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第三章 記憶の彼方
第三十話 消えた巨人と消失の謎 Ⅱ
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「確かに車輪の跡だと思う、レイの言う通り並の台車じゃねぇな……おそらく鉄で出来た恐ろしく頑丈な台車、それもそれだけでかなりの重量を伴うんじゃないか?」
三十分後、たたき起こされたガズルが現場に到着して状況を分析する。
「だが合点がいかねぇな、仮に頑丈な台車を用意した所で向かってる先は森の中だ。その先は山になってる、斜面を人力であんな重たそうなもん引っ張ったり押したりして運ぶんじゃこの足跡で推測する人数じゃいくらなんでも無理だ。少なく見積もっても五十人、いやそれ以上は必要じゃないか?」
眼前に広がる森をガズルが見て、さらに奥の山にも視線を移した。彼の言う通り並の質量ではないあれほど巨大な物体を運ぶにしたって人力でどうにかなるとは思えなかった。だが実際に巨人は忽然と姿を消し、残されたのは車輪の跡と思われる線に無数の足跡、さらにガズルが続ける。
「おい貧乳、あのデカブツについて何か思い出せることは無いのか?」
「だからその貧乳って呼ぶの止めなさいよ! 昨日ミラが関節部分を狙って攻撃したでしょ? あそこが一番もろくて攻撃が届くの、知識さえあれば解体も出来るでしょうけどあんたが言う所の未来だっけ? そんなところから来た物を解体出来る技術が今の時代にあるとは思えないんだけど!?」
「だから聞いてるんじゃねぇか。あーあ、何で俺の周りにいるのはこんなにガサツな女しかいねぇんだ。メルちゃんが生きてたら爪の垢でも煎じて飲ませてやりて――」
おそらく悪気は無かったのだろう、一瞬しまったと口を両手で塞いで後ろに居るレイに恐る恐る振り返る。一瞬だけ寂しそうな表情を見せたレイだったが暫くするとその表情はいつもの優しい彼らのリーダーに戻る。
「悪いレイ、悪気があったわけじゃねぇんだ」
「気にしてないよ、続けてくれガズル」
本当に咄嗟に出てしまった言葉だったのだろうとレイも咎めることも無く今の状況について詳しい分析を引き続き頼む。ほんの少しの間だけ周りの空気が張り詰めた気がした。
「あ、あぁ……。要するにあのデカブツを運ぶにしたってあのままじゃ駄目だ、いくつかのパーツに分解することが出来れば少人数でも運ぶことはできるだろうけど。それでも人数が少なすぎる、西の蒸気機関って奴ならきっと何とかなるんだろうけど俺も実物は見た事ねぇしな」
蒸気機関、ボイラで発生した蒸気のもつ熱エネルギーを機械的仕事に変換する熱機関の一部であり、ボイラ等と組み合わせて一つの熱機関となる。そんな技術が西の大陸で発明されているとの噂は兼ねがね、ガズル自身も大学で設計図や模型で見た事のある程度でありどれほどの力を出せるのかは未知であった。
「何にしろ、コレを運んだ奴が一体誰で何の目的で持って行ったのかが謎だな。西側が蒸気機関とやらで持って行ったってのが一番有力だろうよ。……いや待て?」
ガズルの眼鏡が一度光った、もう一度しゃがみ込むと足跡と車輪の跡らしきものをじっくりと観察する。そして森へと伸びているその線とその先に続く山を見る。ブツブツと小さな声で呟いているガズルの後ろからはやっと起きてきたアデルとギズーが姿を現した。
「ほう、本当にきれいさっぱり消えちまってるんだな」
「馬鹿野郎、呑気な事いってんじゃねぇよアデル。あれだけの質量をどうやって運ぶってんだ」
二人がそんなことを互いに言い合いながらレイ達の元へと歩いてきた。丁度その時ガズルが勢いよく立ち上がって腰のポーチに手を入れた。
「なるほど、こんな事考えもしなかったぜ」
「何か分かったのか?」
ガズルは自分でも考え付かなかった事を今から喋るのだと思うと笑いが止まらない。それは彼等ましてや世界全土でも珍しい事例になるだろう。ポーチから取り出したのは幻聖石である。
「幻聖石?」
