強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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3rdフェーズ 散

No.73 決定的な証拠

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人気のない港の倉庫にトラックが何台も止まっていた。

「では現時刻をもって商品の受け渡しを終了とする」
「良いビジネスができました」

何やら取引が行われていたようだ。

(おいおい、怪しすぎるだろこの取引)
その現場を物陰から監視するキビ。

「で、早速次の取引ですが」
「ああ、責任者も同行します。なにせ規模が違うので」

(ビンゴ!ようやくだ、もう少しで明確な証拠を提示できますよ、本部長)
その会話を録音するキビ。



話は数週間前にさかのぼる。

キビは警察本部の本部長室に来ていた。

「わざわざ私なんて呼び出してなんでしょうか本部長?」
「あなたの仕事に関するお話です。今後は明確な証拠もなく誰かをつけ狙うような捜査は許しません」

そう言われため息をつくキビ。

「証拠を掴むために捜査するんでしょうが。それに誰かじゃなくてある企業の話なんじゃないですか?」
「もうこの話はこれまでです、これはあなたの為でもあるんですよ。これ以上、上に目をつけられるような行動は……」

「あなたより上って、もう数えるぐらいしかいないですけど」
本部長がそう言うキビ。

「あなたは非常に危うい状況にいるのですよ!男性を捜査に協力させ、あの場所にだって行くのは決して良い事では無いのです」

「でもその許可してくれたの本部長じゃないですか」
「そ、そうですけど。とにかく最近のあなたは一層心配になります」

キビは渋々頷く。

「はぁ、分かりましたよ。それでは失礼します」
とりあえず敬礼をして部屋を出るキビ。

「先輩どうします?」
「今回は流石に本気だな。よっぽどの圧力をかけられたんだろう」

本部の外にいたコウノの元に戻るキビ。
コウノは車の中で待機していた。

「とりあえずお前はいつも通り仕事しろ、私もそうする」
「本当ですか?」

キビが車に乗り込むとコウノはエンジンをかける。

「ああ、勤務時間内はな」
「やっぱり」


そしてそれから数週間がたち、キビは目の下にくまを蓄えた状態でコウノにあう。
いつもより多めのコーヒーを飲む。

「明らかに寝不足ですよ先輩。カフェインの取り過ぎはダメですよ」

「ちょいと最近は夜更かし気味でな、でもお陰でようやく掴めそうだ。シャーロットちゃんが調べてくれたリストあっただろ。最近取引があった会社を一通りチェックしてな」

「全部ですか?」
そう言うコウノに対し首を振るキビ。

「いや、流石にまだ全部は終わってないが。ちょっとこれ聞いてみろ」

コウノはイヤホンを受け取る。
再生されたのは取引の音声だった。

「これって!」
コウノが顔を上げる。

「今夜だ、お前も準備しろ。上には見回りとか言っとけ」
「分かりました」



二人は一通り装備を整え、夜を待った。

「当然、今回はユキチカ達は呼ばない」
「まあそれが当たり前ですよね」

「ここを抑えることが出来れば、ウルティメイト社、あるいはハウンドを追い込める。連中が何を企んでいるのか暴いてやる」
「そうですね」

キビはコウノに車を止めさせる。
まだ目的の港にある倉庫までは距離がある。

「ここからは徒歩で行くぞ」
「はい」
二人は装備を確認した後、車から降りて目的地に向かった。


倉庫のそばには車やトラックが複数台止まっており、なにやら運び込んでいる。

「早く運んでください」
「そちらの代表者の姿が見えませんが、彼女はどこですか?」

取引をしている片方がそう言うと、車から一人の女性が降りてきた。

「どうも、初めまして」
ヒメヅカだ。

(ヒメヅカ!本当に代表が出張って来たな)
見張っていたキビの元にコウノが近寄る

「先輩、確認とれました。積み荷は武装を施されたアンドロイドです」
「それじゃあ確定だな。よし、行くぞ!」

銃とライトを構えてキビとコウノが飛び出す。

