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第三章 記憶の彼方
第三十七話 初めての敗戦 Ⅰ
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「完全なる偽善者――俺の兄貴「マイク・ガンガゾン」だ」
「ちょっと待てよ、お前の兄貴の二つ名は「殺戮永久機関」だろ。何だよ完全なる偽善者って」
「完全なる偽善者は俺達裏の社会で使われてたもう一つの二つ名。レイやアデルにだってあるだろ? 「重剣のフォワード」と「剣聖」のレイ、「黒衣の焔」「剣帝序列筆頭」のアデルみたいなもんだよ。ただし表では一般的な名前じゃないけどな。その素質を知ってる人間だけで使われてる名前みたいなもんだ」
タバコを思いっきり吸い込んで肺に煙を入れると二酸化炭素と一緒に口から吐き出すギズー、左手でタバコを取って燃える先端をガズルへと突き付ける。
「良いか、身内の言葉だと思ってよく聞いてくれ。完全なる偽善者ってのは親父が付けた二つ名でもありきちんと意味がある。今後帝国と全面戦争になるって考えると確実に俺達は兄貴とぶつかる。その時レイやアデルの二人は絶対に兄貴とやり合わないでくれ」
「理由は?」
淡々と説明するところにアデルが口を挟む。
「兄貴は対峙した相手の能力をそのままコピーしちまうんだ、攻撃スタイルから法術に至るまで全てを完全にコピーできちまう。流石に剣聖結界までコピーはできねぇと思うが万が一されたら……到底勝ち目なんてないと思ってくれ」
「剣聖結界までコピーしかねない? ははは、馬鹿も休み休み言えよギズー。あれはそんな一朝一夕で習得できるほど甘い術じゃない。それこそ大量のエーテルを消費する術だしそう易々と」
アデルが笑いながら否定しようとしたところで言葉に詰まった。違和感を感じた、そうとしか言いようがない程かみ合わない事が先ほど起きたのを思い出し、一気に表情が変わる。
「何だよアデル、そんな悲壮感漂う顔をして」
「ギズー、一つ聞かせてくれ。お前最後に兄貴にあったのは何時だ?」
「一年前の東大陸」
「その時誰と一緒だった」
「さっきから何を言ってやがる、フィリップと一緒に捕まって――」
ギズーもそこで何かに気付く、アデルはその一言で確信を得たような表情でレイの顔を見る。
「お前らさっきから何を話してるんだ?」
「いや、ずっと違和感を感じてたんだ。ギズーやお前じゃ感知できなかったかもしれないから無理はないが……レイ、お前も感じてたはずだ」
「言いたい事は分かるけど、可能なのかな? 適性があってなければ僕みたいに体に想像を絶する負担をかける事になるし。何よりフィフスエレメントなんて先生以外聞いた事が無いよ」
ガズルが首を傾げてギズーとアデルの会話に口を挟んだところでアデルもまた感じていた違和感を口にする。それは同時にレイも感じ取っていたが自身の体験談からも考えて不可能だと頭の中で否定していた。
「なぁギズー、お前の兄貴って法術は何が使えた? どの属性が得意なんだ」
「それは俺も知らねぇんだ、兄貴が法術を使う所なんて見た事がねぇし。大体俺の一族は代々エーテルがほぼねぇんだ。だから剣聖結界以前の問題で法術をどうやってコピーしてるのかもわからねぇ」
「それでも――今までコピーしてたんだな」
その一言でアデルの中にあった違和感と疑問は吹き飛んだ。同時にレイもまた考えうる最悪の事態を想定し、それを口にする。
「可能性は低いけど、最悪フィフスエレメント全てと会話が出来ると考えても不思議じゃない。雷帝フィリップと既に接触していたとなればこの状況は説明が付く。この残り香にも近いエレメントとギズーが撃たれた後に僅かに感じた雷光の気配。多分マイクは雷光剣聖結界が使える」
ガズルの表情が見る見るうちに冷めていく、永久殺戮機関と呼ばれたマイクの実力は噂で耳にしている。それがレイやアデル同様に剣聖結界を使用する可能性があると考えると絶望しかわかなかった。
