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第1章 アルテ

アルテの憂鬱

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 アルテは昼御飯を食べ、クラン長から言い渡された通りクランから出て行った。

その光景をクランハウス3階にある執務室からクラン長が見ていた。

そしてアルテの姿が見えなくなると同時に窓から離れ、

「これでいよいよ・・・。」

と言ってクラン昇格試験の用紙に記入し始めた。


 アルテはクランハウスから出ると、俯きながらも、冒険者でいる為に、生活する為に冒険者ギルドを目指した。

アルテが所属していたクランハウスから冒険者ギルドまでは歩いて20分ほどで着いた。

冒険者ギルドは昼時にも関わらず、バーエリアが併設されているので、そこで打ち上げと称して昼から酒を飲んでいるパーティーもいる。

そんなパーティーの一つである5人組パーティー「ファクトゥール」がアルテを見かけると声を掛けてきた。

「アルテ、金を払うからまた俺達の武器や防具を綺麗にしてくれよ。今回も割が良い仕事だったから儲けたからよ。」

と言ってアルテに声を掛けると、アルテは

「値段はいつもより高くなりますけどいいですか?さっきクランをクビになってしまって。ははは・・・」

と尻すぼみに言うと、

「お前をクビに?!まさか、お前のクランは、いやお前の元クランはバカなのか?」

と言ってきた。

アルテはクランをクビになり、憂鬱な気分になりながらこの冒険者ギルドに来た。

そこで掛けられた言葉が意外過ぎて困惑した。

自分が授かったスキルは「クリーン」でこれは綺麗にする以外に使い途が全くないダメスキルだ。

なのに、目の前にいるパーティーからは自分や周りが付けた評価と違うことを言っている。

困惑していると、「ファクトゥール」の錬金術師兼グラップラーのイズミが

「アルテ、君の価値に気付いていないものが多すぎる。君のスキル「クリーン」と、 魔法の「クリーン」は似て非なるものだよ。それこそ名前だけ似ている全くの別物だ。以前実験に付き合わせたこともあったが、鉄剣の耐久力テストでもそれは分かる。原因は未だ分からないが。君のスキル「クリーン」は綺麗にするだけではないのかもしれない。だから我々はキミに依頼する。多少高くなったとしても命を委ねる武器や防具、これの整備をお願いする。」

とアルテに言ってきた。

アルテはその言葉を聞いて

「励ましてくれてありがとうございます。それにスキルを良く言ってくれて。綺麗にさせてもらいます。ただ、先にギルドの受付でクラン脱退とソロ登録をしてきますので待っていて下さい。」

そう言ってアルテは受付へ向かった。

冒険者ギルドの受付は全部で4つある。

一つは新人さん(ギルド受付)専用の受付、2つはベテラン職員の受付、あと一つは強面のオッサン(いつも不機嫌にタバコ吸ってる)の受付がある。

クランをクビになったこともあり、新人の受付に行くと、女性職員さんが

「こんにちは、アルテさん。今日はどうされました?こちらは新人の受付ですよ」

と話し掛けられたので、アルテは今までの経緯を話し、新たにソロ冒険者として活動していくことを話した。

すると、女性職員さんは

「少し待っていて下さい」

と言って受付奥にある扉へ消えて言った。

そして5分ほどで戻ってくると、アルテに対して満面の笑みで

「アルテさんのソロ冒険者登録は今日はできません。3日後、ソロ冒険者資格試験を受けてもらってからそこで判断させていただきます。」

と言ってきた。

アルテは今までの自分の功績があまりに少ない為に反論せず、その申し出を受け、帰り際に「ファクトゥール」から防具等を預かって冒険者ギルドをあとにした。

ファクトゥールから武具の整備代金を先払いで貰っているので、そのお金で宿をとり、武具等を綺麗にして翌日ファクトゥールに武具等を渡した。

今アルテが持っているお金は節約して1ヶ月をギリギリ生活できる程度のお金しかなかった。

 本来は他のクラン員と同様に給料が発生するのだが、アルテはクランで最初こそパーティーを組んでいたが、パーティーに見限られて最終的にポーター(荷物運び兼アイテム採集、道案内等)のポジションについた。

ポーターのみで活動する場合通常の給料の5分の1程度しか至急されず、また戦闘に役立つスキルもほとんど覚えることがなかった。

そのため、ギルドでのソロ試験までの間、一人で色々と鍛練と準備を兼ねて街の外で簡単な薬草採集等の仕事をして過ごし、3日が経った。

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