上 下
115 / 135
5th フェーズ 決

No.115 どこもかしこも

しおりを挟む

 銃声と斬撃が響く通路、そこではキリサメとヒメヅカが押し寄せるアンドロイド兵と戦っていた。

「こうも簡単に倒されるとはな」
 その光景をみてヴァーリは呟く。

「全く、数だけは多いですね」
「問題ない」
 キリサメとヒメヅカはまだ余裕を残していた。

「では私が加わればどうかな」
 増援のアンドロイド兵と共にヴァーリが彼女たちに向かって歩き始める。

「おやおや、大将はもっと後ろでふんぞり返ってて欲しいのですが」

「私が大将?君は太鼓持ちするタイプだったのか。私は審判者のお膳立てを指揮しているだけだ。大将の付き人程度だよ私は」
 ヒメヅカの言葉にそう言い返すヴァーリ。

(本気で言っているのか……、それとも皮肉かどっちにも取れるのが気持ち悪いところですね)

「さて、君たちを処理し、逃げたリリィくんも始末しないとな」
 二人の前に立つヴァーリ。

「今更煽っても無駄ですよ、もうこれ以上あなたへの不快感を募らせる事はできませんから」
 ヒメヅカにそう言われて鼻で笑うヴァーリ。

「ほう、珍しく意見が合うじゃないか」
 
「行きますよキリサメさん!」
「いつでも」
 ヒメヅカとキリサメは構えた。


一方その頃、ネットワークを乗っ取る為に走るシャーロット達。

 周囲からは激しい戦闘を物語る音が絶え間なく響いていた。

「どこもかしこも騒がしくなってきたな」
 そう言って先頭を走るキビ。

「ネットワークの乗っ取り、早く終わらせないと」
 キビの後ろをシャーロットが走る。

「まだまだ追手は来ますね」
 ウルルが後ろに目を向けるとアンドロイドの集団が彼女たちに向かって走ってきていた。

「しつこい!」
「ああまったくだな、チザキ」
 追手を迎撃しようと構えるチザキとキビ。
 
 するとキビはあることに気づいた。

「ん?ウルルちゃん!あのアンドロイド変じゃないか?」

 敵集団の中から突出してくる者がいた、今までのアンドロイドは隊列を組んで一斉に襲いかかって来ていた。1体だけ隊列を離れるのは初めてのパターンだ。

 その違和感にいち早く気づいたキビはウルルに呼びかけた。

「スキャンします……ッ!高エネルギ反応!皆さん下がって!」
 突撃してきた相手は光を放ち、爆発を引き起こした。


「……自爆って本当にやることなす事ムカつくな」
 爆風に飛ばされたキビが起き上がる。

「おい!そっちは大丈夫か!」
 先程までいたところは瓦礫で塞がれていた。キビは瓦礫の向こう側に向かって話しかける。

「うん、なんとかね!」
「シャロ様と私は大丈夫です!キビ様とチザキ様はご無事ですか?」
 瓦礫の向こう側からシャーロットとウルルの返事が返ってくる。

「私は大丈夫だ、チザキ!生きてるか!」
「生きてる!」
 キビの呼びかけに応じるチザキ、彼女達の間にも瓦礫があり直接互いを見ることは出来ない。

「瓦礫が邪魔だな……シャーロットちゃんとウルルちゃんは先に進んでてくれ!私達は別の道を探す!」

「畏まりました、参りましょうシャロ様」
「2人共すぐ来てね!」
 キビの案に賛成しウルルとシャーロットは先へと進む。

「チザキ!お前も別の道を探して二人の元に向かってくれ!」
「……」
 キビは呼びかけるがチザキからの返事がない。

「おいチザキ!聞えてんのか?ん?なんだアイツ、どこに向かってるんだ」

 手元の端末でチザキの位置を確認するキビ。
 どうやら彼女が猛スピードでその場を離れているようだ。

「シャーロット!シャーロット!」
 チザキはある一室に入る。

「ほお、やはりこの血の匂いにつられて来たか」
「それはシャーロットの?」

 チザキが嗅ぎつけた血の匂いとは別の者がそこには立っていた。

 バベッジだ。

「これは以前、シャーロット・バベッジがウルティメイトの研究をしていた際に採血したものを参考に作った人工血液だ。それを少しいじって死臭のような物を出させた。人間の鼻では判別できない程のものだが、君なら飛びつくと予想してね」

 バベッジは手元にある試験管をみてそういった。

「君は実に優秀な実験サンプルだ、なるべく傷をつけずに捕獲したい」

「おまえ、嫌な感じがする」
「ひどく心外だな」
 姿勢を低くし戦闘態勢に入るチザキ。

「しょうがない、先に戦闘記録を取るとするか」



 元軍人の二人が斬り合う。

 互いに元軍人、そして同じ戦争を経験した、だがそのうちに持つ考えは全くもって違う。

 シドーの冷静な眼差しとガンマの狂気に満ちた笑みが交錯する戦場。

「こんなくだらねぇ戦い、さっさと終わらせてやるよ!」
 シドーが言った。

「馬鹿げたことを言うな、日本兵!兵士の誇りは戦いにあるんだ!戦いにくだらいものなどはない!」
 ガンマは強化外骨格アーマーと剣、その両方を使い攻撃を繰り出す。



 ガンマの鋭い一撃、シドーはそれを潜り込むような動きで躱す。
 回避の際、シドーは刀を振り抜いた、抜き胴と呼ばれる剣道の動きに近いものだ。

「っフゥ―ッ」
 息を吐くシドー。

 彼の眼前には胴体を両断されたガンマが転がっていた。

「まだ生きてんだろ?」
 シドーは刀を構えたままだ。

「流石……日本兵。そして、バベッジ殿!」

 両断されたガンマの肉体に外骨格アーマーが取り付く、アーマーが彼の身体に無数の管を突き刺す。

 アーマーは彼を取り込み、融合していく。

「素晴らしい!私こそが究極の兵士!俺は武器になれたんだァッ!」

 ガンマが狂気に満ちた笑いを上げる、彼の肉体は今や機械と人間のパーツが入り乱れた姿となっており、極めて異質で不気味なものへと変貌していた。

「心ゆくまでッ殺し合おうじゃないか!」
「何度でも殺してやるよ」

 ガンマの強化外骨格アーマーはさらなる力を解き放ち、彼の剣術は驚異的な速さでシドーを追い詰めていく。

「どうだ!これが本当の戦いだ!」
 ガンマの声が轟く中、シドーは冷静に立ち回る。

「俺こそが戦いなんだァッ!」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

フォトンの記憶

小川敦人
SF
少年時代、水泳部の仲間だったサトシ、田村、有馬の三人は、ある夏の日に奇妙な青白い光を目撃する。 その後、彼らの能力は飛躍的に向上し、全国大会で輝かしい成績を収めた。 しかし、その奇跡のような出来事を境に、彼らの人生は穏やかな日常へと戻っていく。 それから61年後——。 居酒屋で酒を酌み交わしながら、彼らはふと呟く。 「あれ以来、特別なことは何もなかったな」 「けど、平凡な人生を送れたことこそが奇跡なのかもしれない」。 静かに杯を交わす三人。その時、店の外には、かつて見たような青白い光がふわりと舞い上がっていた——。 SFとノスタルジーが交錯する、運命のひとときを描いた物語。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...