「そうだ、全く持って考え付かなかった事だがこいつに格納したんだ。確かに幻聖石に格納しちまえば重さもなんもねぇ、一瞬で出し入れが可能だ。だがそれには制約がいくつもあるのはみんなも知ってる通り、幻聖石に格納したものは格納した本人しか取り出しが出来ねぇ。そして一度融合したものは他の幻聖石との融合は不可能。そもそも幻聖石事態がそれなりの価格で取引されてるから食料だ建築材料だのってのを格納するには割に合わねぇ。一つの物体につき一つだからな。だからこそ武器なんかを格納するしか大体は使われてなかったんだ。それを利用して持ち運べば――」
辺りが騒然とした、普段から使い慣れてる幻聖石をそのような事に使うとは思いも寄らなかったからだ。だからこそそれを逆手に利用されたと考えればこの無数に散らばる足跡や森の中へ抜けていく車輪の跡についても説明が付く。幻聖石から目を遠ざける為の偽装工作であると。
「閃いちまえば訳ない事だ、それこして一瞬にして格納できるんだからな。音を立てることも無く本当に一瞬で運び出せるんだからな。目から鱗とまさにこの事だろうよ!」
「そうなると、一体誰がアレを運んだんだろう?」
「それこそ分からねぇ、今言ったろう? 閃いちまえば誰でも運べるんだって。帝国の可能性もあるし西側の可能性もある、考えたくはねぇが東のケルヴィン領主って可能性だって捨てきれねぇ。言っちまえばメリアタウンの住人全員だって可能性はある。これは揉めるだろうな」
率直なレイの質問に対してガズルが少しだけ声を荒げて答える。それを聞いたレナードもまた強張った表情をしていた。それもそうだろう、一体誰が何の目的でアレを回収し運び出したのか。ましてやこの戦時中の事だ、これがもしも帝国による仕業だとすれば貴重な資源を簡単に手に入れたとも考えられる。それも現時点では未知の存在であるアレはどこの国にとっても喉から手が出る程の材料だろう。
「有難うガズル君、私は今から本部へと戻り招集をかけることにしよう。各地に検問を張り荷物を全て調べるぐらいはしないといけないな。」
「その必要はねぇさ、さっきも言ったろう? 持ち出すのなんてほんの一瞬だ、何時から無いのかが分からない以上昨夜に消失していたとして十時間以上経過してるんだ。これから検問の準備をして配置につかせたところでとっくにその外側だ。やるのならメリアタウンの全住人位だろうよ」
「ぬぅ……」
ガズルの言うとおりである、もしも実施するのであればメリアタウン内部に居る全住人にするだけで充分であった。それ以外は既にこちらの知る場所よりきっと外側であろうとガズルが推察した。それもまた間違ってはいない。
「深く考えても仕方ねぇさ、持って行かれちまったモンはどうしようも無い。あんなもん持ち出した所でどうすることも出来ねぇさ」
ずっと後ろで話を聞いていたアデルが突然口を開く、その言葉に全員がアデルの顔を見た。何事かとアデルは驚いた表情で向けられた顔を睨む。
「だってそうだろう? ガズルが見た事も聞いたこともねぇって代物を現段階でどうにか出来るって俺は思えないし、それに仮に帝国がアレを持ち出して何かしようにも何も出来ねぇんだろ?」
「……お前は珍しく良い事を言うな。あぁその通りだ、あんなもん見た事も聞いたこともねぇし動力が何で動いてるのかも検討が付かねぇ。今じゃただの鉄くずと同じさ。大体が霊剣でも切れねぇ金属をどうやって加工するって話にもなるしな。考えるだけ無駄だ無駄」
多分一番驚いていたのはガズルなのだろう、この危機感をどう表現すればいいのだろうと多少なり焦っていたガズルの不安感を一瞬にして拭ったのはアデルの言葉である。確かに現状加工することも出来ないアレを持ち出したとしてもただの鉄くず同然、霊剣でも歯が立たなかったあの金属を現在の文明力でどうにかしようとしてもきっと無理なのだろうとガズルは今一度考えを改めた。
「分かった、では念のためメリアタウン内部の調査だけはしておこう。君達はこれからどうするんだ?」
レナードが彼らの話をある程度納得したうえでそう言う、レイは一瞬だけ考えてから再び口を動かした。
「現状アレをどうにもできないと分かったので僕達は一度カルナック先生の元へと戻ろうと思います、帝国側も何か仕掛けてくる様子もありませんし現状でしたら僕達抜きでもきっと何とか出来ると思います。念のためギズーの法術弾と同じものを作ってからお渡しします。それでどうにか切り抜けてください。何かありましたら例の周波数で応答します」
「そうか、では剣老院に一つ頼みたい。君達が出発するときに改めて文章にして渡そう」
