強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

文字の大きさ
上 下
18 / 135
2nd フェーズ 集

No.18 メンハギのたくさんの面

しおりを挟む

カーテンで締め切られた部屋で一人の女性がストレッチをしている。

彼女は今朝もいつも通りに目を覚ました。

起きたら簡単に体を動かし、洗面所に向かって優しく、まるで小鳥に水をかけてあげるように顔を洗った。

数字の書かれた事以外は特徴がない瓶からクリームを手に取り顔に塗り、全身に塗り、それからようやくたっぷりの化粧水を顔に塗り、保湿クリーム、そして日焼け止めとスキンケアを施す。

「……」

窓から外の風景を見る、その後ビタミン剤を複数服用し地下へと向かう。

(いつまで続くのかしら……永遠?そんなのあり得ない)

体のメンテナンスを終えた彼女はある部屋に入る。重い扉の奥、そこに誰かが手術台のようなものの上に縛られていた。

「……うぅ」
意識がはっきりしていない、目隠しで確認できないがきっと焦点もあっていないだろう。

「ハナちゃん……ごめんなさいね、いつまでもボーッとしてると気分が悪くなってきてしまうわよね。でももう少しで全てから解放してあげるから」
女性はそう言うと部屋の扉をゆっくりと閉める。

ハナが監禁されている部屋の扉から振り向くとそこには数々の化学薬品を扱うための機材が並んでいた。

「そう、もう少し、もう少しなの。人は……幸せにならないといけないの」



「先輩!調べて貰ってた薬品の購入者、判明しました!」
コウノが入って来た。

「こちら指定された薬品を購入した者のリストです。そもそもこれら全てを扱う場所は少なかったのですが、その中でも……」
購入者リストの中からそのうちの一つを強調表示するコウノ。

「この場所はつい最近まで使われていなかった倉庫です」

「倉庫か、場所的に人の目に付きにくいし、うってつけって訳か。最有力候補だな」
キビがそう言うとユキチカがシャーロットに話しかける。

「ねぇ、シャロ、この倉庫の電気使用量分かる?けっこう使ってるとおもう」
「ん?ちょっと待ってね。あー、本当だかなり使ってるねぇ。普通に生活してたらこんなに消費する事は無いから大掛かりな機材が色々ありそう。うちもだいたいそんなんだし」

シャーロットは調べた内容をユキチカに見せる。それを後ろからキビとジーナが覗き込む。

「え、じゃあもうそこじゃん!」
「行ってみる価値は大有りだな。所でどうやってそのデータ仕入れたんだ?」

「え……ああ、はははは。そんな事よりも早く向かった方が、ね?」
シャーロットは露骨に話を逸らす。


キビは別の部屋で数名の部下を呼び、倉庫の見取り図を参考に話を始めた。

「この倉庫は搬入口、利用者用の出入り口、そして非常用の出口が各一か所ずつだ。搬入口と一般の出入り口は同じ方向だ、こちらからは私の分隊が入る、コウノの分隊は裏から、他は外で待機だ。10分後に現場に向けて出る、準備しておけ!」

「はい!」

キビはユキチカ達に一声かけるために自分のオフィスに戻って来た。

「ユキチカ、ウルルちゃん、ジーナちゃん、シャーロットちゃん、君たちのお陰で本当に助かったよ、ってあれ?ウルルちゃんは?」
ウルルがいない事に気付くキビ。

「おゆうはんの準備」

「え、ああ、そうか。まあなんだ、今夜は豪勢に行ってくれ、あとで請求書くれよ。晩飯は私の奢りだって、ウルルちゃんに伝えといてくれ。じゃあちょっと行ってくるわ、帰りは気を付けて帰れよ」

そう3人に告げてキビはオフィスを去った。



キビとコウノ達は目的の倉庫に近づく。

「にしてもこんな早く見つかるなんて、あの子達に頼んで正解でしたね」
無線でコウノが話す。

「そうだな、どうも働きづめだと視野が狭くなっちまうな」
キビがそう言うと腹の虫が鳴いた。

「ちょっと先輩、これから突入するんですからもっと緊張感を」
呆れた声でコウノが言う。

「いや、今のは私のじゃねぇよ。いや、なんかいい匂いするな。おかしいな今日はここで飯食ってない筈なんだけど……」
きょろきょろするキビ、するとヒョコッとシャーロットがバックミラー越しに現れた。

「なっ!?!!」
「す、すみません。ユキチカからカツ丼渡されて、食べかけですが食べますか?」
そう言ってシャーロットは申し訳なさそうに、かつ丼が入ったどんぶりを見せる。

