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第四章 永久機関・オートマタ
第四十三話 多重剣聖結界 Ⅰ
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東の空に恒星が昇りあたりをゆっくりと照らし始めた頃、蒸気機関停留所前で激しく火花が飛び散った。レイとグラブは互いの獲物を片手に相手の技量を手探りで探り始める。どれ程の実力なのか、自分とどの程度離れているのか、はたまた拮抗しているのか。
始まったばかりの戦闘で両者はまだ何も動かない。ひたすら剣を交えながら様子を見ているようだった。
動きが有ったのは幾度目かの衝突があったこの時、朝日がレイの視界に飛び込み一瞬だけ目を細めた。
「っと、わりぃな」
グラブは一度後ろへと飛び横に動き出した。
「ずいぶんと紳士な事をするんですね」
「剣聖と殺し合うなんて経験は生きていても早々多くはねぇだろう。正々堂々とやって見てぇと思っただけだ」
「その割には随分と消耗させてくれたみたいですけど」
「悪く思うな、ソレだけテメェの肩書は重たいんだ」
ミトの視界にはこう映っていた、両者が日の出と水平に対峙しもう一度構えている所を。少し息を切らして霊剣を構えるレイと、涼しい顔をして汗一つかいていないグラブ。消耗させられたレイにとっては多少分が悪い。
双方は動かない、ただひたすら互いを見つめ隙を伺っている感じにも見えた。
だが拮抗が崩れたのは東部の方でなった建物が崩れる音だった。
その瞬間双方は同時に前へと走り出しもう一度剣激を交える。一つ、二つ、三つ――九つはぶつかっただろう。ミトの目には三つ目以降がまるで見えていなかった。ぶつかり合うたびに火花が飛び両者の顔を映し出す。
「早いな剣聖」
「アンタも、本当にどうして」
苦しそうな表情のレイとは裏腹のグラブ。
剣激が交わった後互いに力比べをしているかのように両者一歩も動かない。しばらく――時間にして五秒も無いだろう。言葉を交わした後グラブが動いた。右手に持つ剣の力を一瞬緩めるとレイの左側へと体を潜り込ませた。拮抗していた力バランスが崩れレイが正面に崩れる。その目には「しまった」と浮かび上がっているのをグラブは見逃さなかった。
左膝を上げてレイの腹部へと打撃を加える。肝臓の部分に当ったグラブの膝はレイの表情を苦しませるのに然程苦労はしなかった。体がくの字に折れ曲がったレイの背中に右手に持つ剣の柄を垂直に叩き下ろす。
「――そんなもんか剣聖」
残念そうな目をしていた。
世界最強の称号を最年少で取得した目の前の少年に対し、苛立ちと落胆の表情を見せた。しかし――。
「まさかっ!」
悶絶しているレイの何処にその瞬発力があったのだろうとミトは我が目を疑っただろう。無理な体制から状態を起こし百八十度旋回しながら霊剣をグラブ目がけて大振りする。虚を突かれたグラブ本人もそれには堪らず後ろへと飛びレイの攻撃を目と鼻の先スレスレでかわした。
「流石カルナック・コンチェルトの弟子ってだけはあるな、一般人の俺とはソレが違う」
「貶してるのか褒めてるのか良く分からないね、アンタだって僕からすれば到底一般人とは思えないんだけど」
「剣聖にそう言われると嬉しいねぇ、それじゃぁ少しだけ本気出していこうか。テメェもまだまだそんなもんじゃねぇだろ!」
グラブが小さくステップを踏んだとと思ったその瞬間、彼が突如としてレイの目の前に移動した。
「――っ!」
咄嗟の事にレイは上体をのけ反らした。一秒前迄体があった場所にグラブの剣が横一杯にスイングして行った。焦ったレイはそのまま後ろへと飛び上がると片膝をついて顔を上げた。