「いや待て、可能性で終わらせると痛い目をあうかも知れない。不安要素は全て今潰しておこう。帝国にはまだ剣老院と互角に戦えるアルファセウス最後の一人が居るんだよな。そいつが対話できるのは何だ、アルファセウスの一人なら剣聖結界は確実に使えると考えていい。仮に手合わせ何てしていたら確実にコピーしてる可能性だって否定できない」
「僕も最後の一人は知らないんだ、先生も何も話してくれなかったし絶対に会ってはいけないって言われ続けてきたから。アデルは?」
ガズルが指を加えながら必死に考える、最恐と呼ばれる最後の一人が一体何と対話できるのか。現状雷光剣聖結界が使えるとして攻撃速度は尋常ではない、そして移動速度も。そこに何が加わるとどの程度の戦闘力になるのかを必死で考えていた。
「俺も知らねぇんだ、だけどおやっさんと互角かそれ以上となると確実に多重剣聖結界と考えるべきだろう。それが何かが分からねぇ……ギズーは何か聞いたことないか?」
「俺が知る訳ねぇだろ、お前ら二人が知らねぇのに俺が知ってるはずがねぇ」
よくガズルが言っていた言葉がある。可能性を否定して痛い目を見るぐらいなら全てを考慮した前提で作戦を立てろと。現状考えうるすべての状況をガズルが考えているがレイ達の戦力を考えた際に彼等の戦力以上の人間。それも一人で対軍と戦闘できるであろう人物が相手に居る可能性。それとどうやってぶつかるのか。考えても考えても思考がまとまらない。
「こりゃぁ大変な事になったもんだぜ、あのグラブって野郎の笑顔がずっと引っかかってたけどこんな切り札隠していたなんてな。流石に誤算だ」
懐から二本目の煙草を取り出して火をつけて空を仰ぐガズル、彼等の頭脳がお手上げと出した答えにレイ、アデル、ギズーが落胆する。
現状としては情報が不足しているこちら側が圧倒的不利な状況であり、また向こうはこちらのデータを揃えている。これがどれほど危険かは彼ら自身が良く分かっていた。
そもそも剣聖結界の存在を知って一年足らず、まだその性質や全ての効果を知っている訳ではない彼等にとって何と何が組み合わさるとどれほどの戦闘力になるのかが分からない。故に恐怖。
「暫く雑魚ばっかりの相手だったしな、向こうに剣聖結界使いが居るかもしれないと考えるとまた厄介なことになるな。その辺どうだレイ」
「どうって……ガズルも分かってると思うけど精神寒波が一番の問題だと思うよ。前回はガズルとギズーの二人だけをカバーできればそれで良かったけど、今回はファリックの分もと考えたら僕の許容をオーバーしちゃうかもしれない。もしも対峙するのなら二手に分かれた方が確実に生還率はあがるかな。そもそもマイクと戦う時はこちら側の剣聖結界は使えない物と考えないといけないからそれだけでも不利だよ」
淡々と語るレイもまた悲壮感を感じていた。
剣聖結界使いに剣聖結界を使わずにどうやって戦えばいいのだろうかとそればかりを考えている。先の戦いでは互いに剣聖結界を使い精神寒波を緩和しながらの死闘だった。それも二対四。実力差もあったがそれでもギリギリの勝負だった。
今回は違う、こちらの技や術を盗まれてしまう可能性がある以上下手に戦うことが出来ない。もしも、万が一彼等の術と技が盗まれたら実力差も垣間見て確実に負けるだろう。そして何より問題なのが一つ。
「アデル、間違っても兄貴と対峙した時は絶対に刀は使うな」
「なんでだ?」
「炎帝剣聖結界限定の六幻は使えないだろうが、それまでの連続抜刀は脅威だ。確実にコピーしてくるぞ、それに兄貴が剣老院の技をコピーしたらそれこそ手に負えなくなる」
「――それもそうだな、グルブエレスとツインシグナルを使うのも何か久しぶりな気がするな」
常に腰に吊るしている二本を取り出して刃を改める。常に整備していたおかげでいつでも使える状態にはなっている曲刀と直剣に目を凝らすアデル、それを隣で見たミラが口を開いた。
