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14話 未来
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わたしは屋敷の自室で、シエルと二人でのんびりとしていた。
ライディンへの返事をどうするかは考えているものの、そこまで急ぐ必要は無いだろうとしている。
「もうあの男が来てもあまり話題に出さなくなったね」
好きの反対は嫌いではなく無関心である。
シエルに話題に出されてようやく思い出した次第であり、わたしの中で彼の存在は希薄になりつつあった。
「ああ、ローウェンね。レイナとよろしくやっているんじゃないかしら」
ローウェンは相変わらずレイナにべたべたしており、その勢いは留まるところを知らない。
「結局心配そうにしている割には来ないし、どうでもいいのよ」
わたしに良い顔ができればそれで問題無いだろうとの、押し付けがましさが彼からは臭っている。
これが臭くて臭くて、わたしを彼からなおさらに引き剝がす。
引き裂かれた関係はもはや修復不可能なまでに深い底を作っていた。
「あなたがそう言うのなら、私も従うまでだよ」
シエルはわたしの決定に全面的に納得している。
使用人として、そして唯一無二の親友として、わたしと二人三脚で道を切り拓こうとしていた。
「ありがとう」
わたしは天井に垂れ下がっているシャンデリアを見上げるように、席に腰をかける。
天井にある花柄の模様に心を落ち着かせながら、テーブルに置かれた紅茶に手を置く。
閉じたまぶたには、わたしの想像による雄大なる自然の情景が浮かんでいた。
「はぁ……今日の紅茶も絶品だわ」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
わたしは口に残るほのかな苦味を噛み締めつつ、窓から見える外のリアルな情景をも嗜む。
「あら、あの馬車は……」
わたしは遠目に見かけた馬車の姿を目撃する。
どうやらこちらに来ているようだが、頻繁に来ている来客はレイナと遊興に浸っている。
あの人かもしれないと、わたしは部屋から飛び出し、レイナたちには目もくれずに庭まで来ていた。
それから時間が経たないうちに訪れた馬車からは、わたしの見知った顔が護衛を伴って現れる。
「この前の返事を伺いに来ました」
ローウェンと並ぶか、それ以上の顔立ちの整いようである彼は紛れも無く、わたしと馴染み深い関係にあるライディンであった。
「ライディン様、お久しぶりです」
大公である彼にわたしはすかさずお辞儀をし、久々の再会の喜びを笑顔に表していた。
ライディンはそれに即座に反応して、同じく笑顔を讃える。
「ローウェンとやらに裏切られたと聞いて、私は君を心配していたんだ」
「こんなわたしをわざわざ心配をしてくださり、ありがとうございます。誠に恐縮です」
「自分を卑下しなくて良いさ。私は同じ男として、君を傷つけたローウェンを許せない。それだけだ」
彼が来たのはわたしの両親にひた隠しにしていた婚約の件と、さっきも話していたように、わたしの返事を聞きに来たためである。
「ところで、この前の返事はどうかな」
「わたしはあれから何日も考えました」
ローウェンの件も含めて、わたしは自身の未来を慎重に吟味して、新たな道を見出した。
「大公様に愛してもらえるなら、わたしは喜んであなたの伴侶になりましょう」
あれだけのことを受けて、ローウェンへの未練はもはや消滅した。
まやかしが解けたわたしは、ライディンの愛は真実だと断言できる。
「では、あなたの両親に相談しに行きましょう」
「はい!」
ローウェンから受けた仕打ちは忘れ、新しい道に取り組む。それがわたしの選んだ幸せな未来である。
「リエナ、そこの男は何者なんだ!」
わたしの両親がいる部屋へ案内しようとしていたところ、エントランスにて過去の亡霊であるローウェンが恐ろしい形相で立ちはだかっていた。
ライディンへの返事をどうするかは考えているものの、そこまで急ぐ必要は無いだろうとしている。
「もうあの男が来てもあまり話題に出さなくなったね」
好きの反対は嫌いではなく無関心である。
シエルに話題に出されてようやく思い出した次第であり、わたしの中で彼の存在は希薄になりつつあった。
「ああ、ローウェンね。レイナとよろしくやっているんじゃないかしら」
ローウェンは相変わらずレイナにべたべたしており、その勢いは留まるところを知らない。
「結局心配そうにしている割には来ないし、どうでもいいのよ」
わたしに良い顔ができればそれで問題無いだろうとの、押し付けがましさが彼からは臭っている。
これが臭くて臭くて、わたしを彼からなおさらに引き剝がす。
引き裂かれた関係はもはや修復不可能なまでに深い底を作っていた。
「あなたがそう言うのなら、私も従うまでだよ」
シエルはわたしの決定に全面的に納得している。
使用人として、そして唯一無二の親友として、わたしと二人三脚で道を切り拓こうとしていた。
「ありがとう」
わたしは天井に垂れ下がっているシャンデリアを見上げるように、席に腰をかける。
天井にある花柄の模様に心を落ち着かせながら、テーブルに置かれた紅茶に手を置く。
閉じたまぶたには、わたしの想像による雄大なる自然の情景が浮かんでいた。
「はぁ……今日の紅茶も絶品だわ」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
わたしは口に残るほのかな苦味を噛み締めつつ、窓から見える外のリアルな情景をも嗜む。
「あら、あの馬車は……」
わたしは遠目に見かけた馬車の姿を目撃する。
どうやらこちらに来ているようだが、頻繁に来ている来客はレイナと遊興に浸っている。
あの人かもしれないと、わたしは部屋から飛び出し、レイナたちには目もくれずに庭まで来ていた。
それから時間が経たないうちに訪れた馬車からは、わたしの見知った顔が護衛を伴って現れる。
「この前の返事を伺いに来ました」
ローウェンと並ぶか、それ以上の顔立ちの整いようである彼は紛れも無く、わたしと馴染み深い関係にあるライディンであった。
「ライディン様、お久しぶりです」
大公である彼にわたしはすかさずお辞儀をし、久々の再会の喜びを笑顔に表していた。
ライディンはそれに即座に反応して、同じく笑顔を讃える。
「ローウェンとやらに裏切られたと聞いて、私は君を心配していたんだ」
「こんなわたしをわざわざ心配をしてくださり、ありがとうございます。誠に恐縮です」
「自分を卑下しなくて良いさ。私は同じ男として、君を傷つけたローウェンを許せない。それだけだ」
彼が来たのはわたしの両親にひた隠しにしていた婚約の件と、さっきも話していたように、わたしの返事を聞きに来たためである。
「ところで、この前の返事はどうかな」
「わたしはあれから何日も考えました」
ローウェンの件も含めて、わたしは自身の未来を慎重に吟味して、新たな道を見出した。
「大公様に愛してもらえるなら、わたしは喜んであなたの伴侶になりましょう」
あれだけのことを受けて、ローウェンへの未練はもはや消滅した。
まやかしが解けたわたしは、ライディンの愛は真実だと断言できる。
「では、あなたの両親に相談しに行きましょう」
「はい!」
ローウェンから受けた仕打ちは忘れ、新しい道に取り組む。それがわたしの選んだ幸せな未来である。
「リエナ、そこの男は何者なんだ!」
わたしの両親がいる部屋へ案内しようとしていたところ、エントランスにて過去の亡霊であるローウェンが恐ろしい形相で立ちはだかっていた。
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