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2nd フェーズ 集
No.24 吸血鬼事件?
しおりを挟む何者かに襲われたシャーロットの護衛にと、キビとジーナが彼女の家に泊まっていた。
シャーロットが寝た後、ジーナもリビングのソファでウトウトしていた。
「私が見張ってるから寝てて良いぞ」
「いや、もう少し……だけ、起きてます」
頭を大きく揺らしながらキビに応えるジーナ。
「そんな船こいだ状態で何言ってるの。ほら、ソファで横になってちょっと目閉じて休ませるだけでも良いからさ」
そう言われ彼女はソファに横になる。
寝ないと言っていたがこうなってからは早かった、あっという間に眠りに落ちた。
それを見届けたキビはコウノに連絡する。
「コウノ何か分かったことあるか?」
「はい、シャーロットさんと似たような体調不良を起こした人が何名かいるようで。それとこれはまだ確定事項ではないのですが、先日の変死体に関係している可能性が……今資料を送りますね」
コウノのからの情報をみて眉間に皺を寄せるキビ。
「これは……」
するとシャーロットの部屋から物音が。
「ッ!!」
「あれ?先輩?先輩ッ!」
部屋に駆けつけるキビ、入ると全身黒い服を着た人物がそこにいた。
「動くなッ」
撃鉄を引き起こし、拳銃を構える。
「どうして……」
「質問するのはこっちだ、大人しくしな」
銃をいつでも撃てるように向けながら吉備は部屋の電気を付けた。
「妙な動きするなよ。一発目は空砲なんて都市伝説信じてる訳ないだろうけど、念のため言っておくぞ、一発目から実弾だ」
その時相手はパーカーを被っていなかった。
黒くゴワゴワとして腰まで伸びている髪をして、服装は黒一色、手袋を付けている、これも黒。肌は病的なまでに青白い。
「私は……ッ!」
相手は振り向き様に注射器を投げてきた。
「クソっ!」
注射器を回避し銃を撃った。
銃弾は相手の肩に命中。
しかし相手は倒れずにいた。
「シャーロット……ごめんね」
相手は呟いた矢先に窓を突き破り飛び降りる。
「コウノ!容疑者が逃げたッ!すぐに他の連中にも伝えてくれ!」
彼女はすぐさまコウノに連絡し犯人を追いかけ外へ。
(今の人、私の名前を?)
シャーロットは恐らく自分にだけ聞えたであろう相手の声を、何度も自分の中で繰り返していた。
「怪我は?大丈夫シャロ!?」
「ありがとうジーナ、大丈夫だよキビさんのおかげで何も無い」
騒ぎで目を覚ましたジーナに抱き着かれながらシャーロットは答える。
シャーロットは落ち着いている、というよりは何か別のことを考えていて意識がそこに無いようにジーナの目には映った。だが怪我は無く、ひとまずそれに安堵した。
外では警官たちが忙しそうに走り回っていた。
まだ周囲に容疑者がいるかもしれない、警官たちはライトを片手に周囲をくまなく捜査している。
しかし容疑者は見つからなかった。
「犯人は見つからなかったが、周囲には犯人のものと思われる血痕があった。これで一応DNA鑑定とかはギリできそうだ……」
「これだけ?」
キビの話を聞きながら、血痕をみてユキチカがそう言う。
ユキチカとウルルもキビから連絡があり駆けつけていた。
「ああ、そうなんだ。肩を撃たれてる筈なのに大して出血してない。あの短時間で止血したっていうのか?まあ肩撃たれて倒れずに警察の包囲網を突破している時点で色々と勝手が違う相手なんだろうが」
まだ何か手がかりか無いか警官達は捜索を続けている。
「それに家の周りには特に厳重に監視をつけていたのに、それをかいくぐって部屋に侵入してくるなんて。一体どうやったんだ?」
それからしばらくして、キビ達は一旦状況を整理するためにシャーロットの部屋に戻っていた。
「相手はどうやってか監視の目をくぐり抜けて部屋に侵入、銃で撃たれても大してひるまない、その上出血もすぐに止められる、そして注射器を携帯している。で恐らくその注射器で相手から血を抜き取っている」
「まるで吸血鬼!みんなもそう言ってるよー」
ユキチカがとあるウェブサイトをみせる。
そこには数々のオカルト系の記事が並んでいた、その一つに
「吸血鬼の仕業か!?」
といった記事があった。
内容は夜、人影が屋根伝いで飛んでいるのを見たとか、体調不良を訴えた者の首に変な傷があったとか、そんな事が書かれている。