「旨そうな匂いの正体それか~って違う!いつの間に忍び込んだんだッ!」
驚いているとジーナも影から出てきた、それも申し訳なさそうな顔をして。

「本当すみません、皆が用意をしている間に乗り込みました」
ジーナがそう言うと無線でコウノの声が聞えて来た。

「先輩!ユキチカさんとウルルさんが!」
コウノの車の後部座席に二人が座っていた。
「コウノも食べる?カツ丼」
「すみません、ユキチカ様を止められず……」
ウルルがペコペコ頭を下げる。

「だって、カオルちゃんの車の鍵勝手に開けたらグーされるから」
「なる、ほど……?」

無線越しにその話を聴いて、ため息をつくキビ。
「はぁ、来ちまったモンはしょうがない。コウノ、しっかりその二人の事を見ておけよ!ユキチカぁ、お前は後で話あるからなぁッ!」


そうこうしている内にキビ達は倉庫に到着する。

「倉庫ですね、雰囲気ありますね。お二人はもちろん……?」

車を停めて後部座席を見るコウノ、ユキチカは頷いて返事していた。

「ですよねぇ~何だか、だんだん分かって来ましたよ」
彼女はそう言って車の中で拳銃の確認をして車を降りる。

「コウノと他の奴はそっちに付いて行った二人と一緒に裏からだ、倉庫の中央で落ち合うぞ、良いな。ジーナちゃん、シャーロットちゃん、私の後ろから離れるないでね」
そうコウノ達に伝え、銃を構えながら先導するキビ。

「お二人も私たちが前後を挟む形で守りますので、くれぐれもお気をつけて」
コウノが先頭に立ち、他の部下達がユキチカとウルルを挟むように並び倉庫へと向かう。


「想定していたよりだいぶ早いわね。もう少しで完成だと言うのに」

薄暗い部屋で侵入に気付く女性。その女性はスーツを来てマスクを付けていた、マスクを付けていない部分をみるだけで分かる、まるで磨き上げられた大理石のような美しい肌をしていた。

彼女がメンハギだ。

メンハギは多少取り乱しながら正面の画面をみる。
モニターに映像が、どうやら倉庫中に隠しカメラがあるようだ。

「行きなさい、何とかして!そう、追い返してください!」
そう言うと彼女後ろに複数の人影が。

「交渉する余地は無いかと思いますが?まあなんとかしますよ」
その者達は武装しており、中には銃を持っている者もいた。

「くっ……最悪の場合、本当に最悪の場合は撃退するしかないでしょう……!」
少し呼吸を荒げるメンハギ。

「ええ、それならお任せあれ」
それだけ告げると集団はぞろぞろと部屋を出て行く。

(こんな事に意味はあるの……ここまでする意味が……?)
こんな声がメンハギの中で発生し、脳内をうるさく響きまわる。

「やめて!これは人々の悲願なの!!その為には……!!」
声をかき消すかのようにメンハギは怒鳴った。

彼女以外はハナが横たわっているだけの部屋。
ハナも眠っており彼女の怒りを聞いているのは彼女自身のみ。

(後ろの少女はどうなの?またあの子みたいに自ら命を絶ってしまうのでは?この前の女性だってそう、いくら処置をした所でそれはただの自己満足、罪の意識から逃げたいだけ!)

ふと目に留まる、鏡に映った自分の顔。
鏡の外から無数の手が現れ、顔を覆い、顔を引き剥がそうとしてきた。

彼女は頭を振ってその脳内の声をかき消す。

「もう止まれないッ!最後までやりきるしか、もう道はない」
再度鏡を見ると美しい肌の顔が一変、顔の左半分が老婆の肌になっていた。

彼女は番号が書かれた瓶を取り出し、中のクリームを振るえる手で取り出し顔に塗り始めた。塗り終えるとみるみるうちに肌は元の美しさを取り戻す。

「これが完成すれば私たちの夢は叶うの……そうでなければならない!」

自分になんとか言い聞かせ、頭を抑えながらも薬品を手に取る。そして怯えるように作業を再開するのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~

山須ぶじん
SF
 異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。  彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。  そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。  ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。  だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。  それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。 ※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。 ※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

関白の息子!

アイム
SF
天下一の出世人、豊臣秀吉の子―豊臣秀頼。 それが俺だ。 産まれて直ぐに父上(豊臣秀吉)が母上(茶々)に覆いかぶさり、アンアンしているのを見たショックで、なんと前世の記憶(平成の日本)を取り戻してしまった! 関白の息子である俺は、なんでもかんでもやりたい放題。 絶世の美少女・千姫とのラブラブイチャイチャや、大阪城ハーレム化計画など、全ては思い通り! でも、忘れてはいけない。 その日は確実に近づいているのだから。 ※こちらはR18作品になります。18歳未満の方は「小説家になろう」投稿中の全年齢対応版「だって天下人だもん! ー豊臣秀頼の世界征服ー」をご覧ください。  大分歴史改変が進んでおります。  苦手な方は読まれないことをお勧めします。  特に中国・韓国に思い入れのある方はご遠慮ください。

処理中です...