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5th フェーズ 決
No.126 二人の闘い
しおりを挟む「……」
「シャーロット……」
積み重なった瓦礫を静かに見つめていたシャーロットに声をかけるチザキ。
「大丈夫、ありがとうねチザキさん」
振り向いてニコっと笑う。
「ん?あれ、何かポケットに」
シャーロットのポケットに手を入れた。
彼女の手には小さな機械が入っていた、シャーロットはそれが何か即座に分かった。
「記憶デバイス?なんでこんなものが……」
「シャーロット!」
「え?」
チザキがシャーロットを引き寄せる。
彼女はシャーロットを自分の背後に置く。
「ガーディアン!」
ガーディアン達が彼女らの前に立っていた。
「ま、まだやるっていうの!?」
シャーロットが構える。
「指令権限の譲渡を確認、シャーロット・バベッジ様」
そう言ってガーディアン達はシャーロットの前で跪いた。
シャーロット達が島で戦っている間、もう一つの戦いが起こっていた。
「うわー!すごい勢いでやってくるぞ!大丈夫かヴィクトリア!アンジェラちゃん、プライスさん!」
アンドロイド兵に向かって建物内から銃を撃つブルジョ。
「ゲームよりずっとスリリングだね、お母さん!」
「私達を人質にするつもりらしいが、もうそんな立場はゴメンだ!全員スクラップしてやる!」
アンジェラとプライスも彼同様に銃を持って戦っていた。
「貴方よりは大丈夫です、もう少し落ち着いてください」
「あ、ああ、本当に逞しいね君たちは」
自分よりは余裕そうな3人を見て少し冷静さを取り戻すブルジョ。
「あのフドウ学園長には感謝せねば、彼女からの連絡がなければ私達だけでこれだけの敵を相手にするところだった」
ブルジョはそう言って振り向くと、彼の視線の先にはフドウがいた。
なぜユキチカ達の学園長がここにいるのか、その理由は単純だ。
ここはその学園だからだ。
どうやらウルティメイトはアンドロイド兵をユキチカ達にゆかりのある者を狙っているようだ。
「それにあの人たちも、すさまじい人たちがいたもんだよ」
彼は外に目を向ける。
学園の前庭では大勢の者達がアンドロイド兵と闘っていた。
「あ!そこの人!後ろ!」
ブルジョが声を出し、集団の1人に警告する。
その者の背後から半壊したアンドロイドが殴りかかる。
彼女はもろにその攻撃を受けるが、全く動じる様子がない。
「あ?なんだあこんなもんかよ、天下のウルティメイトさんのアンドロイドっつーのはよ!」
振り向き、アンドロイド兵を叩き斬った。
その女性はエンドウだった。
「すげぇやエンドウさん!」
「オメェら!気合い入れろ!ここはジーナさんの大事な学び舎だ!姐さんの大事な方の大事な場所だ!」
怪我をしているがまだまだ闘争心は消えないようだ。
「勢いあるね~、イエナガもシャキッとしな!」
「無茶言わないでください!いきなり銃を渡されて応戦しろだなんて!そもそもこの銃どこから!?」
半泣きの状態になりながら応戦するイエナガ、それに対して豪快に銃を撃つフドウ。
「鬼丸ユキチカくんからだ。アンドロイド用の弾丸と共にね。まったく、いつの間に学校を改造してたのか。きっとシャーロットも関わってるだろうね」
フドウは随分と慣れた手つきで銃を扱う。
「あのブルジョって人たちへ連絡するのも、あの子から送られてきたこの手紙があったからだし」
懐から手紙を出すフドウ、そこにはユキチカのまるで機械で印刷したかのように画一的な文字で【フドウせんせいへ、あぶないときにみんなを呼んであげて】と書かれていた。
「あの子達が帰ってきたらちゃんと話を聞かないとですね!」
「ああ、そのためにもここは守り抜くよ!」
イエナガとフドウは迫りくるアンドロイド兵に引き続き応戦していく。
学園の様子を視ていたヴァ―リは笑う。