「何で普段からそれ使わないの?」
「元々こっちが本命だったんだが剣聖結界はインストーラーデバイスじゃ無いと俺はまだ使えないんだ。だからこっちで戦う事は少なくなってただけで技の種類や戦い方はこっちの方が俺には向いてるんだよ」
レイを含めて全員が久しく見ていなかった二刀流のアデルが見れると思うと少し活気が沸く。ヤミガラスを使うアデルはどちらかと言うと慎重に相手の動きを分析し一撃必殺を決めるカルナック流抜刀術使いの奥義伝承者だが、元を正せば荒れ狂う二刀流の法術剣士だ。派手好きな彼からすればこちらの方が性に合っている。
しかし欠点も勿論ある。
アデルの精神力ではインストーラーデバイス抜きで剣聖結界は使えない。それでも並の法術使いと比べれば卓越したエーテル操作を可能とするが、まだ力の加減が出来ずにいる。
例えるのなら術師が使う初歩的な術、同じ術をアデルが使うと五倍にも十倍にもエーテルを消費してしまう。そして消費したエーテルの回復力は人並みであるからこそインストーラーデバイスでその力加減を調整しなくてはいけない。だが。
「でもよ、お前も炎帝剣聖結界をそれなりに使えるようになってんだ。デバイス抜きでもある程度は使えるんじゃないのか?」
「無茶言うな、剣聖結界時の消費エーテルは尋常じゃねぇんだぞ。いくら俺のエーテル貯蓄量が人のソレを外れてると言ってもとんでもねぇ量消費するんだ。デバイス抜きでやったら一瞬でタンクが空になっちまうよ。そうなったら最後だ、エーテルに食われて化け物になっても良いのか?」
ガズルが笑いながらデバイス抜きでの剣聖結界を提案するが、それを普段見せる事の無い真顔でアデルは返答した。確かに一歩間違えれば死に至る術であるが現状のアデルであればある程度は何とかなるのではないかとガズルは思って居た。それはレイも同じだった。
「いや、ガズルの言う通りだよアデル。現状であればデバイス抜きでも使えるかもしれないよ?」
「お前まで何言ってんだよ全く、そこまで言うなら試してやろうか? どうなっても知らねぇぞ」
「ちょっと待てよ、お前の兄貴の二つ名は「殺戮永久機関」だろ。何だよ完全なる偽善者って」
「完全なる偽善者は俺達裏の社会で使われてたもう一つの二つ名。レイやアデルにだってあるだろ? 「重剣のフォワード」と「剣聖」のレイ、「黒衣の焔」「剣帝序列筆頭」のアデルみたいなもんだよ。ただし表では一般的な名前じゃないけどな。その素質を知ってる人間だけで使われてる名前みたいなもんだ」
タバコを思いっきり吸い込んで肺に煙を入れると二酸化炭素と一緒に口から吐き出すギズー、左手でタバコを取って燃える先端をガズルへと突き付ける。
「良いか、身内の言葉だと思ってよく聞いてくれ。完全なる偽善者ってのは親父が付けた二つ名でもありきちんと意味がある。今後帝国と全面戦争になるって考えると確実に俺達は兄貴とぶつかる。その時レイやアデルの二人は絶対に兄貴とやり合わないでくれ」
「理由は?」
淡々と説明するところにアデルが口を挟む。
「兄貴は対峙した相手の能力をそのままコピーしちまうんだ、攻撃スタイルから法術に至るまで全てを完全にコピーできちまう。流石に剣聖結界までコピーはできねぇと思うが万が一されたら……到底勝ち目なんてないと思ってくれ」
「剣聖結界までコピーしかねない? ははは、馬鹿も休み休み言えよギズー。あれはそんな一朝一夕で習得できるほど甘い術じゃない。それこそ大量のエーテルを消費する術だしそう易々と」
アデルが笑いながら否定しようとしたところで言葉に詰まった。違和感を感じた、そうとしか言いようがない程かみ合わない事が先ほど起きたのを思い出し、一気に表情が変わる。
「何だよアデル、そんな悲壮感漂う顔をして」
「ギズー、一つ聞かせてくれ。お前最後に兄貴にあったのは何時だ?」
「一年前の東大陸」
「その時誰と一緒だった」
