4 / 12
第1章 身体がおかしい
第3話 領主様?
しおりを挟む
目が覚めて辺りを見回すと、そこは広い部屋だった。
しかも周りにはやたら豪華な家具がズラリ。
「お目覚めですか?」
ベッドの横から声が聞こえてきた。
声のする方を見ると、メイド服姿の女性が立っていた。
これが、噂のメイド付きの家か。
そう思ったのも束の間、その部屋に先ほどの男、おそらく父親だろうが入ってきて、抱き抱えて部屋の外に連れて行く。
~そして、それから月日が経ち、3年の月日が流れた~
「ファン様、領主様がお呼びです。」
自分ことファンが領主宅の庭を散歩していると、前方からメイドが呼びに来た。
呼びに来たメイドと共に領主ことお祖父様のところに向かっている間、この3年について思い返していた。
名前はファン・ルアン・トレック。
種族は人族で、父親が現領主候補。
トレック家の爵位は子爵で、現領主ヒイロ・ルアン・スコットは祖父にあたる。
領主になるための条件は、子息がいることで、婚姻後10年以内に子息を産むこと。
ファンの父親は妻カノンを溺愛し、側室を作らなかったため、ファンが産まれた年に子どもが出来なかったら、爵位取り上げで、平民として出奔する予定だった。
そのため、父親の兄弟達はファンの父親を平民扱いする始末だったが、子どもができたことにより、兄弟間のバランスが崩れ、次男であるファンの父親が第一領主候補となっている。
また、この世界では産まれた年に子どもの適正数値を計測し数値化してランク付けをするのだが、その測定で産まれながらにして、適正数値100(平均数値は20)を遥かに凌駕していたことから、Cランクに認定された。
これらのことから、領主宅にて自由と教養を受ける権利を獲得して、ファンは今日も自由に庭を散歩していたのだ。
コンコンコン
とメイドが屋敷の一室の扉をノックすると、中からオールバックのいかにも執事ですという風体をした男が扉内から出てきて、扉外にいるファンとメイドを確認すると
「これはファン様。今、会議が終わりましたので部屋にお入り下さい」
と深々とお辞儀をしながら、扉を開けたので、その開いた扉から室内に入った。
室内には窓が2つ、両側の壁に書物や冊子等が綺麗に整頓された状態で並べられ、部屋の中央にはソファーとテーブルの応接セットが鎮座しており、その部屋奥には黒色の執務机とその机奥の椅子に座る現領主ことヒイロ・ルアン・スコットが確認できた。
「お祖父様呼びましたか?」
と言って、執務机にファンが近づこうとしたところ、先ほどまで確かに執務椅子に座っていたヒイロの姿が消えた。
耳で付近の音を集中して聞いていたので、ファンの左後ろから、小さく
ミシッ
と音が聞こえた。
その音を聞いてすかさずファンが2歩下がるとさっきまでファンがいた場所にヒイロが立っていた。
いや立っていたというより、後ろからこっそり近づいて抱きしめようとしたのだろう、その両手が空を切っていた。
「また、避けられたか。おじいちゃんの愛情は避けたらダメだろうが」
とヒイロが言ってきたので、ファンは
「痛いよ。挨拶だと言って抱きしめられて死にそうになったよ。」
と言うと、ヒイロは
「それも愛情の一つだ。」
等と言ってガハハと笑った。
そのまま応接セットのソファーに座ると、先ほどの執事がコーヒーと菓子受けを持ってきて目の前のテーブルに置いた。
そのお菓子を食べながら、目の前にいるヒイロに
「今日はどうしたの?」
と聞くと、ヒイロは
「今日は確認したいことがあったから呼んだ。最近、庭からこっそり出て、メイドや兵士を撒いて街へ遊びに行っているみたいだが、街へは何をしに行っているんだ?」
と聞かれたので、ファンはどう答えるべきか悩み、
「お友達ができたから、会いに行ってる」
と答えた。
ヒイロはその答えを聞くと、ファンの顔をジッと見て、
「本当にそれだけか?じいちゃんには嘘はつかないでおくれ。」
と言ってきたが、ファンは首をかしげて知らないと答えた。
するとヒイロは
「ふむ、そうか。実はな、この屋敷から街への近道としてあるトンネルの近くで、山賊が住み着いていてな、近々討伐に行こうと部隊を編成していたのだ。すると、その山賊の一派が両手足を縛られた状態で街の入口に捨てられていた。しかも昨日のことだ。で、その山賊の何人もが、小さな子どもにやられたと、変な構えをして一切の魔法を使わずに叩きのめされたと言ったんだ。ワシの知る限りそんな子どもは街には住んでいないし、冒険者としても登録もされてない。どういうことじゃろな?」
とファンに言ってきた。
ファンは
「そんな強い人がいるんなら会ってみたいです。」
と言うと、ヒイロは
「ワシも会ってみたいと思っていたが、ファンが知らないなら分からないか。」
と言ってそこでこの話は終わった。
「ファンよ、ワシはまだ仕事があるから遊び相手になってやれん。あまり無茶はするなよ。」
とヒイロに言われ、内心ドキドキの状態で執務室を後にした。
あっぶね~、対して強くないし、刃物で脅してきたから捕まえたら問題になるなんて。変な格好って失礼な奴らだな。逮捕術っていう立派な技なのに。次会ったら心に刻みこむまで止めてやらん
とファンが物思いにふけながら、屋敷を抜け出し、いつもの街へ抜けるトンネルがある道に差し掛かった。
すると、
グガォ~
とどこからか何匹かの魔物の声と、金属が激しくぶつかり合う音が聞こえてきた。
ファンは何が起こったのか、音が聞こえる方向に走って向かって行った。
