサメが何かを察知する。
「何か来る」
彼女がそう言って砂浜を指さすと、砂浜が盛り上がる。
「ぷは!」
「あ"あ"やっと出れた!」
「うわ!このアンドロイドは気密性に難ありだよ!砂めっちゃ入ってくる!」
盛り上がった砂からユキチカ、シドー、イヴが現れた。
「え……」
皆は唖然としていた。
「みんなだ!よかったー!」
「こっちも派手にやってたみたいだなぁ~」
「想像以上の生存率だよ、本当にみんな規格外だね。ほらユキチカ、シドー引っ張るの手伝って」
そんなやり取りをする3人。
「よかった……じゃない!」
周囲の人間が口を揃えて言った。
「はぁったく、ほら行っておいで」
Ms.ストレングスは網を解き、中にいるウルル、ジーナ、シャーロットを外に出す。
「みんなただいま……うわっ!」
ユキチカが振り向いたのと同じタイミングで3人が彼に向って飛び込んだ。
3人は泣きじゃくり、何を言っているか聞き取れなかった。だがユキチカにはみんなの気持ちがわかった。
「ありがとうね、みんな」
彼は3人に優しく抱き寄せた。
「……でもどうやって?」
と目元を赤くしたジーナ。
「ズルッ!そうだよ、すごい爆発だったのに」
鼻水をすすりながらそう話すシャーロット。
「それになぜ地下から?」
と涙がまだ収まらない様子のウルル。
「ああ、それは2人がね……」
ユキチカはシドーとイヴに振り向く。
「間一髪だったけどな、なあ先生」
「シドーの言う通り、ギリギリだったよ」
時は少し遡る。
「バイバイ!シドー、イヴだいすきだよ!」
そう言ってヴァーリ共に落下したユキチカ。
しかし、彼の身体は空中で止まる。
彼の身体をアンドロイドの腕が掴んでいた。
それはイヴの腕だった。イヴは体内の配線を縄の代わりにしてシドーに持たせ、落下するユキチカを助けたのだ。
「こんな終わらせ方は許さないから!」
イヴがそう言ってしっかりとユキチカを掴む。
「そうはいかねぇぞユキチカ!せーのっ!」
両腕の殆どが破壊されたシドーは口で配線を噛み、2人を引っ張りあげた。
引き上げた勢いで2人はシドーの後方にある穴に入る。ヴァーリとユキチカが施設の屋上に登る際に使った穴だ。
「間に合え!」
シドーも2人に続いて飛び込む。
3人は地下に着地した。
「よし、ここまでくれば、もう大丈夫だろ」
「うわ!なんでそういうこと言うかな~」
「え?その反応、まさか!これもふらぐって……」
シドーとイヴが話してると、近くで爆発が。
「そうだよ!逃げるよー!こっち!」
イヴが2人を掴んで走り始めた。
彼らを追いかけるように爆発が次々と起きていく。
「この爆発ってヴァ―リが仕掛けたのかな?」
「うーん、アイツが爆弾仕掛けてたら一気に吹き飛ばすような気がするな。偶然だと思うけど」
ユキチカとイヴが話しているとシドーが前方を指さす。
「あそこ!砂が流れ込んで来てる!あそこから出られるんじゃないか?どうせお前ら砂の中でも進められるだろ?」
「もちろん!身体空っぽ!砂沢山入っても大丈夫!」
「ユキチカ、あんた本当になんで生きてるの?私も大丈夫だよ機械だし」
3人は砂が流れ込んで来てる場所に飛び込み、必死に砂の中を泳ぎ進んだ。
「っていうことがあったの」
ユキチカから話を聞いたウルル、ジーナ、シャーロットは地面に座り込む。
「はぁ……よかったぁ」
「本当にね。あーなんか一気に疲労が爆発した」
「私もなぜか立つ気持ちになれません」
「おかえりなさい」
「また会えましたね」
そうシドーに言って、アルファとシータがコウノに支えられ現れる。
「だな、ハハッ!かっこ悪く生き残ったな」
シドーは笑う。
「よかったぁ、よかったぁ、ユキチカぁ」
泣いているヤスシにイヴが歩み寄る。
「ヤスシさん、お久しぶりだね」
「……っ!」
ヤスシはイヴを抱きしめた。
「イヴ!お前も帰ってきてくれて嬉しいぞ!我が娘よ!」
「娘って……一応私の実年齢はヤスシさんよりずっと上なんだけど」
照れくさそうにするイヴ。
「よし!それなら撤収だ!流石に騒ぎすぎた、おれたちはここに居る筈のない存在だからな、誰かが来ちまう前にずらかるぞ!」
