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しおりを挟む目が覚めると、私は自室のベットで寝ていた。
ズキンっ
「……」
頭が少し痛いけれど、あれだけの事があったんだからまぁ、仕方ないか……、そう思い、私はゆっくりとベットから起き上り、ベットの傍に置いてあったベルをゆっくりと鳴らす。
ベルは、リンとはった美しい音を出し、私のお付の側仕えである初老の男性を呼んだ。
……本当に美しい音だ。
確か、私がこの音に一目惚れして買ったんだっけ……?
見た目が変わっても、私の好みは変わってないな~。
性格は、だいぶ、まぁ、凄い性格になっていたけれど。
今までの自分の言動を振り返りながら考える。
ーーこれは、稀代の悪女のまんまだな。
ん、稀代のあくz……あぁぁぁぁぁぁあ!
私、稀代の悪女に転生してるし!!
ぼふっ
布団の中で現実逃避をしようとするもーーー
「ノエル様!目が覚めたのですね!!!」
ーーこの人が一気に現実へと巻き戻す。
出来れば、ほっとしておいて欲しいな……と思いながら、未練がましく初老の男性を睨もうとすると、初老の男性は泣いていた。
そして、現れた初老の男性ーーじぃやは泣きながら言う。
「本当に良かったです!1週間も目覚めなかったのですよ!」
続け様に、ボソリと御家族の荒れようといったら……これで、もう安心だ、と言うのも忘れない。
人を漢方薬みたいに言うのはちょっとどうかと思うけれど、皆心配してくれてたんだなと思うと胸がジーンとした。
今世でもこんなに愛してくれている家族がいて本当に私は幸せ者だ。
ーーまぁ、私の努力の賜物なんだけどね。
■■■
トントンッ
じぃやが出てしばらくし、ドアがノックされる。
はい、どうぞと言うと、ドアが開かれ食べ物を載せたトレーを持った侍女が現れた。
「お嬢様、パンがゆをお持ちしました。きちんと食べて早く回復するようにとの仰せです。」
トン
パカッ
侍女がトレーを机に置き、銀の蓋を開けると、美味しそうなパンがゆが出てきた。
まだ、湯気が出ていて、どうやら今作ったばっかりのようだ。
……一人暮らしを初めてからお惣菜ばっかりだったから嬉しいな。
それにしても、誰からだろう…?この家で私がご飯を作り奥様方にお渡ししたことは何度かあったものの、私が手作りらしきものを貰うのは初めてだ……。
疑問に思った私は侍女に質問しようと口を開ける。
暗殺の可能性もあるからだ。
……私だって何度も殺されそうーーいや、殺されかけたんだから、例え好かれていたとしても、油断は禁物よね……。
「ふーん。誰から……?」
「勿論、家族全員からですよ!!!もぉ~ほんっと皆心配していたんですからね!!!!御家族の荒れようといったら……。」
私が質問をすると、質問された侍女は、頬を微かに上気させ、心配されたのが、自分であるかのように嬉しそうに答えた。
それにしても、奥様か……。
奥様ーーキーラ様は、気に入った人にはすごく甘い。
逆に敵対するもの、嫌いな人ーー身分の卑しいものなどには凄く厳しいのだ。
だけど、キーラ様の根は凄く優しい人だ。
話せば分かってくれる人。
どれだけ拒絶されたとしても、めげずに歩み寄れば、きっとシエル様も受け入れてくれる。
多分、ゲームの中のシエル様は、それをしなかった………いや、怖くてできなったのだろう。
ーーだから、私の今の家族もシエルも私もあんな結末に……。
まぁ、それはそうとして、このお食事がキーラ様からのものなら安心ね。
私は安心して、次女に労いの言葉をかけた後、下げさせ、優雅にご飯を食べ始める。
パクパク
うーん!美味しい!!
パンがゆは素朴ながらもホカホカしてて美味しく、周りの人達に心配される幸せを噛み締めながら私は食べた。
ーーー私も私の大好きな人達も絶対にバットエンドなんかに向かわないし、向かわせない!
私は1人、心に決心して、残りのスープも平らげた。
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