そう言うとレナードは無線機を使って各地に散らばった傭兵部隊及び民間へを一度本部正面の広場に集まるように指示を出してその場を去った。残されたレイ達も各々街の中へと戻り始める、朝食は何にしようかとか持ち物の話などそれぞれが互いに好き勝手に喋っている中レイは一度だけ立ち止まって振り返る。
「気のせい……だよね」
レイが見ているのは森だった、先ほどからずっと森の先を気にしている様子だ。だがそこにはいつもの森があるだけで特に変わった様子はない。強いて言うのであれば巨人が倒れた時になぎ倒された木々、それが普段の景色と違っている位である。そこに何かを感じ取っているのかレイは森の一点だけを凝視している。
「おーい、何やってんだレイ」
「……いや何でもない。あ、所で昨夜貸したお金で何買ったんだよ、おいアデルったら!」
先を歩いているアデルに呼ばれてレイももう一度街へと向けて走り出した。騒がしいとある日のメリアタウンの朝がこうして過ぎていこうとしていた。まるで何も起こらなかったように。
三十分後、たたき起こされたガズルが現場に到着して状況を分析する。
「だが合点がいかねぇな、仮に頑丈な台車を用意した所で向かってる先は森の中だ。その先は山になってる、斜面を人力であんな重たそうなもん引っ張ったり押したりして運ぶんじゃこの足跡で推測する人数じゃいくらなんでも無理だ。少なく見積もっても五十人、いやそれ以上は必要じゃないか?」
眼前に広がる森をガズルが見て、さらに奥の山にも視線を移した。彼の言う通り並の質量ではないあれほど巨大な物体を運ぶにしたって人力でどうにかなるとは思えなかった。だが実際に巨人は忽然と姿を消し、残されたのは車輪の跡と思われる線に無数の足跡、さらにガズルが続ける。
「おい貧乳、あのデカブツについて何か思い出せることは無いのか?」
「だからその貧乳って呼ぶの止めなさいよ! 昨日ミラが関節部分を狙って攻撃したでしょ? あそこが一番もろくて攻撃が届くの、知識さえあれば解体も出来るでしょうけどあんたが言う所の未来だっけ? そんなところから来た物を解体出来る技術が今の時代にあるとは思えないんだけど!?」
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「気にしてないよ、続けてくれガズル」
本当に咄嗟に出てしまった言葉だったのだろうとレイも咎めることも無く今の状況について詳しい分析を引き続き頼む。ほんの少しの間だけ周りの空気が張り詰めた気がした。
「あ、あぁ……。要するにあのデカブツを運ぶにしたってあのままじゃ駄目だ、いくつかのパーツに分解することが出来れば少人数でも運ぶことはできるだろうけど。それでも人数が少なすぎる、西の蒸気機関って奴ならきっと何とかなるんだろうけど俺も実物は見た事ねぇしな」
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「何にしろ、コレを運んだ奴が一体誰で何の目的で持って行ったのかが謎だな。西側が蒸気機関とやらで持って行ったってのが一番有力だろうよ。……いや待て?」
ガズルの眼鏡が一度光った、もう一度しゃがみ込むと足跡と車輪の跡らしきものをじっくりと観察する。そして森へと伸びているその線とその先に続く山を見る。ブツブツと小さな声で呟いているガズルの後ろからはやっと起きてきたアデルとギズーが姿を現した。
「ほう、本当にきれいさっぱり消えちまってるんだな」
「馬鹿野郎、呑気な事いってんじゃねぇよアデル。あれだけの質量をどうやって運ぶってんだ」
二人がそんなことを互いに言い合いながらレイ達の元へと歩いてきた。丁度その時ガズルが勢いよく立ち上がって腰のポーチに手を入れた。
「なるほど、こんな事考えもしなかったぜ」
「何か分かったのか?」
ガズルは自分でも考え付かなかった事を今から喋るのだと思うと笑いが止まらない。それは彼等ましてや世界全土でも珍しい事例になるだろう。ポーチから取り出したのは幻聖石である。
「幻聖石?」
「そうだ、全く持って考え付かなかった事だがこいつに格納したんだ。確かに幻聖石に格納しちまえば重さもなんもねぇ、一瞬で出し入れが可能だ。だがそれには制約がいくつもあるのはみんなも知ってる通り、幻聖石に格納したものは格納した本人しか取り出しが出来ねぇ。そして一度融合したものは他の幻聖石との融合は不可能。そもそも幻聖石事態がそれなりの価格で取引されてるから食料だ建築材料だのってのを格納するには割に合わねぇ。一つの物体につき一つだからな。だからこそ武器なんかを格納するしか大体は使われてなかったんだ。それを利用して持ち運べば――」
