強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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2nd フェーズ 集

No.18 メンハギのたくさんの面

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カーテンで締め切られた部屋で一人の女性がストレッチをしている。

彼女は今朝もいつも通りに目を覚ました。

起きたら簡単に体を動かし、洗面所に向かって優しく、まるで小鳥に水をかけてあげるように顔を洗った。

数字の書かれた事以外は特徴がない瓶からクリームを手に取り顔に塗り、全身に塗り、それからようやくたっぷりの化粧水を顔に塗り、保湿クリーム、そして日焼け止めとスキンケアを施す。

「……」

窓から外の風景を見る、その後ビタミン剤を複数服用し地下へと向かう。

(いつまで続くのかしら……永遠?そんなのあり得ない)

体のメンテナンスを終えた彼女はある部屋に入る。重い扉の奥、そこに誰かが手術台のようなものの上に縛られていた。

「……うぅ」
意識がはっきりしていない、目隠しで確認できないがきっと焦点もあっていないだろう。

「ハナちゃん……ごめんなさいね、いつまでもボーッとしてると気分が悪くなってきてしまうわよね。でももう少しで全てから解放してあげるから」
女性はそう言うと部屋の扉をゆっくりと閉める。

ハナが監禁されている部屋の扉から振り向くとそこには数々の化学薬品を扱うための機材が並んでいた。

「そう、もう少し、もう少しなの。人は……幸せにならないといけないの」



「先輩!調べて貰ってた薬品の購入者、判明しました!」
コウノが入って来た。

「こちら指定された薬品を購入した者のリストです。そもそもこれら全てを扱う場所は少なかったのですが、その中でも……」
購入者リストの中からそのうちの一つを強調表示するコウノ。

「この場所はつい最近まで使われていなかった倉庫です」

「倉庫か、場所的に人の目に付きにくいし、うってつけって訳か。最有力候補だな」
キビがそう言うとユキチカがシャーロットに話しかける。

「ねぇ、シャロ、この倉庫の電気使用量分かる?けっこう使ってるとおもう」
「ん?ちょっと待ってね。あー、本当だかなり使ってるねぇ。普通に生活してたらこんなに消費する事は無いから大掛かりな機材が色々ありそう。うちもだいたいそんなんだし」

シャーロットは調べた内容をユキチカに見せる。それを後ろからキビとジーナが覗き込む。

「え、じゃあもうそこじゃん!」
「行ってみる価値は大有りだな。所でどうやってそのデータ仕入れたんだ?」

「え……ああ、はははは。そんな事よりも早く向かった方が、ね?」
シャーロットは露骨に話を逸らす。


キビは別の部屋で数名の部下を呼び、倉庫の見取り図を参考に話を始めた。

「この倉庫は搬入口、利用者用の出入り口、そして非常用の出口が各一か所ずつだ。搬入口と一般の出入り口は同じ方向だ、こちらからは私の分隊が入る、コウノの分隊は裏から、他は外で待機だ。10分後に現場に向けて出る、準備しておけ!」

「はい!」

キビはユキチカ達に一声かけるために自分のオフィスに戻って来た。

「ユキチカ、ウルルちゃん、ジーナちゃん、シャーロットちゃん、君たちのお陰で本当に助かったよ、ってあれ?ウルルちゃんは?」
ウルルがいない事に気付くキビ。

「おゆうはんの準備」

「え、ああ、そうか。まあなんだ、今夜は豪勢に行ってくれ、あとで請求書くれよ。晩飯は私の奢りだって、ウルルちゃんに伝えといてくれ。じゃあちょっと行ってくるわ、帰りは気を付けて帰れよ」

そう3人に告げてキビはオフィスを去った。



キビとコウノ達は目的の倉庫に近づく。

「にしてもこんな早く見つかるなんて、あの子達に頼んで正解でしたね」
無線でコウノが話す。

「そうだな、どうも働きづめだと視野が狭くなっちまうな」
キビがそう言うと腹の虫が鳴いた。

「ちょっと先輩、これから突入するんですからもっと緊張感を」
呆れた声でコウノが言う。

「いや、今のは私のじゃねぇよ。いや、なんかいい匂いするな。おかしいな今日はここで飯食ってない筈なんだけど……」
きょろきょろするキビ、するとヒョコッとシャーロットがバックミラー越しに現れた。