見えなかった、氷雪剣聖結界を発動しているにも関わらずグラブの移動速度に目が追い付いて行かなかった。一体彼が何をしたのかも理解できていない。同時に意味を知った。少しだけ本気を出そうがどんな事なのかを。
剣聖結界を施せば生身では到底到達できない領域へと身体を強化することが出来る。だが目の前に居るグラブは生身だった。レイが困惑するのも無理はない。だが現実はどうだろうか、それがレイの頭の中で軽い混乱を招いた。
「見えてねぇなその様子だと」
「生身でそんな攻撃できるはずが――アンタ一体何者なんだ」
レイの顔から噴き出す汗の量が焦りを物語っている。今まで対峙してきた帝国兵の中でも最強の分類に入るグラブの得体の知れない技に恐怖を抱いていた。強いて言うのであれば、半年前戦ったレイブン・イフリートに匹敵する。
「全て目で見ようとするから分からねぇんだよ小僧が」
そう言い残してまたレイの視界から消えた。再び気配を感じたのは背中からだった。
右手に持つ剣を大きく振りかぶった状態でレイの後ろに現れたグラブはそのまま彼に向かって剣を振り下ろす。ギリギリの所で体を動かしてグラブの攻撃をかわしもう一度横へ飛ぶ。
見えない、相手の動きもそうだが一瞬気配が消えるのだ。
「強い――」
「どういたしまして剣聖」
何が何だか分からないでいた。動きが見えないのは何故なのか、一瞬気配が消えて瞬間的に現れるのは何故なのか。ひたすら自問自答を繰り返しながらギリギリの所で攻撃を避けるのが精一杯だった。
「でも退屈だぜ剣聖、もっとしっかりして貰わないと折角の戦いが興ざめだ」
「そうですね、僕もそう思います。貴方ほどの武人に全力を出さずにこの後の事を考えて余力を残すなんて馬鹿だと自分でも思います。だから――」
ゆっくりと立ち上がり呼吸を整えるレイ、同時に周囲のエーテルをゆっくりと取り込み大きく息を吸い込んだ。冷風がより一層きつくなりレイの周囲の気温を下げ始める。両目を閉じ霊剣を正面に構えて深く体内エーテルを練り始めた。
「多重剣聖結界」
冷風がレイの周囲から一瞬にして大量に放出した。同時に彼の体に風がゆっくりと集まってくる。
「やっぱりテメェもバケモンだな」
グラブはこの時初めてレイに恐怖を覚えた、今まで隠してきた術や技が一つや二つはあるだろうと確信していたが――これはグラブにとって誤算だっただろう。見る見るうちに対峙する少年のエーテル反応が増幅していくのをその目で見た。カルナックの弟子、剣聖、そしてもう一つ。本来のレイ・フォワードとしての一面。
「何かあっても後は頼むね、アデル」
増幅したエーテルはレイの体を覆い包むと外部へと一気に放出された。
グラブは畏怖した、目の前の少年に対し出来る限りの畏怖をした。まるで怪物の如くその迫力。鬼気迫るとはまさにこの事だと悟る。これ程のエーテルを一度に放出すれば己の体がどうなるかを理解しているのかと、捨て身にも程がある。仮にグラブを倒せた所でその先は? それらを一切無視して今全力でグラブを刈る事だけを考えた行動。
「暴風剣聖結界」
氷雪剣聖結界の上から暴風剣聖結界を重ね掛けした多重剣聖結界、体にかかる負荷は想像をはるかに超える。まして十四歳の子供が会得しているのが不思議な位な代物。もって数分が限界だろうその蛮行にグラブは笑顔を作った。
「――良いねぇ、良いねぇ良いねぇ良いねぇ! そう来なくっちゃな! そうでなくちゃ面白くねぇ!」
両腕を広げて盛大に笑い、そして自身もまた全力を持って目の前の怪物を倒さなくてはとスイッチを切り替えた。
「それでこそ剣聖! それでこそカルナックの弟子! それでこそ――っ!」
今まで右手一本で構えていた細身の直剣を両手で構え、また自身もエーテルを練り始める。その姿に今度はレイが意表を突かれた。その危険性を考えてはいなかったのだ。いや、正確には考えていなかったのではない。考えたくなかっただけなのかもしれない。
