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1stフェーズ 始

No.5 こちら転校生の待機列30分待ちです、それとお出かけに行くようです

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「そういえばね、昨日ぼくの家に強盗きたんだー」
まるで夕食になにを食べたか、くらい軽いノリでユキチカは昨日の事を話す。

「えええー!鬼丸くんの家に強盗!?」
彼のクラスメイトがどよめく。

「私がその場にいながら、申し訳ありません」
「いいよー、ウルルに問題がなくてよかった!」
頭を下げるウルルにユキチカは笑ってそう答えた。

その日は体育の授業があった。

更衣室でウルルに着替させてもらうユキチカ。
「んー、この服重い」
「その運動着は防水は勿論、防火に防刃機能もついているので。勿論靴は安全靴なのでつま先には鉄板が入っています」

普通に考えたら過保護過ぎる体操着でグラウンドに出るユキチカ。

女子生徒は一般的な体操着、当然運動に適したものだ。

「僕もあれがいい」
「我慢してください、ユキチカ様」

本日はバドミントンを行う、各々ペアを組んで練習をしている。
ユキチカの元に生徒が駆け付ける。
先着順、名前順、背の順、みんなは色んな理由を付けて我先にと彼とペアを組もうとする。そこでウルルが列を作らせ、出席番号順にラリーをすることとに。

「鬼丸くん上手!」
「ねぇーまだー?」
「緊張して空振ったらどうしよ」

並ぶ彼女たちの最後尾でウルルが呼びかけていた。
「こちら30分待ちの列となっておりまーす」

「アトラクションか!」
ツッコむジーナ、彼女はハナとラリーをしていた。

「ハナちゃんは並ばなくて良いの?」
「うん、でも私運動苦手だし」
ハナはあちらこちらにシャトルを飛ばすがジーナはそれをちゃんと返していた。

「それこそジーナちゃんはどうなの?彼なら思いっきりできるんじゃない?」
「うーん、そうかもしれないけど。あの人数の中に混ざるのは……ちょっとねぇ」
そういうジーナをみてニヤニヤするハナ。

「な、なに?」
嫌な予感がしたジーナ、だが彼女が止めるよりも早くハナは先生にある提案をした。

「先生!ジーナちゃんが鬼丸くんと試合をしたいそうです!」
「まあ!それは良いですね!カラさん運動得意ですものね」
「え、え!?いやいや、先生別に私はそんな!」
ジーナが否定してももう先生たちには届かず、着々と試合の準備をしていた。


もう逃れられないジーナは観念し、コートに入る。

「はい、では始めますよー」
先生が審判の席に座る。

(まあいっか。窓から飛び降りるなんて超人的な事するやつが、どうするのか興味あるのは本当だし)

ジーナはラケットを構え、ユキチカに集中する。

「よろしくー」
手を降るユキチカ。

「では最初のサーブはカラさんです!それでは~開始!」
先生がホイッスルを鳴らす。

試合が始まる。
ジーナは高い評価を受けているだけあって、鋭い球を幾度なく打ち込んでくる。
だがユキチカもそれに対応し打ち返していた。

(結構良いの何本も打ってるのに、全然入らない。だったら!)

今度はユキチカのいる位置の逆側目掛け打ち込んだ。

「よっ!」
ユキチカはそれを飛び込んで打ち返す。

「えー、それ返しちゃうの?じゃあもっと速く!」
更に球速を高めるジーナ。

「スゴい……」
皆は既に自分たちが追いついていけない試合に唖然としていた。


(全然点数が入る気がしない!)
ジーナは思わず全力でラケットを振るった。

だがシャトルはユキチカの方ではなく先生の方に向かって飛んだ。

(先生が!!)

ジーナがそう思った瞬間、先生の前にユキチカが現れ、シャトルをキャッチ。

「せーふ!あ、でもぼくの負け、返せなかった」
先生の方に振り向いて手に持ったシャトルを振る。

「え?ああ、そうですね。ラリー中のシャトルが衣服や身体に触れてしまったので。ってそれよりも二人とも大丈夫ですかッ?!」
呆然としていた先生がユキチカとジーナに駆け寄った。

「はい、先生こそ大丈夫ですか?ごめんなさい」
「いえいえ、みんな無事なら何よりです」

「何が起きたの?大丈夫?」
「二人共すごかったねー!」

他の生徒も二人のもとに駆け寄り先の試合に関し称賛の言葉を伝えていた。

その中でウルルとジーナだけは違うことを考えていた。

(先程のシャトルの速度は時速300kmを超えていました。それを出せるジーナ様もですが、捕らえられるユキチカ様は一体……?)
(コートの端にいたのに気付いた時には先生の前に、本当になんなの)


その日の夜帰宅したユキチカはウルルにカレーとサラダを作って貰った。
彼女はスパイスを使いながらもユキチカが好きそうな家庭的なカレーに仕上げた、彼は本格的なものよりも家庭的な料理を好むみたいだ。

「ごちそうさまでした!カレーおいしかった!」
「それは何よりです、綺麗に召し上がって頂きありがとうございます」
夕飯を終えたユキチカ。

「お風呂の準備は済ませてありますので、お入りになられますか?」
食器を食洗機に入れながらユキチカに話しかけるウルル、しかし返事が来ない。

振り向くとそこにはユキチカはおらず、玄関の方から物音が。

「ユキチカ様?」
ウルルが足早に音の方へ向かう、するとユキチカが靴を履いて今にも外に出ようとしていた。

「お待ちください!いったいこんな時間にどこへ?」
「ケーキ」

キョトンとするウルル。
「け、ケーキ……ですか?」
「うん、あのお店行ってみたい」

「あのお店?うーん、ですが……」
「いこ!」
ユキチカはウルルの手を引く、ウルルも靴を履き外に出る。

「警備方々に止められますよ」
「うん、だからこっちからいく」
そう言ってユキチカは玄関を出て門とは違う方向に向かう。

壁を見上げる彼、ウルルに嫌な予感が走った。
「まさか……きゃっ!ユ、ユキチカ様?!」
彼女をお姫様だっこするユキチカ。

「ぴょーんっ」
そして軽く壁を飛び越えた。

ウルルをゆっくりと下ろし、ユキチカは歩き始めた。
(おかしいですね、警備の方が来ない。玄関にもカメラはあったのに)

その頃、警備の待機室。
「ケイさんそろそろ交代しましょうよ」
「いえ!失態が二度と繰り返されぬよう、私がっ!目を光らせておかねばっ!」
目の下にくまを作り、ケイは監視カメラから受信している映像を見つめていた。

「それ一番だめな頑張り方じゃあ……はい」
「ぐッなんて苦さ!これが罰なんですね!」

「人が淹れたコーヒーに何てこと言うんですか」
ケイと彼女の部下はコーヒー片手にモニターをみていた。
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