「さっきから何を言ってやがる、フィリップと一緒に捕まって――」
ギズーもそこで何かに気付く、アデルはその一言で確信を得たような表情でレイの顔を見る。
「お前らさっきから何を話してるんだ?」
「いや、ずっと違和感を感じてたんだ。ギズーやお前じゃ感知できなかったかもしれないから無理はないが……レイ、お前も感じてたはずだ」
「言いたい事は分かるけど、可能なのかな? 適性があってなければ僕みたいに体に想像を絶する負担をかける事になるし。何よりフィフスエレメントなんて先生以外聞いた事が無いよ」
ガズルが首を傾げてギズーとアデルの会話に口を挟んだところでアデルもまた感じていた違和感を口にする。それは同時にレイも感じ取っていたが自身の体験談からも考えて不可能だと頭の中で否定していた。
「なぁギズー、お前の兄貴って法術は何が使えた? どの属性が得意なんだ」
「それは俺も知らねぇんだ、兄貴が法術を使う所なんて見た事がねぇし。大体俺の一族は代々エーテルがほぼねぇんだ。だから剣聖結界以前の問題で法術をどうやってコピーしてるのかもわからねぇ」
「それでも――今までコピーしてたんだな」
その一言でアデルの中にあった違和感と疑問は吹き飛んだ。同時にレイもまた考えうる最悪の事態を想定し、それを口にする。
「可能性は低いけど、最悪フィフスエレメント全てと会話が出来ると考えても不思議じゃない。雷帝フィリップと既に接触していたとなればこの状況は説明が付く。この残り香にも近いエレメントとギズーが撃たれた後に僅かに感じた雷光の気配。多分マイクは雷光剣聖結界が使える」
ガズルの表情が見る見るうちに冷めていく、永久殺戮機関と呼ばれたマイクの実力は噂で耳にしている。それがレイやアデル同様に剣聖結界を使用する可能性があると考えると絶望しかわかなかった。
「いや待て、可能性で終わらせると痛い目をあうかも知れない。不安要素は全て今潰しておこう。帝国にはまだ剣老院と互角に戦えるアルファセウス最後の一人が居るんだよな。そいつが対話できるのは何だ、アルファセウスの一人なら剣聖結界は確実に使えると考えていい。仮に手合わせ何てしていたら確実にコピーしてる可能性だって否定できない」
「僕も最後の一人は知らないんだ、先生も何も話してくれなかったし絶対に会ってはいけないって言われ続けてきたから。アデルは?」
ガズルが指を加えながら必死に考える、最恐と呼ばれる最後の一人が一体何と対話できるのか。現状雷光剣聖結界が使えるとして攻撃速度は尋常ではない、そして移動速度も。そこに何が加わるとどの程度の戦闘力になるのかを必死で考えていた。
「俺も知らねぇんだ、だけどおやっさんと互角かそれ以上となると確実に多重剣聖結界と考えるべきだろう。それが何かが分からねぇ……ギズーは何か聞いたことないか?」
「俺が知る訳ねぇだろ、お前ら二人が知らねぇのに俺が知ってるはずがねぇ」
よくガズルが言っていた言葉がある。可能性を否定して痛い目を見るぐらいなら全てを考慮した前提で作戦を立てろと。現状考えうるすべての状況をガズルが考えているがレイ達の戦力を考えた際に彼等の戦力以上の人間。それも一人で対軍と戦闘できるであろう人物が相手に居る可能性。それとどうやってぶつかるのか。考えても考えても思考がまとまらない。
「こりゃぁ大変な事になったもんだぜ、あのグラブって野郎の笑顔がずっと引っかかってたけどこんな切り札隠していたなんてな。流石に誤算だ」
懐から二本目の煙草を取り出して火をつけて空を仰ぐガズル、彼等の頭脳がお手上げと出した答えにレイ、アデル、ギズーが落胆する。
現状としては情報が不足しているこちら側が圧倒的不利な状況であり、また向こうはこちらのデータを揃えている。これがどれほど危険かは彼ら自身が良く分かっていた。
そもそも剣聖結界の存在を知って一年足らず、まだその性質や全ての効果を知っている訳ではない彼等にとって何と何が組み合わさるとどれほどの戦闘力になるのかが分からない。故に恐怖。