「吸血鬼ねぇ。じゃあ次はこっちで分かった事を伝えるぞ」
キビはそう言って端末を操作する。
「シャーロットちゃんと同じような体調不良を起こした人間が他にもいたんだ。体からアルコールが検出されたのも一緒で、中には未成年もいたから未成年飲酒の疑いでうちにも連絡があったみたいだ」
「ですが、貧血状態なのと首元の2つの傷、それと黒い何かに襲われたという話もあって捜査の対象になりました」
コウノも報告に加わる。
キビは頭をかき、一呼吸。
「それと死人も出てる」
と低い声で言った
「ちょっと先輩!」
「彼女は被害者だ、自分の状況を理解するのは悪い事じゃない」
コウノがキビを注意するもシャーロットが二人の間に入る。
「大丈夫です。私は隠されるよりも、本当の事をききたい、ですから」
そういう彼女に小さくため息をつくも、分かったと頷くコウノ。
「だが被害者は年齢も職業もバラバラ、時間はだいたい夜、人気の少ない場所、死因は大量出血。それぐらいしか共通点無い。」
キビの報告を聞いてシャーロットは不思議そうな顔をした。
「それって変じゃないですか?」
何か引っかかる所がある彼女はそう話す。
「というと?」
キビに寄って、シャーロットは自分の端末で複数の映像を見せた。
シャーロットが襲われた時の映像だ。何者かに引っ張られたように、途中急に画面外に行ってしまう。
「丁度カメラの範囲から引っ張り出されている、この映像はみたけど。これが?」
この映像を見てキビが話す。
「私のカメラ、簡単に目視できるような大きさじゃないのに。その位置とカメラのカバー範囲を熟知しているみたいで」
シャーロットは彼女が配置しているカメラの位置とその監視範囲を見せる。
彼女の言う通りかなり広い範囲を監視出来るようになっていた。確かに死角はあるもののこれだけあればどれかのカメラが犯人を捉えていそうなものだが、それらしい姿は最初だけで他は一切映っていない。特にどこから来てどうやってその場を去ったのかは分からない。
「突発的なものじゃなくて、ちゃんと監視網を把握した上での犯行か」
キビが映像を止めた。
「加えて血液を抽出する注射器とか、色々準備してて。そこまで入念な犯人が目立つような殺しをするのかなって。被害にあった人全員が殺されたわけじゃないんですよね?」
シャーロットは死亡した者とそうでない者の違いに意識を向ける。
「どうして、その、人達は死んだんだろうって。私の時みたいに注射器使ってたら血液取り過ぎる事ってないですよね」
死亡者のリストとその他の被害者を見比べるシャーロット。
「という事は、まだ分かってない情報がこの人達にあるのかも」
ジーナも彼女の後ろからそう語りかける。
「流石だ」
二人の発言を聞いてキビは感心した。
「私も気付いた事があってな、晩飯戻すなよ。殺害現場の映像だ」
彼女の発言に頷いて答えるシャーロットとジーナ。
キビは殺害現場の映像資料をみせた。
映っていたのは血液を吸い出されたとされる干からびた遺体、首には大きく裂かれたような傷があった。
「これが別の写真。遺体の周囲には血痕があったんだ」
周囲に飛び散った血の跡、それから激しく出血した事が伺える。
「え、でもそれって」
シャーロットも恐らくキビと同じ気付きを得た。
「そうだ、注射を使ったならこうはならんよな。みんなこんな感じだ」
他に複数の写真を見せるが全て同様の状況、辺りに血が飛び散り、干からびた体。
「この被害者達の首にも傷はあった、だが他と違って一つだけなんだ。まだ推測だがこの被害者に対してはかなり強い感情、つまり明確な殺意を持って行っている」
「……」
画像を見てシャーロットは黙っていた。
「ま、こんな所だな、一旦みんなは帰って休んでくれ。コウノ、私は今晩ここに泊まるから、何かあったら連絡くれ」
「了解しました!」
ユキチカ達は一旦ここで解散する事になった。
部屋に戻ったシャーロット。
すると彼女は部屋にある自分の上着のポケットが少しだけ膨らんでいる事に気付いた。最近はよくその上着を見ている彼女だからこそ気付けた程の些細な違い。
そのポケットを探ると中からボイスレコーダーが現れた。
「これは……?」
彼女はそれに見覚えがあった、再生ボタンを押す。
「……シャーロットちゃん、私を覚えてる?」
ある女性の声が発せられるのであった。
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