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5th フェーズ 決
No.124 ラストフェーズ
しおりを挟む各地で戦闘が繰り広げられる中でウルル、キリサメ、そしてイヴは施設の中を進んで行く。
「本当にこの施設わっかりづらいなぁ!」
イヴが先頭を進む。
「マップのデータには地下への入り口はありませんね」
「本当にこういうの好きだよね。あいつの秘密主義な所が出てるよ」
ウルルとイヴが話しているとキリサメが二人の前に立つ。
「……何かくる」
キリサメが構える。
「やぁ、初めまして」
彼女達の前にとある人物が現れた。
「誰?」
キリサメが刀の切っ先を相手に向ける。
「私はチャールズ、チャールズ・バベッジと申します。そちらは従者アンドロイドNo.13U223577、わが社の天才発明家アウガスタ・ド・ヴィリエ・ド・イヴ、そして殺し屋のキリサメ・スズメ。でお間違いないですかな?」
チャールズ・バベッジと名乗るものはお辞儀をした。
「チャールズ・バベッジ、機密資料に名前があったね。機械工学の専門家だっけ」
「いかにもイヴ博士。それ以外にも色々と兵器開発で食っていた」
イヴに返事をするチャールズ。
「心臓の音がしない」
「だろうね、全身が機械で出来ている」
キリサメとイヴはチャールズの身体を観察してそう言った。
「当然だ、もちろんただの機械ではない。特注品だ」
チャールズは体を細かい粒子に変化させる。
「ナノマシンね」
「いかにも、ヴァ―リが持っていた設計図からこのナノマシンを開発した、随分と時間と金がかかったが」
イヴはチャールズの話を聞いて眉間に皺を寄せる。
「あなたの片割れはどこにいるのかな?」
「流石に鋭いな、経験者は。君らが開発したソウルパッチ、実に興味深かった。魂の存在という、実にオカルトめいた存在。科学とは常にそのオカルトと向き合う事で進歩する」
バベッジは自身の胸に手を当てる。
「私のもう片方はチザキ・アキナとシャーロット・バベッジの二名と交戦中だ」
「バベッジ、もしかしてあなたはシャロ様の!」
「ああ、その通りだ。彼女は私と血縁関係にある娘だ」
驚くウルルに冷静な様子で答えるチャールズ。
「よくもまぁ平然と言えるね。自分の娘と戦闘中だなんて」
イヴはチャールズの態度に心底呆れたようだ。
まだあって間もないにも関わらずこの男のどうしようもない部分を理解して来たのだ、これはかつて彼女も同じ道を進んでいたからであろう。
「それが私の完璧さなのだよ」
チャールズは表情を変える事無く言った。
「なんてやつ」
キリサメが呟く。
「なんてやつか、そのついでにもう一つ。既にヴァ―リは装置を起動させている。つまり我々は既にラストフェーズに入っている。そしてそれは完了間近だ」
「ッ!」
驚くウルル達、それをみてチャールズは不思議そうな顔をした。
「なぜ君たちが来るのを事前に察知して、わざわざ装置の起動を待つ必要があるのか。分かりきった事じゃないか」
「だけどあの装置の完成にはユキチカの……」
これにはイヴも想定外だったのか、彼女は驚きつつもチャールズに質問をする。
「あの立方体か?装置が完全に始動する前にあれを接続すれば良い」
「どういう事?ヴァ―リは何をするつもり?」
ここに来て初めて見せるイヴの戸惑い、それをチャールズは興味深そうに観察している。
「なるほど、天才の君でも分からない事があるんだな」
「君たちは天才を過剰評価してるよ、いつの時代もね」
「そうか、ならば評価を修正しておこう。そして君の質問に対してだが、答える理由がないな」
チャールズは鋭い視線をイヴ達に向けて戦闘態勢に入った。
一方その頃、キビはコウノと素手での決闘を繰り広げていた。
「来いよ!コウノ!」
地面に倒れたコウノにそう言い放つキビ。
「はぁ……はぁッ!」
地面に大の字になって倒れているコウノは大きく息を切らしていた。
「もうへばったのか?」
「なんの……これしき!」
体をなんとか起こすことに成功するコウノは構えを取ろうとした、その時だった。
突如地面が大きく揺れはじめた。
コウノは態勢を崩して地面に倒れた。
「なんだこの揺れ?!」
「もしかして!」
コウノの脳内にある事が浮かび上がる。
「キビ・カオル……先輩!」
「考えがあるんだな。手を貸すぜ」
キビはコウノに手を貸し起き上がらせる。
コウノは立ち上がり、キビと共に施設へと向かう。
「まったく……片腕を失くしてまだあそこまで暴れられるとはな。この揺れは、もうそんな時間か、随分と足止めをくらったな」
時同じくしてヴァ―リは通路を進んでいた。
彼は最奥の扉を開ける。
「フォルセティよ、この世界の審判者」
扉の奥にある装置にそう語り掛けるヴァ―リ。
「ヴァ―リ!待ってたよー!」
すると突然物陰からユキチカが出て来た。
「……!君には全く驚かされるよ。まさかこの場所を特定して先回りまでするとはね。でもどうだ?その装置は流石の君でも触れまい?」
「うん、できなかった」
ユキチカが素直に答える。
「当然だ、もうすでに装置は作動している。それも君らが来るよりもずっと前からだ。既にフォルセティは全人類の体内にグレイボットを侵入させている」
「うん、知ってる。だからみんなの中には入らないようにした。既に入ってるのはもう取り出してある」
ユキチカの言葉はヴァ―リには届いていなかった。彼はユキチカの言葉よりも彼が持っているある物に興味が向いていたのだ。
「……丁度良い、今回は君が持っているんだろう?エデンの実を」
「そうだよ、でもごめん、これは渡せない」
ユキチカは頭を抑えて首を振る。
「君の意志など気にはしないさ。君はそれをここに運ぶのが役目なんだ。さあ、役目を終えた君はご退場願おうか」
「やだ」
ユキチカは再び首を振る。
「そうか、まあ君が大人しくここで渡そうが渡すまいが、やる事は変わらない」
ヴァ―リは腕を巨大な剣へと変形させる。
「やはり貴様はあの時に消しておくべきだったな。審判者の邪魔はさせんッ!」
凶刃がユキチカ目掛け放たれた。
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