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変わる眼差し
しおりを挟む「………くすくすっ、や~と帰ってきたよ~」
ご丁寧に玄関で待って談笑していた御姉様が僕に気付き蔑んだ瞳を向ける。
「うわっ、ホントだ~」
シュトルツも気付き僕を嘲笑する。
「兄さんったら今まで何してたんですか~?そんな奴隷みたいな服でw」
「ぷっ、まぁ、セイったら~」
「あ、セイ、とーさん呼んでこいよ」
………
あぁ、もういやだ。
逃げ出したい。
「え~?めんどーい」
いつもの僕ならここらへんで泣いて厩戸に逃げ込んでいただろう。
だけど、僕はもう逃げない。
「くすくすっ、セイはリヒトの泣き顔みたくないの~?w」
「行って来ます!!!」
「まぁ、セイったら~w」
くすくすっ、くすくすっ、
嘲笑に泣き出したくなる。
だけど我慢だ。
こんな奴らなんか霞んで見えるほどの人になるんだから。
僕ーーいや、俺は負けない。
流石にいつもと雰囲気が違う僕に兄妹たちは少し戸惑う。
いつもだったらここらへんで泣いて逃げてるからな。
だが俺は逃げない。
だって、俺は全てにおいて勝利を掲げ生きていくのだから。
そして三分程たった後、御父様が来て、「なんだ?帰ってきてしまったのか」とバカにした調子で言う。
それに兄妹はどっと笑う。
いつもの事だ。
いつものこと。
このくらいなんてことない。
僕はすっかり濡れた髪を耳にかける。
初めて見せる俺の顔。
兄妹たちは唖然とする。
どうしたんだろ………?
だけど、そんな疑問を抱いてることが分からないように…
お前らの事なんか気にしてないとでもいうかのように俺は微笑みを讃えながら言った。
「ただいま、帰りました」と。
「お、おまえはっ、誰だ………!」
御父様が狼狽えながらいう。
当たり前だ。
いつもはビクビク怯えて笑顔なんて見せたことがなかった奴が、急に堂々とした表情で笑いながら話すのだ。
御父様のこんな表情始めてみた。
いつもはこの世の全てがつまらないとでも言いたげな顔をして、職務を全うしてるような奴がっ………こんな顔するなんてっ………
笑えてくる
「誰だなんてそんな悲しいこと言わないで下さい。私はあなたの毛嫌いしてる息子じゃないですか」
「………」
兄妹たちもザワザワし出す。
くくくっ、面白い。
ついでにこいつらの前で魔法でも行使してみようか。
出来損ないの俺がっ。
今なら出来るような気がするんだ。
力がっ、魔力が漲っている。
きっと出来る。
そう信じて………ゆっくりと目を閉じ、口を開ける。
「セメリテリオ レラ」
瞬間、俺の体を見えない水と青い光が包み込み、風が巻き起こる。
みるみる内に泥や血がおちていく。
良かった………成功した。
魔法の二重行使は常人でも難しいからな………。
ゆっくりと兄妹、そして御父様をみれば、目を大きく見開き硬直していた。
………面白い。
なんだか、面白くなった俺はまた魔法を行使する。
「ルメットル」
ぐわっ、僕の体をピンク色の光が包み込む。
そして、服が作り替えられていく。
あのおんぼろの服が上等な服に。
………このくらいでいいか。
「お目汚しでしたね。すみません」
そういって俺が上品に謝る。
そして、顔をあげると回りの顔つきが変わっていた。
敵意をもった眼差し、尊敬の眼差し、期待の眼差し………
などなど、差はあれど俺を嘲る目はなくなっていた。
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