「無駄な抵抗を。君がこの学校を要塞のように改造したのか?まったくひどい子だ」
「……」
ユキチカは黙ってヴァ―リを見詰めていた。
「君は最初からこうなることがわかってたんだろ?それでも君は皆を利用した。自分の目的の為に」
「うん」
ヴァ―リの言葉に対してユキチカは素直にうなづいた。
「責めはしないよ、それが生命の性だからな。だがその人畜無害な風貌を装うのは気に入らないな。まるで自分はそういう摂理から逃れているような……」
「何か関係があるの?ヴァーリの夢と」
「ふふ、いや、全くもってない。誰がどんな夢を抱き、誰を利用しようとも、関係のないことだ。それがその者たちの役目だっただけだ」
ヴァ―リは再び笑う。
「この世には役目を全うしようとしない者が多すぎる。彼らはまだマシな方だな」
ヴァーリはガンマ、チャールズの反応が消えている事を確認する。
「オニツノ君は随分と頑張っているじゃないか、彼女がここまで働きものだとは、関心だな」
オニツノと闘うジーナ、お互いにアーマーなどを脱ぎ捨てた、素手の勝負。
「はっ!」
ジーナは連続攻撃をオニツノに叩き込む。
彼女が放つ全ての攻撃が黒鉄となり、強烈な攻撃が絶え間なくオニツノを襲った。
「っぐ!……はは!やるのぉ!まさか打ってくる攻撃全部が必殺技なんてな!どんだけワシの為に準備してくれたんや!」
「そりゃあもう、めちゃくちゃに鍛錬して来たよ」
「嬉しいのぉ!ワシもその気持ちに応えやんとな!」
歓喜の表情をし、ジーナに急接近するオニツノ。
「ふん!」
「っと!」
ジーナが拳を放った瞬間オニツノは一歩踏み込み、その拳を受け止めた。
次の攻撃に対しては逆に下がりながら、上体を逸らす。
「そう来たか!」
「そうや!黒鉄はタイミングが大事なんやろ?」
オニツノは独特な動きでジーナの攻撃がヒットするタイミングをずらしたのだ。
黒鉄は打撃がヒットする瞬間に全身を固める必要がある、タイミングが肝要なのだ。更にオニツノは天性の柔軟性を誇る肉体を駆使した動きを見せる。
「さぁ!これで黒鉄のもう一つのポイント、角度も難しくなったやろ!」
「そこまで徹底的にやってくれるとはね。嬉しい限りだよ」
ジーナは距離を詰める、オニツノがそれに反応して拳を突き出す。
「っと!」
突き出された拳を逸らし、腕を掴んだ。
ジーナはオニツノの足を払い、態勢を崩した。
「っこれは!」
ぐるんっと上下逆さまになるオニツノ。
次の瞬間、彼女の顔面に拳が叩き込まれる。
オニツノの背中が強く地面に衝突。
「天蓋割り!」
ジーナは即座に飛び退く。
「……まったく、ジーナちゃんはサービス精神旺盛やなぁ~」
起き上がるオニツノ。
「やっぱダメだったか。片腕を封じて、受け身は取りづらくしたんだけどな」
頭をかくジーナ。
「だったら!」
ジーナが再び攻めようとした、今度はオニツノの方が早かった。
「それっ!」
オニツノの蹴りを受けるジーナ。
「っ!」
完璧にガードしたはずが倒されてしまう。
ガードした彼女の腕にはうっすらと刃物が掠ったような傷が出来ていた。
「したんだ……部位鍛錬」
ジーナがそういうとオニツノはニヤっと笑う。
「それに蹴りでも黒鉄が出来るなんて、私なんてずっと練習してきて最近ようやくできるようになったのに。ちょっと悔しいな」
「ふふーん、生まれて初めて鍛錬ってものをしたわ。退屈やろと思ってたが、やってみると案外オモロイもんやな」
(やっぱり天才だな~この人)
ジーナはそう思わずにはいられなかった。
「ええ顔してるなジーナちゃん」
「ちょっと楽しくなってきた」
オニツノに笑って返すジーナ。
「喜びや、これからもっと楽しませたるわ!」
「上等!」
(やっぱりこの人に勝つには黒鉄だけじゃダメだ!)
ジーナは構えを変えた。
二人の闘いは続く。
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