目の前の男はカルナックの弟子ではない、カルナックとはかかわりのない人間。そう、それが彼等の慢心であり油断だった。
「炎帝剣聖結界」
フレデリカ・バークが居ると言う事は勿論剣聖結界使いが居ても不思議ではない。それが彼等の誤った認識だった。
始まったばかりの戦闘で両者はまだ何も動かない。ひたすら剣を交えながら様子を見ているようだった。
動きが有ったのは幾度目かの衝突があったこの時、朝日がレイの視界に飛び込み一瞬だけ目を細めた。
「っと、わりぃな」
グラブは一度後ろへと飛び横に動き出した。
「ずいぶんと紳士な事をするんですね」
「剣聖と殺し合うなんて経験は生きていても早々多くはねぇだろう。正々堂々とやって見てぇと思っただけだ」
「その割には随分と消耗させてくれたみたいですけど」
「悪く思うな、ソレだけテメェの肩書は重たいんだ」
ミトの視界にはこう映っていた、両者が日の出と水平に対峙しもう一度構えている所を。少し息を切らして霊剣を構えるレイと、涼しい顔をして汗一つかいていないグラブ。消耗させられたレイにとっては多少分が悪い。
双方は動かない、ただひたすら互いを見つめ隙を伺っている感じにも見えた。
だが拮抗が崩れたのは東部の方でなった建物が崩れる音だった。
その瞬間双方は同時に前へと走り出しもう一度剣激を交える。一つ、二つ、三つ――九つはぶつかっただろう。ミトの目には三つ目以降がまるで見えていなかった。ぶつかり合うたびに火花が飛び両者の顔を映し出す。
「早いな剣聖」
「アンタも、本当にどうして」
苦しそうな表情のレイとは裏腹のグラブ。
剣激が交わった後互いに力比べをしているかのように両者一歩も動かない。しばらく――時間にして五秒も無いだろう。言葉を交わした後グラブが動いた。右手に持つ剣の力を一瞬緩めるとレイの左側へと体を潜り込ませた。拮抗していた力バランスが崩れレイが正面に崩れる。その目には「しまった」と浮かび上がっているのをグラブは見逃さなかった。
左膝を上げてレイの腹部へと打撃を加える。肝臓の部分に当ったグラブの膝はレイの表情を苦しませるのに然程苦労はしなかった。体がくの字に折れ曲がったレイの背中に右手に持つ剣の柄を垂直に叩き下ろす。
「――そんなもんか剣聖」
残念そうな目をしていた。
世界最強の称号を最年少で取得した目の前の少年に対し、苛立ちと落胆の表情を見せた。しかし――。
「まさかっ!」
悶絶しているレイの何処にその瞬発力があったのだろうとミトは我が目を疑っただろう。無理な体制から状態を起こし百八十度旋回しながら霊剣をグラブ目がけて大振りする。虚を突かれたグラブ本人もそれには堪らず後ろへと飛びレイの攻撃を目と鼻の先スレスレでかわした。
「流石カルナック・コンチェルトの弟子ってだけはあるな、一般人の俺とはソレが違う」
「貶してるのか褒めてるのか良く分からないね、アンタだって僕からすれば到底一般人とは思えないんだけど」
「剣聖にそう言われると嬉しいねぇ、それじゃぁ少しだけ本気出していこうか。テメェもまだまだそんなもんじゃねぇだろ!」
グラブが小さくステップを踏んだとと思ったその瞬間、彼が突如としてレイの目の前に移動した。
「――っ!」
咄嗟の事にレイは上体をのけ反らした。一秒前迄体があった場所にグラブの剣が横一杯にスイングして行った。焦ったレイはそのまま後ろへと飛び上がると片膝をついて顔を上げた。
見えなかった、氷雪剣聖結界を発動しているにも関わらずグラブの移動速度に目が追い付いて行かなかった。一体彼が何をしたのかも理解できていない。同時に意味を知った。少しだけ本気を出そうがどんな事なのかを。
剣聖結界を施せば生身では到底到達できない領域へと身体を強化することが出来る。だが目の前に居るグラブは生身だった。レイが困惑するのも無理はない。だが現実はどうだろうか、それがレイの頭の中で軽い混乱を招いた。