「なっ!?!!」
「す、すみません。ユキチカからカツ丼渡されて、食べかけですが食べますか?」
そう言ってシャーロットは申し訳なさそうに、かつ丼が入ったどんぶりを見せる。

「旨そうな匂いの正体それか~って違う!いつの間に忍び込んだんだッ!」
驚いているとジーナも影から出てきた、それも申し訳なさそうな顔をして。

「本当すみません、皆が用意をしている間に乗り込みました」
ジーナがそう言うと無線でコウノの声が聞えて来た。

「先輩!ユキチカさんとウルルさんが!」
コウノの車の後部座席に二人が座っていた。
「コウノも食べる?カツ丼」
「すみません、ユキチカ様を止められず……」
ウルルがペコペコ頭を下げる。

「だって、カオルちゃんの車の鍵勝手に開けたらグーされるから」
「なる、ほど……?」

無線越しにその話を聴いて、ため息をつくキビ。
「はぁ、来ちまったモンはしょうがない。コウノ、しっかりその二人の事を見ておけよ!ユキチカぁ、お前は後で話あるからなぁッ!」


そうこうしている内にキビ達は倉庫に到着する。

「倉庫ですね、雰囲気ありますね。お二人はもちろん……?」

車を停めて後部座席を見るコウノ、ユキチカは頷いて返事していた。

「ですよねぇ~何だか、だんだん分かって来ましたよ」
彼女はそう言って車の中で拳銃の確認をして車を降りる。

「コウノと他の奴はそっちに付いて行った二人と一緒に裏からだ、倉庫の中央で落ち合うぞ、良いな。ジーナちゃん、シャーロットちゃん、私の後ろから離れるないでね」
そうコウノ達に伝え、銃を構えながら先導するキビ。

「お二人も私たちが前後を挟む形で守りますので、くれぐれもお気をつけて」
コウノが先頭に立ち、他の部下達がユキチカとウルルを挟むように並び倉庫へと向かう。


「想定していたよりだいぶ早いわね。もう少しで完成だと言うのに」

薄暗い部屋で侵入に気付く女性。その女性はスーツを来てマスクを付けていた、マスクを付けていない部分をみるだけで分かる、まるで磨き上げられた大理石のような美しい肌をしていた。

彼女がメンハギだ。

メンハギは多少取り乱しながら正面の画面をみる。
モニターに映像が、どうやら倉庫中に隠しカメラがあるようだ。

「行きなさい、何とかして!そう、追い返してください!」
そう言うと彼女後ろに複数の人影が。

「交渉する余地は無いかと思いますが?まあなんとかしますよ」
その者達は武装しており、中には銃を持っている者もいた。

「くっ……最悪の場合、本当に最悪の場合は撃退するしかないでしょう……!」
少し呼吸を荒げるメンハギ。

「ええ、それならお任せあれ」
それだけ告げると集団はぞろぞろと部屋を出て行く。

(こんな事に意味はあるの……ここまでする意味が……?)
こんな声がメンハギの中で発生し、脳内をうるさく響きまわる。

「やめて!これは人々の悲願なの!!その為には……!!」
声をかき消すかのようにメンハギは怒鳴った。

彼女以外はハナが横たわっているだけの部屋。
ハナも眠っており彼女の怒りを聞いているのは彼女自身のみ。

(後ろの少女はどうなの?またあの子みたいに自ら命を絶ってしまうのでは?この前の女性だってそう、いくら処置をした所でそれはただの自己満足、罪の意識から逃げたいだけ!)

ふと目に留まる、鏡に映った自分の顔。
鏡の外から無数の手が現れ、顔を覆い、顔を引き剥がそうとしてきた。

彼女は頭を振ってその脳内の声をかき消す。

「もう止まれないッ!最後までやりきるしか、もう道はない」
再度鏡を見ると美しい肌の顔が一変、顔の左半分が老婆の肌になっていた。

彼女は番号が書かれた瓶を取り出し、中のクリームを振るえる手で取り出し顔に塗り始めた。塗り終えるとみるみるうちに肌は元の美しさを取り戻す。

「これが完成すれば私たちの夢は叶うの……そうでなければならない!」

自分になんとか言い聞かせ、頭を抑えながらも薬品を手に取る。そして怯えるように作業を再開するのであった。
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