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2話 レイナとローウェン
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レイナはたくさんのおもちゃを買ってもらえて、とても嬉しそうにしている。
それとは真逆に、わたしはかなり苛立っている。
ローウェンはわたしがよほど怖いのだろう。言うまでもなく慌てている。
「何か言うことは無いのかしら」
わたしとの約束をほったらかしてレイナと遊び歩いているのはどういうことか。
粗方予想はしていたけど、実際に脳天気そうに妹を送っていた姿には怒りが込み上げてくる。
「言うことと言われても、特には……レイナと出掛けていただけだしね」
ローウェンは悪怯れること無く、むしろ開き直るという芸当を披露する。
レイナもレイナで買ってもらったおもちゃばかりを見ていて、我関せずである。
「わたし、たくさん待たされたのよ」
「それはご愁傷様」
「なんで他人事? 謝ったりはしないのかしら」
わたしは一向に謝る素振りを見せないこの愚か者に心底辟易している。
ローウェンとはこんなに薄情者だったのだろうか。
人は変わる。わたしは暇を持て余した際のそれを思い返して、ローウェンに当て嵌める。
ローウェンが約束を反故にし、彼にとってはわたしの妹という見方しか無いだろうレイナを贔屓にするなんて考えたくもない。
つまり、レイナとローウェンは特別仲が良くもなかったのに、いつしかわたしを置き去りにするようになったのだ。
「訳を言いなさいよ。黙っているばかりじゃ納得できないわ」
「最近、レイナがかわいく見えてきたんだ」
そこでわたしの思考が停止する。
たしかにかわいく振る舞うレイナだけど、こいつは腹黒い女だ。
ぬいぐるみや人形は、実は大して好きでもない。容姿と併せて構ってもらうための道具に使っている。
ローウェンはまんまとレイナの策略に嵌っているのは言うまでもない。
「あんたはレイナを何も分かっていないわ」
「お義兄様!」
「おっと、どうしたんだい」
「明日もまた来てくれる?」
わたしが堪りかねてレイナのことをぶちまけようとしたところで、彼女が狙い澄まして乱入してきた。
小柄な体で見た目相応に世俗から浮いているようで、こいつは自分の立ち位置を分かっている。
「もちろんだ」
「えへへ、嬉しい」
わたし抜きで互いに了承し、約束をする二人に、わたしは立場をすっかり失う。
「埋め合わせはしなさいよね」
「善処するよ」
レイナとの約束には即答で了解する割に、わたしに対しては言葉を濁す。
どう考えても、これはローウェンからレイナへの贔屓であった。
「ちゃんと覚えておいてよね」
「じゃあなレイナ」
「うん!」
怒るわたしとは接しないように無難な態度でレイナにはちゃっかり笑いかけるローウェンは、彼女に手を振りながら馬車に乗り込んだ。
「お姉様ったら子どもだね」
「あんたに言われたくはないわよ」
彼がわたしに再び振り向いてくれることを信じて、後日のデートにわたしは想いを馳せた。
それとは真逆に、わたしはかなり苛立っている。
ローウェンはわたしがよほど怖いのだろう。言うまでもなく慌てている。
「何か言うことは無いのかしら」
わたしとの約束をほったらかしてレイナと遊び歩いているのはどういうことか。
粗方予想はしていたけど、実際に脳天気そうに妹を送っていた姿には怒りが込み上げてくる。
「言うことと言われても、特には……レイナと出掛けていただけだしね」
ローウェンは悪怯れること無く、むしろ開き直るという芸当を披露する。
レイナもレイナで買ってもらったおもちゃばかりを見ていて、我関せずである。
「わたし、たくさん待たされたのよ」
「それはご愁傷様」
「なんで他人事? 謝ったりはしないのかしら」
わたしは一向に謝る素振りを見せないこの愚か者に心底辟易している。
ローウェンとはこんなに薄情者だったのだろうか。
人は変わる。わたしは暇を持て余した際のそれを思い返して、ローウェンに当て嵌める。
ローウェンが約束を反故にし、彼にとってはわたしの妹という見方しか無いだろうレイナを贔屓にするなんて考えたくもない。
つまり、レイナとローウェンは特別仲が良くもなかったのに、いつしかわたしを置き去りにするようになったのだ。
「訳を言いなさいよ。黙っているばかりじゃ納得できないわ」
「最近、レイナがかわいく見えてきたんだ」
そこでわたしの思考が停止する。
たしかにかわいく振る舞うレイナだけど、こいつは腹黒い女だ。
ぬいぐるみや人形は、実は大して好きでもない。容姿と併せて構ってもらうための道具に使っている。
ローウェンはまんまとレイナの策略に嵌っているのは言うまでもない。
「あんたはレイナを何も分かっていないわ」
「お義兄様!」
「おっと、どうしたんだい」
「明日もまた来てくれる?」
わたしが堪りかねてレイナのことをぶちまけようとしたところで、彼女が狙い澄まして乱入してきた。
小柄な体で見た目相応に世俗から浮いているようで、こいつは自分の立ち位置を分かっている。
「もちろんだ」
「えへへ、嬉しい」
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「埋め合わせはしなさいよね」
「善処するよ」
レイナとの約束には即答で了解する割に、わたしに対しては言葉を濁す。
どう考えても、これはローウェンからレイナへの贔屓であった。
「ちゃんと覚えておいてよね」
「じゃあなレイナ」
「うん!」
怒るわたしとは接しないように無難な態度でレイナにはちゃっかり笑いかけるローウェンは、彼女に手を振りながら馬車に乗り込んだ。
「お姉様ったら子どもだね」
「あんたに言われたくはないわよ」
彼がわたしに再び振り向いてくれることを信じて、後日のデートにわたしは想いを馳せた。
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