「見えてねぇなその様子だと」
「生身でそんな攻撃できるはずが――アンタ一体何者なんだ」
レイの顔から噴き出す汗の量が焦りを物語っている。今まで対峙してきた帝国兵の中でも最強の分類に入るグラブの得体の知れない技に恐怖を抱いていた。強いて言うのであれば、半年前戦ったレイブン・イフリートに匹敵する。
「全て目で見ようとするから分からねぇんだよ小僧が」
そう言い残してまたレイの視界から消えた。再び気配を感じたのは背中からだった。
右手に持つ剣を大きく振りかぶった状態でレイの後ろに現れたグラブはそのまま彼に向かって剣を振り下ろす。ギリギリの所で体を動かしてグラブの攻撃をかわしもう一度横へ飛ぶ。
見えない、相手の動きもそうだが一瞬気配が消えるのだ。
「強い――」
「どういたしまして剣聖」
何が何だか分からないでいた。動きが見えないのは何故なのか、一瞬気配が消えて瞬間的に現れるのは何故なのか。ひたすら自問自答を繰り返しながらギリギリの所で攻撃を避けるのが精一杯だった。
「でも退屈だぜ剣聖、もっとしっかりして貰わないと折角の戦いが興ざめだ」
「そうですね、僕もそう思います。貴方ほどの武人に全力を出さずにこの後の事を考えて余力を残すなんて馬鹿だと自分でも思います。だから――」
ゆっくりと立ち上がり呼吸を整えるレイ、同時に周囲のエーテルをゆっくりと取り込み大きく息を吸い込んだ。冷風がより一層きつくなりレイの周囲の気温を下げ始める。両目を閉じ霊剣を正面に構えて深く体内エーテルを練り始めた。
「多重剣聖結界」
冷風がレイの周囲から一瞬にして大量に放出した。同時に彼の体に風がゆっくりと集まってくる。
「やっぱりテメェもバケモンだな」
グラブはこの時初めてレイに恐怖を覚えた、今まで隠してきた術や技が一つや二つはあるだろうと確信していたが――これはグラブにとって誤算だっただろう。見る見るうちに対峙する少年のエーテル反応が増幅していくのをその目で見た。カルナックの弟子、剣聖、そしてもう一つ。本来のレイ・フォワードとしての一面。
「何かあっても後は頼むね、アデル」
増幅したエーテルはレイの体を覆い包むと外部へと一気に放出された。
グラブは畏怖した、目の前の少年に対し出来る限りの畏怖をした。まるで怪物の如くその迫力。鬼気迫るとはまさにこの事だと悟る。これ程のエーテルを一度に放出すれば己の体がどうなるかを理解しているのかと、捨て身にも程がある。仮にグラブを倒せた所でその先は? それらを一切無視して今全力でグラブを刈る事だけを考えた行動。
「暴風剣聖結界」
氷雪剣聖結界の上から暴風剣聖結界を重ね掛けした多重剣聖結界、体にかかる負荷は想像をはるかに超える。まして十四歳の子供が会得しているのが不思議な位な代物。もって数分が限界だろうその蛮行にグラブは笑顔を作った。
「――良いねぇ、良いねぇ良いねぇ良いねぇ! そう来なくっちゃな! そうでなくちゃ面白くねぇ!」
両腕を広げて盛大に笑い、そして自身もまた全力を持って目の前の怪物を倒さなくてはとスイッチを切り替えた。
「それでこそ剣聖! それでこそカルナックの弟子! それでこそ――っ!」
今まで右手一本で構えていた細身の直剣を両手で構え、また自身もエーテルを練り始める。その姿に今度はレイが意表を突かれた。その危険性を考えてはいなかったのだ。いや、正確には考えていなかったのではない。考えたくなかっただけなのかもしれない。
目の前の男はカルナックの弟子ではない、カルナックとはかかわりのない人間。そう、それが彼等の慢心であり油断だった。
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