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悪役令嬢、永遠に眠る
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悪女が死んだ。
かつては国随一の才女と謳われ、次期王妃と名高かった公爵家の女が、死んだ。
麗しい容姿に聡明さを兼ね備えていたその公爵家の女は、断頭台に上がる頃には見る影もなく、愚かな罪人として相応しい姿となっていた。女はかつて王太子の婚約者だった。
異界から落ちてきたという聖女の存在をきっかけに、王太子は婚約者である女から、異界からの聖女に目を向けるようになる。女の性格は苛烈で、王太子も手を焼くほどだった。
自然と王太子は婚約者の女から、可憐な少女である聖女と深く仲を持つようになる。次期王妃として期待を込められ教育を受けてきた女は、その苛烈な性格を持ってして聖女を責めたてた。
あなたは彼に相応しくない、隣に立つには身分不相応だ。
ーー女への愛情は既に枯れ果て、聖女を愛するようになっていた王太子は、女との婚約を破棄するまでに至った。
聖女及び王太子への毒殺未遂事件をきっかけに、婚約者だった女が犯人として挙げられ、ーー女の実家である公爵家は、王家に仇なしたとして謀反の疑いをかけられ、公爵家もろとも謀反人として断罪ーー処刑されようとしていた。
公爵家の人間の首が次々と処刑されていく光景を、悪女と呼ばれた女はただ見つめる。家族の首が、両親が最初に撥ねられた。次に兄、その次に女の番だった。両親はすまないと謝った。兄は守ってやれなかったと言った。
ギロチンの刃が煌めき、首が落ちる。光が失われ、暗く濁った瞳へと変わり果てる。ギロチンの刃が血に染まり、命が消える。首と胴に断たれた遺体は、有志の人間によって何処かへと運ばれていく。どこへ行くのかは分からなかったが、恐らく女もそうなるのだろう。女の番が来た。誰もが憎悪を抱いて女を見ていた。罵倒の嵐が止むことはなく、その場の人間全てが、女の死を望んでいた。熱狂的な、異様な雰囲気が漂っていた。誰もがあの可憐な聖女様を愛していた。だからこそ、許せるはずが無い。かつて才女と謳われ、今では悪女と憎まれる女は全てに絶望していた。絶望し、感情も枯れ果てたーー筈だった。狂気に落ちた女は、断頭台へと上がる。ーー首を固定され、ギロチンの刃が振り下ろされると同時に、
呪いの言葉を叫んだ。
処刑は一瞬だった。
ギロチンの刃が煌めき、女の首を断つーーその刹那まで女の口は動き続けた。
王家に呪いあれ、聖女に呪いあれと。
首が撥ねられ、転がった女の首を持ち上げると、見るも恐ろしい表情に、場は静まり返った。
こうして悪の公爵家は断罪された。その命を持って。
王太子はその最後を見届けると同時に、恐ろしげに震える聖女に微笑みかけた。
「悪女は死んだ、もう居ない」と。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
場所は打って変わって、荒れ果てた共同墓地。
ーーせめてもの情けとして胴と首を縫い合わされた女の、公爵家の人間の死体は人知れず墓地へと運ばれ。穢れた身分の下僕によって埋葬された。
荒れ果て滅多なことでは近寄るものもいないこの場所にーー、一人の男が訪れる。
「久しぶりに、いいもの見させてもらった。面白そうだから、少し、弄らせて貰うよ」
そう言って笑った男の瞳には、嬉々として暗い歓喜の色が混じっていた。
かつては国随一の才女と謳われ、次期王妃と名高かった公爵家の女が、死んだ。
麗しい容姿に聡明さを兼ね備えていたその公爵家の女は、断頭台に上がる頃には見る影もなく、愚かな罪人として相応しい姿となっていた。女はかつて王太子の婚約者だった。
異界から落ちてきたという聖女の存在をきっかけに、王太子は婚約者である女から、異界からの聖女に目を向けるようになる。女の性格は苛烈で、王太子も手を焼くほどだった。
自然と王太子は婚約者の女から、可憐な少女である聖女と深く仲を持つようになる。次期王妃として期待を込められ教育を受けてきた女は、その苛烈な性格を持ってして聖女を責めたてた。
あなたは彼に相応しくない、隣に立つには身分不相応だ。
ーー女への愛情は既に枯れ果て、聖女を愛するようになっていた王太子は、女との婚約を破棄するまでに至った。
聖女及び王太子への毒殺未遂事件をきっかけに、婚約者だった女が犯人として挙げられ、ーー女の実家である公爵家は、王家に仇なしたとして謀反の疑いをかけられ、公爵家もろとも謀反人として断罪ーー処刑されようとしていた。
公爵家の人間の首が次々と処刑されていく光景を、悪女と呼ばれた女はただ見つめる。家族の首が、両親が最初に撥ねられた。次に兄、その次に女の番だった。両親はすまないと謝った。兄は守ってやれなかったと言った。
ギロチンの刃が煌めき、首が落ちる。光が失われ、暗く濁った瞳へと変わり果てる。ギロチンの刃が血に染まり、命が消える。首と胴に断たれた遺体は、有志の人間によって何処かへと運ばれていく。どこへ行くのかは分からなかったが、恐らく女もそうなるのだろう。女の番が来た。誰もが憎悪を抱いて女を見ていた。罵倒の嵐が止むことはなく、その場の人間全てが、女の死を望んでいた。熱狂的な、異様な雰囲気が漂っていた。誰もがあの可憐な聖女様を愛していた。だからこそ、許せるはずが無い。かつて才女と謳われ、今では悪女と憎まれる女は全てに絶望していた。絶望し、感情も枯れ果てたーー筈だった。狂気に落ちた女は、断頭台へと上がる。ーー首を固定され、ギロチンの刃が振り下ろされると同時に、
呪いの言葉を叫んだ。
処刑は一瞬だった。
ギロチンの刃が煌めき、女の首を断つーーその刹那まで女の口は動き続けた。
王家に呪いあれ、聖女に呪いあれと。
首が撥ねられ、転がった女の首を持ち上げると、見るも恐ろしい表情に、場は静まり返った。
こうして悪の公爵家は断罪された。その命を持って。
王太子はその最後を見届けると同時に、恐ろしげに震える聖女に微笑みかけた。
「悪女は死んだ、もう居ない」と。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
場所は打って変わって、荒れ果てた共同墓地。
ーーせめてもの情けとして胴と首を縫い合わされた女の、公爵家の人間の死体は人知れず墓地へと運ばれ。穢れた身分の下僕によって埋葬された。
荒れ果て滅多なことでは近寄るものもいないこの場所にーー、一人の男が訪れる。
「久しぶりに、いいもの見させてもらった。面白そうだから、少し、弄らせて貰うよ」
そう言って笑った男の瞳には、嬉々として暗い歓喜の色が混じっていた。
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