「暫く雑魚ばっかりの相手だったしな、向こうに剣聖結界使いが居るかもしれないと考えるとまた厄介なことになるな。その辺どうだレイ」
「どうって……ガズルも分かってると思うけど精神寒波が一番の問題だと思うよ。前回はガズルとギズーの二人だけをカバーできればそれで良かったけど、今回はファリックの分もと考えたら僕の許容をオーバーしちゃうかもしれない。もしも対峙するのなら二手に分かれた方が確実に生還率はあがるかな。そもそもマイクと戦う時はこちら側の剣聖結界は使えない物と考えないといけないからそれだけでも不利だよ」
淡々と語るレイもまた悲壮感を感じていた。
剣聖結界使いに剣聖結界を使わずにどうやって戦えばいいのだろうかとそればかりを考えている。先の戦いでは互いに剣聖結界を使い精神寒波を緩和しながらの死闘だった。それも二対四。実力差もあったがそれでもギリギリの勝負だった。
今回は違う、こちらの技や術を盗まれてしまう可能性がある以上下手に戦うことが出来ない。もしも、万が一彼等の術と技が盗まれたら実力差も垣間見て確実に負けるだろう。そして何より問題なのが一つ。
「アデル、間違っても兄貴と対峙した時は絶対に刀は使うな」
「なんでだ?」
「炎帝剣聖結界限定の六幻は使えないだろうが、それまでの連続抜刀は脅威だ。確実にコピーしてくるぞ、それに兄貴が剣老院の技をコピーしたらそれこそ手に負えなくなる」
「――それもそうだな、グルブエレスとツインシグナルを使うのも何か久しぶりな気がするな」
常に腰に吊るしている二本を取り出して刃を改める。常に整備していたおかげでいつでも使える状態にはなっている曲刀と直剣に目を凝らすアデル、それを隣で見たミラが口を開いた。
「何で普段からそれ使わないの?」
「元々こっちが本命だったんだが剣聖結界はインストーラーデバイスじゃ無いと俺はまだ使えないんだ。だからこっちで戦う事は少なくなってただけで技の種類や戦い方はこっちの方が俺には向いてるんだよ」
レイを含めて全員が久しく見ていなかった二刀流のアデルが見れると思うと少し活気が沸く。ヤミガラスを使うアデルはどちらかと言うと慎重に相手の動きを分析し一撃必殺を決めるカルナック流抜刀術使いの奥義伝承者だが、元を正せば荒れ狂う二刀流の法術剣士だ。派手好きな彼からすればこちらの方が性に合っている。
しかし欠点も勿論ある。
アデルの精神力ではインストーラーデバイス抜きで剣聖結界は使えない。それでも並の法術使いと比べれば卓越したエーテル操作を可能とするが、まだ力の加減が出来ずにいる。
例えるのなら術師が使う初歩的な術、同じ術をアデルが使うと五倍にも十倍にもエーテルを消費してしまう。そして消費したエーテルの回復力は人並みであるからこそインストーラーデバイスでその力加減を調整しなくてはいけない。だが。
「でもよ、お前も炎帝剣聖結界をそれなりに使えるようになってんだ。デバイス抜きでもある程度は使えるんじゃないのか?」
「無茶言うな、剣聖結界時の消費エーテルは尋常じゃねぇんだぞ。いくら俺のエーテル貯蓄量が人のソレを外れてると言ってもとんでもねぇ量消費するんだ。デバイス抜きでやったら一瞬でタンクが空になっちまうよ。そうなったら最後だ、エーテルに食われて化け物になっても良いのか?」
ガズルが笑いながらデバイス抜きでの剣聖結界を提案するが、それを普段見せる事の無い真顔でアデルは返答した。確かに一歩間違えれば死に至る術であるが現状のアデルであればある程度は何とかなるのではないかとガズルは思って居た。それはレイも同じだった。
「いや、ガズルの言う通りだよアデル。現状であればデバイス抜きでも使えるかもしれないよ?」
「お前まで何言ってんだよ全く、そこまで言うなら試してやろうか? どうなっても知らねぇぞ」
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