しかも周りにはやたら豪華な家具がズラリ。
「お目覚めですか?」
ベッドの横から声が聞こえてきた。
声のする方を見ると、メイド服姿の女性が立っていた。
これが、噂のメイド付きの家か。
そう思ったのも束の間、その部屋に先ほどの男、おそらく父親だろうが入ってきて、抱き抱えて部屋の外に連れて行く。
~そして、それから月日が経ち、3年の月日が流れた~
「ファン様、領主様がお呼びです。」
自分ことファンが領主宅の庭を散歩していると、前方からメイドが呼びに来た。
呼びに来たメイドと共に領主ことお祖父様のところに向かっている間、この3年について思い返していた。
名前はファン・ルアン・トレック。
種族は人族で、父親が現領主候補。
トレック家の爵位は子爵で、現領主ヒイロ・ルアン・スコットは祖父にあたる。
領主になるための条件は、子息がいることで、婚姻後10年以内に子息を産むこと。
ファンの父親は妻カノンを溺愛し、側室を作らなかったため、ファンが産まれた年に子どもが出来なかったら、爵位取り上げで、平民として出奔する予定だった。
そのため、父親の兄弟達はファンの父親を平民扱いする始末だったが、子どもができたことにより、兄弟間のバランスが崩れ、次男であるファンの父親が第一領主候補となっている。
また、この世界では産まれた年に子どもの適正数値を計測し数値化してランク付けをするのだが、その測定で産まれながらにして、適正数値100(平均数値は20)を遥かに凌駕していたことから、Cランクに認定された。
これらのことから、領主宅にて自由と教養を受ける権利を獲得して、ファンは今日も自由に庭を散歩していたのだ。
コンコンコン
とメイドが屋敷の一室の扉をノックすると、中からオールバックのいかにも執事ですという風体をした男が扉内から出てきて、扉外にいるファンとメイドを確認すると
「これはファン様。今、会議が終わりましたので部屋にお入り下さい」
と深々とお辞儀をしながら、扉を開けたので、その開いた扉から室内に入った。
室内には窓が2つ、両側の壁に書物や冊子等が綺麗に整頓された状態で並べられ、部屋の中央にはソファーとテーブルの応接セットが鎮座しており、その部屋奥には黒色の執務机とその机奥の椅子に座る現領主ことヒイロ・ルアン・スコットが確認できた。
「お祖父様呼びましたか?」
と言って、執務机にファンが近づこうとしたところ、先ほどまで確かに執務椅子に座っていたヒイロの姿が消えた。
耳で付近の音を集中して聞いていたので、ファンの左後ろから、小さく
ミシッ
と音が聞こえた。
その音を聞いてすかさずファンが2歩下がるとさっきまでファンがいた場所にヒイロが立っていた。
いや立っていたというより、後ろからこっそり近づいて抱きしめようとしたのだろう、その両手が空を切っていた。
「また、避けられたか。おじいちゃんの愛情は避けたらダメだろうが」
とヒイロが言ってきたので、ファンは
「痛いよ。挨拶だと言って抱きしめられて死にそうになったよ。」
と言うと、ヒイロは
「それも愛情の一つだ。」
等と言ってガハハと笑った。
そのまま応接セットのソファーに座ると、先ほどの執事がコーヒーと菓子受けを持ってきて目の前のテーブルに置いた。
そのお菓子を食べながら、目の前にいるヒイロに
「今日はどうしたの?」
と聞くと、ヒイロは
「今日は確認したいことがあったから呼んだ。最近、庭からこっそり出て、メイドや兵士を撒いて街へ遊びに行っているみたいだが、街へは何をしに行っているんだ?」
と聞かれたので、ファンはどう答えるべきか悩み、
「お友達ができたから、会いに行ってる」
と答えた。
ヒイロはその答えを聞くと、ファンの顔をジッと見て、
「本当にそれだけか?じいちゃんには嘘はつかないでおくれ。」
と言ってきたが、ファンは首をかしげて知らないと答えた。
するとヒイロは
「ふむ、そうか。実はな、この屋敷から街への近道としてあるトンネルの近くで、山賊が住み着いていてな、近々討伐に行こうと部隊を編成していたのだ。すると、その山賊の一派が両手足を縛られた状態で街の入口に捨てられていた。しかも昨日のことだ。で、その山賊の何人もが、小さな子どもにやられたと、変な構えをして一切の魔法を使わずに叩きのめされたと言ったんだ。ワシの知る限りそんな子どもは街には住んでいないし、冒険者としても登録もされてない。どういうことじゃろな?」
とファンに言ってきた。
ファンは
「そんな強い人がいるんなら会ってみたいです。」
と言うと、ヒイロは
「ワシも会ってみたいと思っていたが、ファンが知らないなら分からないか。」
と言ってそこでこの話は終わった。
「ファンよ、ワシはまだ仕事があるから遊び相手になってやれん。あまり無茶はするなよ。」
とヒイロに言われ、内心ドキドキの状態で執務室を後にした。
あっぶね~、対して強くないし、刃物で脅してきたから捕まえたら問題になるなんて。変な格好って失礼な奴らだな。逮捕術っていう立派な技なのに。次会ったら心に刻みこむまで止めてやらん
とファンが物思いにふけながら、屋敷を抜け出し、いつもの街へ抜けるトンネルがある道に差し掛かった。
すると、
グガォ~
とどこからか何匹かの魔物の声と、金属が激しくぶつかり合う音が聞こえてきた。
ファンは何が起こったのか、音が聞こえる方向に走って向かって行った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる