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しおりを挟む遅い、遅すぎる。
私はまだシエルの扉の前で待っていた。
ーーまさか、着る服がないとか……!?
いやそんなはずは……いやでも……。
「あの、ノエル様……」
そんなことを考えていたら、さっきの格好をしたままのシエルが申し訳なさそうに扉から出てきた。
「……?」
聞かずとも分かる。
さっきの格好のまんまということは着る服がなかったのだろう……。
だけれど、着る服がないの……?とわざわざ聞くのも無粋な気がしたので、首を傾げるだけに止めておいた。
「ふ、服が……、さっきまでは着れる状態だったんですけど、クローゼットの中を見たら全部切り刻まれていて……すみません……今回は行けそうにーー」
「ーーなんでそんなに冷静なの!?まさかこれまでにもこんなことが……はぁ、まぁいいわ、私の外套を貸すわ。ちょっとまってて」
私は使用人にお願いし、自分の外套を取ってきてもらう。
……ないかもとは思っていたけれど、まさか切り刻まれていたとは……。
誰か分からないけれど、切り刻んだやつ必ずしっぽを掴んで隠し事バラしてやるから!稀代の悪女を怒らせた事、後悔してなさい!!!
私は1人ひっそりと心に誓った。
■■■
楽しかった一日を終え、私は家族揃って夕食を食べていた。
私はここで少し、カマをかけてみようと思う。
……何事も早いにこしたことはなし!
「今日、シエルの服が全部切り刻まれていて居たのだけれど……あそこに私の(シエルに内緒で私が買ってクローゼットに入れた)服もあったの。一緒に切り刻まれていたみたいで……はぁ」
震えた手でスカートをぎゅっと握りながらゆっくりと発言する。
その方が悔しさを演出できるからだ。
そのあと、溜息を吐きながらそっと目を伏せる。
うん、我ながら完璧な演技だ。
しかも、台詞もあながち嘘ではない。
「!?それは本当なの?まぁ、そんな低俗な嫌がらせ、誰がやったのかしら……。分かったら、私がキツく言っておくわ」
びっくりした調子で目を見開き、眉根を寄せながら心配そうにキーラ様が言う。
「お母様……!ありがとうございます……」
私は少し目を潤ませ、俯いていた顔を上げ、心底助かったというようにまた下を向きホッとしたように笑う。
下からチラリとキーラ様を見ると決意を固めたような顔をしていて、流石にこれは犯人も焦るだろうな~とぼんやりと考えた。
「……」
私の反応とキーラ様の言葉にドルテアが焦ったように自分の従者を見て、足を思いっきり踏んずけ、顔を真っ赤に紅潮し、従者に向かってこの無能が!と口パクで話してるのがわかる。
……ドルテア、お前かよ。
「……ドルテア、急に挙動不審になってどうした?令嬢としての礼儀がなってないぞ」
私がドルテアの方を不審そうにじっと見つめていると、その視線に気付いたお父様が反対側に居るドルテアの方を見、眉根を寄せて、注意する。
……ナイスです!お父様!
「は、はい!お父様」
注意されたドルテアは目を泳がせビクビクとして周りを挙動不審にキョロキョロ見る。
……まるで、私がやりましたよ~っと言わんばかりに…。
「まさか……ドルテアが……」
お母様がびっくりしたように聞く。
すると、ドルテアは分かりや~すく動揺し、
「そ、そんな訳ないじゃないですか、お母様、まさか私がそんなこと……わ、私はその日疲れてすぐ寝たんですよ!!」
ドルテアが自分の従者を使いアリバイ工作をし始めた。
……これはまた厄介な……。
まぁ、絶対逃がさないけど。
証拠を見つけてさっきよりも悪い立場に落としてやる。
「…ドルテア様、どうしていつあったのか分かるのですか……?」
「は~?貴方が昨日やったって言ったんでしょう?」
「いえ、そうではなく、どうして夜あったと分かられたのかなと思いまして……」
私は心底疑問そうに言う。
すると、ドルテアは誰が見ても分かるように慌てふためき始めた。
そんなドルテアに彼女の従者も疲れたように見ていた。
「え?あ、や……」
ドルテアが必死に何かを言おうとするも、口をパクパク魚のように開け閉めするだけで、ろくな弁解の言葉が出てこない。
そんな、ドルテアを見たキーラ様は目をずっと細めてドルテアを睨めあげた。
ーーあっ、これはくる!
「ドルテア、後で私の部屋に来なさい」
「お、お母様誤解です!!!」
予想どうり来た言葉にドルテアは顔を真っ青にさせ、誤解だと言う。
……こんな状況で誤解です!は、愚の骨頂でしょ……。
私は余りにも頭の悪いドルテアにそっと失望した。
「………はぁ~貴方には本当にガッカリしたわ。もう、見苦しい言い訳はやめなさい。どうして私の子はこんななのかしら……」
キーラ様もドルテアにうんざりしている様子で、眉根にぐっと皺を寄せそう言い捨て、自室へと向かった。
キーラ様が出ていかれたあと、食卓の場はしーーんと静寂に包まれる。
ドルテアは私をキッと睨みつける。
めんどくさかったので私も早めに食事を食べ、先に食べ終え場の状況を伺っていたシエルを引き連れ、食卓の場を後にした。
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