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4th フェーズ 奪

No.82 昔話

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「ここなら少しの間は安全だよ。入って」
イヴの案内で皆は彼女の隠れ家に到着していた。

 皆が中に入り座って、傷の手当てをするものやこれからの事を考える者、別々の事をしているが今一番気になる事は同じだった。

「まずは私の説明からしようか」
イヴが話を切り出すと、皆は手を動かしながらも彼女の話に意識を向ける。

「私の名前はイヴ、アウガスタ・ド・ヴィリエ・ド・イヴ。長いでしょ?イヴで良いよ。ユキチカのお姉ちゃん、とは言っても血縁関係は無いけど。ああ、あとこの身体はお察しの通り100%機械だよ」
彼女は両手を広げて自分の身体をみせた。

「年齢は~どれくらいだろ、単純に数えれば87歳ぐらい?いや、62歳か。でもあのタイミングから数えたら15か16ぐらい?まあそんな感じ」

「?」

「混乱するよねやっぱり。とにかくみんなと会えてよかった、ユキチカの大事な友達。いつもユキチカがお世話になってるね」
イヴは振り向いてシドーに振り向く。

「さて、一旦私の説明はここら辺にして。お次はそのユキチカの身体に入っているシドーの話をしようか」
そう言われるとシドーは皆に手を振る。

「どうも、おれはシドーって言うもんだ、ああ今はなんでかダイキの身体に入ってるんだが」

「そのダイキってもしかしてユキチカの事ですか?」
ジーナがきくとイヴが頷いた。

「そうだね、まずはそこから話す方が早いかも……えーっとまた驚かせちゃうだろうえけどね。私達二人とそしてユキチカは、今から50年以上前の時代の人間なの」

「え……」

「えええええ?!」
「ええええ!!」
ジーナ達は勿論だがシドーも驚く。

「ははは!良いリアクションだね、私もまさかこんなに時間がかかるとは思ってなかったんだけどね」
笑うイヴ。

「50年前って、もしかしてあの男性が一斉に消滅する事件と同時期に生きていたって事ですか?」
シャーロットが質問する。

「うん、その話もおいおいするね。私達は日本にある小さい島で出会ったの。じゃあシドーからその話をまずして貰おうか」

「あ、ああ。いやぁあれから50年経ってるって事にちょっとビビったが、浦島太郎だなこりゃ。まあいいや、とりあえずおれの話からだな分かった」
シドーは頷いて話を始める。

「えーっと、おれは元々軍人だったんだ、戦争が終わって軍が解散して普通の工場で働いてたんだが、ラジオからはまた戦争の言葉が聞こえて来てね。もう嫌になって戦争って言葉が届かないようなド田舎に引っ越してやろうって。それで小さい島に引っ越したんだ」
彼の話に皆集中していた。

「で、その島の山で出会ったのがダイキだったんだ、君たちでいうユキチカだな。最初はどこかの子どもかと思ったんだが、その頃はもう村の人たちとは全員顔見知りだったからどこの子でも無いのは分かった」
シドーはユキチカと出会った時のことを話し始めた。

「それから何回か様子を見に行ったんだが、いや驚いたよ」
「何がですか?」
シャーロットが尋ねる、するとシドーは思い出して笑う。

「あいつ会うたびに肌の色や髪の色が変わるんだ。日焼けしてとかそんなレベルじゃないんだ!ある日は真っ黒な肌に真っ青な髪、ある日は真っ白な肌に新緑の髪、またあるときは真っ赤な肌に白い髪だったり。これはいよいよ普通じゃないって思った、でもなんでだろうな……気付いたら話しかけてたんだ」
肩をすくめるシドー。

「それからすっかり気に入られて、色々な発明品をみせて貰ったよ、山の猿が安全に寝られる部屋やイノシシが木にぶつかっても大丈夫なヘルメットとか」
どうやらユキチカはその当時から色々と作るのが得意だったようだ。

「村の農作物の収穫とそれを祝うちょっとした祭りをするから村に来ないか誘ったんだ。村に来たタイキは興味深そうに農具をみてな、山に戻っちまった。そしたら収穫を助けてくれるカラクリを作ってきてくれたんだ!凄いだろ?!それで収穫がはかどって夕方に終わる予定が昼前に終わっちまったんだ!」
嬉しそうに話すシドー。