「お前ら動くな!警察だ!」

ヒメヅカがキビの顔を見る。

「おや?見覚えがある顔ですね」
「どうも、代表さん。この前渡せなかった名刺の代りに手錠を持って来たぞ」

銃を向けながら挨拶するキビ。

「なんや、キビはんやないか」
「オニツノ、お前もいたのか」

ヒメヅカの後ろにオニツノもいた。

「お前らが今まさに取引している物は違法なものだ」
「なんのことでしょうか」

肩をすくめるヒメヅカ。

「しらばっくれる気か?改造したアンドロイドなんてバッチリ違法だろうが。おい、そこの金髪のお前、お前もこっちに向け」

キビがそう呼びかけると背を向けていた女性が振り向く。
その女性は顔に大きな火傷の跡があった。

「彼女はどこですか?」
先ほど聞こえてきた声と全く一緒の声を首に着けていた装置から出す。

「もしかして、キリサメ?!そうか、ハウンドだからなお前も」

するとキリサメがキビ目掛け突撃してくる。

「このッ!」
キビが銃を向ける。


「とう!」
彼女が発砲するよりも早く、何者かが現れキリサメを蹴り飛ばした。

「ユキチカ!!なんでお前ここに!!?」
現れたのはユキチカだった。

「キビさん!大丈夫ですか!」
キビ達が入った倉庫の入り口からジーナとシャーロット、そしてウルルも現れた。

「ジーナちゃんにシャーロットちゃんそれにウルルちゃんも?!」
突然の登場に驚くキビ。

「おーー!ジーナちゃんやー!!」
「え!?オニツノ!」
オニツノは嬉しそうにジーナに手を振る。

「なんで皆、どうして?」
「コウノさんから連絡があって、それで急いで来たんです」

それを聞いたキビはコウノの方に振り向く。

「ッ……コウノ、お前……!!」
その直後、キビは地面に倒れてしまう。

見ると足に何かが刺さっていた。
どうやらコウノの銃から放たれたもののようだ。

「……」

「え……コウノさん?」
「コウノさん何して……」

ジーナとシャーロットも倒れる。

「はぁ?」
オニツノが顔を歪ませる。

「これは麻酔、コウノ様一体どうして!」
ウルルは皆に駆け寄り刺さっていた針を抜く。

彼女は腕から電気が迸る剣を展開させ、コウノに向かって構えた。

「No.13U223577にベータ権限発動、停止コードを実行せよ」
コウノがそう言うとウルルはその場で固まってしまった。

「通常の停止コードでは止まらないでしょう、この機能は流石に貴方のご主人様も知らなかったみたいですね。良かったです、あなたをここで破壊する事にならなくて」

「コウノ様……?」
そう言ってウルルの機能は完全に停止してしまう。

「おいおい、どういう事や。お前キビはんの部下ちゃうんかい」
「コウノ?」

コウノはユキチカに銃を向ける。

「ユキチカくん、大人しく外に止めてある車に乗ってください。もし従わない場合は……」
「わかった!」

そう言ってユキチカはすぐに車に向かった。

「はっや、もうシートベルトもしてるわ。聞き分けの良いやつやなぁ」

「ではこのアンドロイド達は元の場所へ、それと皆さんも車に乗ってください。お連れしたいところがありますので」


運転席にコウノ、助手席にヒメヅカ、そして後部座席にユキチカとオニツノ、そしてキリサメが座る。

コウノは車を発進させた。

「……せやからなんでワシが後ろやねん!!狭いわ!」

「しょうがないでしょう。ユキチカくんは肉弾戦が得意みたいなので、暴れた際に取り押さえる必要があるんですよ。私だと殺してしまう可能性がありますから」

ヒメヅカが怒るオニツノにそう答える。

「へ、にしても友達が麻酔で倒れたっちゅーのにお菓子食っとるわ」
ユキチカはコウノから貰ったお菓子を食べていた。

「うん?食べる?キリサメも食べる?」
「ん、ええのか?ほな一個もらうわ」
「……」

キリサメとオニツノはユキチカからお菓子を受け取り食べた。

「みんな寝てるだけ。あの麻酔の量だとあと60分で起きる。今日の気温は風邪ひかない、大丈夫」

「ふーん、さよか。ワシらどこに連れてかれんねやろなー」

ユキチカたちを乗せた車は倉庫を離れ真夜中の道を進んだ。

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