ヤスシがそう言って皆を船に向かわせる。
船は皆を乗せ出港する。
「あれ、ブルズアイさんは?先に帰ったの?」
シャーロットは周りを見渡して言う。
「……シャーロット、あのね」
チザキがブルズアイのことを伝えようとしたその時、ヤスシ達が立ち上がる。
「総員、敬礼!」
看守達、そして囚人達が島に向かって敬礼する。
「名誉ある死などとは呼ばんぞ、ここにいるものは全てが罪を背負っている。囚人は収容される罪を、看守の我らは人を収容する罪を。我らに名誉ある死などあろうはずがない。ただ己の信じるままに生き、死んだ……それだけだ」
ヤスシがそう言うと、皆は目を閉じた。
チザキは彼女の懐から銃を取り出した。それはブルズアイが使っていたものだ。
シャーロットは静かに泣いた、チザキや周りのみんなは抱き合って彼女と共に心の内で亡くなった者達への弔いの言葉を贈った。
ユキチカ達が島から脱出したのと同時刻、フドウ学園長たちが対峙していたアンドロイド達が戦闘を止め、踵を返し学園から撤退し始めていた。
「なんだ?」
「徹底していきますね」
遮蔽物から顔を覗かせ状況を確認するフドウとイエナガ。
「終わったのか?」
「そのようですね、でもどうして急に」
ブルジョとヴィクトリアの側にいたアンドロイド達も武器を捨て、撤退していく。
「アンジェラちゃん、どうしてか分かる?」
「うん、ウルルちゃん達がやったんだよ!命令してたヴァ―リがいなくなって、アンドロイド達が通常に戻ったんだよ。向かってる先は、工場か倉庫かな?」
プライスとアンジェラがアンドロイド達をみてそう話す。
「ふぅ、大丈夫ですか、おばあ様」
「久しぶりに良い運動になったわぁ」
エンドウに向かって穏やかに笑うジーナのおばあさん。
また少し時間がたち、ユキチカ達はインファマス刑務所に戻っていた。
「エンドウさんたち大丈夫かな……」
とジーナ。
「連絡した時は平静を保っている感じだったが……」
「きっと今頃、港で泣き崩れてるかもな」
とヤスシとキビがジーナの言葉に反応して話す。
皆の予想通り鬼角会の面々はインファマス刑務所に向かう船が出る港で泣き叫んでいた。
「姐さァァァん!!」
「こんなのってあんまりじゃないですか!こんな別れ方って!」
海に向かって叫ぶ者達。
すると海から勢いよく人が飛び出して来た。
「ぶはぁ"!あ"あ"……あかん、ほんまに三途の川見えたぞ今」
エンドウたちの側に飛び出してきたのはオニツノだった。
「え……」
「ね、姐さん!?」
皆が驚いた。
「泳いできたんですか?!」
「当たり前やろ、一度でも敵になった相手の船に乗るなんて筋の通らんことするかい。自分で勝手に行った島や、自分で帰るのが筋やろ」
エンドウがオニツノの元に駆け寄り手を貸す。
「姐さん重たくなりました?」
「太ったみたいに言うなや!身体中に金属入れらとんねん」
エンドウはオニツノを立たせた。
「よかった……よくぞ戻ってきてくれました」
「なんや、珍しいのお前が泣くなんて」
冗談で誤魔化そうとしたがやはり我慢できずに泣き始めるエンドウ。
「ジーナちゃんとの喧嘩にまた横槍が入ったからの。決着がつかんまま死ねるかい!本当なら今からジーナちゃんと再戦やー!といきたいところやが……流石にシンドイわ。エンドウ、飯作ってくれ」
オニツノは笑ってそう言った。
「今日は盛大にいきましょう。まずは身体を拭かないと、おいタオルないか」
エンドウが周りにきく。
「すみません」
「……そうだ!私の服を使ってください!」
「わ、私も!姐さん使ってください!!」
皆が一斉に服を脱ぎ始め、彼女に渡そうとする。
「みんなで服脱いでたら変態に思われんで」
「ほら、タオル買ってこい。服はちゃんと着てな」
エンドウは部下に服を着させ、タオルを買いに行かせる。
「エンドウ」
「はい、姐さん」
オニツノがエンドウの顔を真っすぐと見詰めた。
「随分と留守番させたの」
「おつかれさまでした、姐さん」
こうして、世界を巻き込んだ戦いが終わった。
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