「村の人たちも凄い凄いってな、カラクリの神様だっていう人までいたよ。それ以降は村でおれと一緒に暮らすようになったんだ。日中は農作業の手伝いやあいつの発明に使う素材集めしたり、山の動物と遊んだり。夜は村の人と一緒に飯食って。楽しかったな……」

「なんか今とそんなに変わらないね」
「うん」
「本当そうですね」
話を聞いたジーナ、シャーロット、そしてウルルは昔から彼は変わらないのだと、どこかホッとするような感覚を覚えた。

「まぁ今の話から分かる通り、おれもタイキとは血のつながりはない。でも本当の家族みたいに暮らしてた」
彼の声や語り口調から、本当にユキチカの事を大切に思っている人間なのだとジーナ達は感じ取っていた。


「おれがタイキに会ってから1年ぐらいだったかな、それぐらいの時期に先生たちが
来たんだ。当時は大がかりな施設を建ててな」
シドーはまた過去の話に戻る。

「ふぅー今日も色々拾ったなーダイキ」
「うん!重たくない?」
「平気だこんぐらい、軽い運動だ!」
海岸で拾った廃材などを山盛りに搭載したリアカーを引いているシドーとそれに乗るダイキ。

「お、みろよ施設に明かりがついてる。もう完成したのか?」
「おー!速いねー!」
「うちの若い人たちも結構手伝ってるらしいぞ」
二人は大きな施設を見下ろす。

「よう!シドーさんにダイキお帰り!」
「おう、丁度みんなも帰りか、おつかれさん」
二人はその作業場から帰って来た人たちに出会う。

「施設が完成したんだ。次は作業員を募るってよ。あんたもどうだ?あの人たち気前よく給料払ってくれるんだ」
「給料なんてこの島で何に使うんだよ。たまに来る商船で酒とつまみを買うのがせいぜいだろうよ」
シドーがそう言うと村の人は笑う。

「ははは!だがあって困るもんじゃねぇだろ?それに最近じゃダイキのお陰で農作業もすぐに終わるからよ。暇なんだよ」
「仕事熱心なことで」

「それに昼飯と仕事終わりの晩飯も出してくれるんだ」
この言葉に食いつくダイキ。

「ごはん!おいしいの?!」
「見事に食いついたな。こりゃあ話ぐらいは聞く事になるな」


 翌週、建築された施設の関係者と名乗るものが村にやってきた。その者は金髪の短髪で身長は村の者と比べて別段高い訳でも低い訳でもない、30代から~40代ぐらいに見える外見をした男性だった。

「シドーさんと、ダイキさんですね。こちらにおかけください。いくつか質問させて頂きます」
2人はその者と面接をすることになった。

「シドー・ナリミチです、よろしくお願いします」
「おねがいします」
二人は頭を下げる。

 相手はいくつかの質問をする。主に健康状態に関することとどれぐらいの教養があるかどうか確認された。相手は特に問題が無いことを確認すると手元の紙を見て質問する。

「ナリミチさんは従軍経験があるんですね。これは個人的な好奇心からの質問なのですがどうしてこの島に?」

「戦争から一番遠そうな所を求めて」
「なるほど」
相手の面接官は隣に座っていたダイキに目を向けた。

「質問を重ねて申し訳ないのですが、こちらのダイキくんは?」
「山の中で暮らしてたんですよ、動物たちとね。自分の家族じゃないんですが」
シドーは笑顔でダイキの肩を寄せる。

「あ、そうだ!こいつ凄いんですよ!動物たちと一緒にいる時から漂流物と棒切や石で色んな道具作っちまうんですよ!」

「発明家ですか!それは素晴らしい!お二人は一般的に募集している作業員以上の仕事をオファー出来そうです。もちろん報酬はその分上乗せさせて頂きます」
面接官の相手は立ち上がりそういった。

「ああ!そういえば名乗っていませんでしたね。これは失礼しました、こういうのに慣れてなくて、うっかりしていました」 
彼は手を差し出しシドーと握手をする。

「ヴァーリ・ジョーンズと申します。これからどうぞよろしく」


「その時にもうヴァ―リが……」
キビが話を聞いてそう言った。

「ああ……」
「そうそう、アイツ元は私の部下だったんだよ」
シドーとイヴも苦そうな顔をする。

「イヴさんは何をしに?」
シャーロットがイヴに尋ねる。

「私は……最悪の兵器を開発しにきたの」

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