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しおりを挟む「今日からセシルの義兄になったシエルだよ。仲良くするように。ほらシエル、挨拶しなさい」
そう言って、お義父さまの後ろに隠れるようにして立っていた少年を、お義父さまが前に出るよう促す。
少年は、少しビクッとしたものの、観念して前にーー
ーーそれにしても、この光景どこかで見た事のある様な…?
……まぁ、どうでもいっか。
何となく見覚えのある光景に少し戸惑ったものの、あぁ、自分がここに養子に迎え入れられた時の光景と似ているのか、と深く考えずに神妙な顔でその子をじっと見つめる。
そんなことより、これから、どうなるのか凄く興味深かったからだ。
汚れてゴワゴワした髪、痣や傷だらけの身体、オドオドした自信のない態度、その中で、かろうじて綺麗に仕立て上げられた、服に着られてる感のある綺麗で豪奢な洋服。
この御屋敷の女主人であるキーラ様の嫌いなタイプド直球の薄汚い少年で、キーラ様が女狐と呼んで軽蔑している娼婦の子。
平民ならまだしも、娼婦……しかも、この子の存在をこの歳になって知ったということは何度かーーつい最近、会った事のあるお気に入りの娼婦だろう。
お義父さまに対して人一倍執着心のあるキーラ様が嫉妬しないはずがない。
きっと、猛烈に嫉妬して、色んな嫌がらせを行うだろう。
……ふふふ、これは一悶着ありそうね。
この少年は虐げられたまま生きるのか、……それとも、私みたいに強かに生きるのか
ーー見物だわ。
「は、はい!えと、シエルでーー」
「ーーなんで、こんな卑しい身分の子供を容姿に迎え入れたの!?私は認めないわ!!!」
紹介された少年ーーシエルと名乗ったかしら…?が、オドオドした口調で自己紹介を始めると、予想通りキーラ様の横槍が入った。
……それにしても、この光景、やっぱり何処かで……?
「キーラ、事前に説明していただろう?」
『えぇ、聞いたわよ。だけど、こんな卑しい身分の子だとは聞いていないわよ!!!』
「えぇ、聞いたわよ。だけど、こんな卑しい身分の子だとは聞いていないわよ!!!」
頭の中でどこかで聞いた台詞とキーラ様の言う台詞が重なり合う。
……偶然よね。
いくら私でも、未来を予想出来る力なんて持っていないもの。
そんな力持っていたら、あの悲劇だって私がーーーいや、今更悔いたってしょうがない。
あの事はもう、忘れよう。
……思い出したら、きっとまた泣いてしまうだろうから。
『だけど、この子は王族の血を引く証である藍色の瞳を持っている!……それに、この家には跡継ぎの男児が居ないだろ!!!』
「だけど、この子は王族の血を引く証である藍色の瞳を持っている!……それに、この家には跡継ぎの男児が居ないだろ!!!」
また、重なり合った!
どうして!どうして!なんで!?急に!?これは、未来を予知する力……?ーー
ーいや、それにしては、何かを思い出すような…。
『はぁ~?私が悪いって言うわけ!?王族の血を引いていたとしても、所詮は卑しい身分の子じゃない!!!』
「はぁ~?私が悪いって言うわけ!?王族の血を引いていたとしても、所詮は卑しい娼婦の子じゃない!!!」
これは、過去の記憶……?
いや、こんな記憶知らない。
私は、1度この人生を歩んだことがある!?ーー
ーーいや、違う前はもっと……あれ、前って何?
ふと脳裏に焦げ茶の髪の少女が映る。
あれは、何?
ーーあれは、私?
私は、日本人……ニホンジンって何!?
一気に沢山の情報が濁流のように、脳に押し寄せてくる。
やばい。
無理かも……。
「キーラは大体ーー……」
言葉が頭痛でだんだん聞き取れなくなる。
意識はだんだん朦朧としてきて、立っているのか倒れているのかそれすらも分からなくなる。
「ーーーっ」
……あぁ、倒れる。
ドサッ
「~~~っ」
「ーー……」
心配した周りの人達が私の周りに集まるのが分かる。
誰なのかすらも分からない。
立たなきゃ……だけども、身体が思うように動かない。
……あぁ、もう限界。
私にはキャパオーバーだわ。
そのまま、私の意識は途絶えた。
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