辺りが騒然とした、普段から使い慣れてる幻聖石をそのような事に使うとは思いも寄らなかったからだ。だからこそそれを逆手に利用されたと考えればこの無数に散らばる足跡や森の中へ抜けていく車輪の跡についても説明が付く。幻聖石から目を遠ざける為の偽装工作であると。
「閃いちまえば訳ない事だ、それこして一瞬にして格納できるんだからな。音を立てることも無く本当に一瞬で運び出せるんだからな。目から鱗とまさにこの事だろうよ!」
「そうなると、一体誰がアレを運んだんだろう?」
「それこそ分からねぇ、今言ったろう? 閃いちまえば誰でも運べるんだって。帝国の可能性もあるし西側の可能性もある、考えたくはねぇが東のケルヴィン領主って可能性だって捨てきれねぇ。言っちまえばメリアタウンの住人全員だって可能性はある。これは揉めるだろうな」
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「深く考えても仕方ねぇさ、持って行かれちまったモンはどうしようも無い。あんなもん持ち出した所でどうすることも出来ねぇさ」
ずっと後ろで話を聞いていたアデルが突然口を開く、その言葉に全員がアデルの顔を見た。何事かとアデルは驚いた表情で向けられた顔を睨む。
「だってそうだろう? ガズルが見た事も聞いたこともねぇって代物を現段階でどうにか出来るって俺は思えないし、それに仮に帝国がアレを持ち出して何かしようにも何も出来ねぇんだろ?」
「……お前は珍しく良い事を言うな。あぁその通りだ、あんなもん見た事も聞いたこともねぇし動力が何で動いてるのかも検討が付かねぇ。今じゃただの鉄くずと同じさ。大体が霊剣でも切れねぇ金属をどうやって加工するって話にもなるしな。考えるだけ無駄だ無駄」
多分一番驚いていたのはガズルなのだろう、この危機感をどう表現すればいいのだろうと多少なり焦っていたガズルの不安感を一瞬にして拭ったのはアデルの言葉である。確かに現状加工することも出来ないアレを持ち出したとしてもただの鉄くず同然、霊剣でも歯が立たなかったあの金属を現在の文明力でどうにかしようとしてもきっと無理なのだろうとガズルは今一度考えを改めた。
「分かった、では念のためメリアタウン内部の調査だけはしておこう。君達はこれからどうするんだ?」
レナードが彼らの話をある程度納得したうえでそう言う、レイは一瞬だけ考えてから再び口を動かした。
「現状アレをどうにもできないと分かったので僕達は一度カルナック先生の元へと戻ろうと思います、帝国側も何か仕掛けてくる様子もありませんし現状でしたら僕達抜きでもきっと何とか出来ると思います。念のためギズーの法術弾と同じものを作ってからお渡しします。それでどうにか切り抜けてください。何かありましたら例の周波数で応答します」
「そうか、では剣老院に一つ頼みたい。君達が出発するときに改めて文章にして渡そう」
そう言うとレナードは無線機を使って各地に散らばった傭兵部隊及び民間へを一度本部正面の広場に集まるように指示を出してその場を去った。残されたレイ達も各々街の中へと戻り始める、朝食は何にしようかとか持ち物の話などそれぞれが互いに好き勝手に喋っている中レイは一度だけ立ち止まって振り返る。
「気のせい……だよね」
レイが見ているのは森だった、先ほどからずっと森の先を気にしている様子だ。だがそこにはいつもの森があるだけで特に変わった様子はない。強いて言うのであれば巨人が倒れた時になぎ倒された木々、それが普段の景色と違っている位である。そこに何かを感じ取っているのかレイは森の一点だけを凝視している。
「おーい、何やってんだレイ」
「……いや何でもない。あ、所で昨夜貸したお金で何買ったんだよ、おいアデルったら!」
先を歩いているアデルに呼ばれてレイももう一度街へと向けて走り出した。騒がしいとある日のメリアタウンの朝がこうして過ぎていこうとしていた。まるで何も起こらなかったように。
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