40 / 141
第二章 神苑の瑠璃 前編
第十三話 剣聖結界 ―エーテルバースト― Ⅳ
しおりを挟む
「何よもう、五月蝿いなぁ」
寝室で寝ていたシトラはあたりの騒ぎに目を覚ました、隣には静かに寝息を立てるメルの姿がある。その寝顔をみて不機嫌だった顔に緩みが生まれた。
「本当、レイ君も罪な男の子になったわねぇ」
笑顔でメルの髪の毛を撫でる、二度、三度撫でたところで外から一発の銃声が鳴り響いた。
「何、今の」
轟音と共にシトラはベッドから飛び降りた、壁に掛けている自分の獲物を手に取りドアを開くとそこはまるで戦争でもあったかのようにボロボロになったリビングと形を残していない玄関が目に映る。
「……何が起きてるの?」
とっさに表へ出る。目の前には吹雪の中戦う四人の姿が映った。
「無力化出来るならそれだけで良いじゃないか剣聖、それ以上する必要は無い!」
睨みながらそうカルナックに銃口を向ける、だが状況は一変する。
レイの体に付けられた怒涛の攻撃痕が見る見るうちに修復を開始した、深いダメージを追ったその体はまるで何事も無かったかのような回復速度で治癒していきレイの体を動かした。右手に握る霊剣に力をこめ、刀身を後ろに静かに引いた。
「先生、危ない!」
声の正体はシトラだった。一瞬でカルナックの元へ近づき杖で霊剣を受け止めた。鉄の杖は法術を施されており鋼鉄の強度を誇る。そこに霊剣がぶつかり火花が散っている。
「まさかエーテルバースト!?」
ガチガチと音を立てて火花を散らせる。そこにガズルが跳躍し右手に重力球を作りレイへと襲い掛かる。
「目を覚ませ!」
攻撃がレイの頭へと襲い掛かる、少しの手ごたえを感じたガズルは次の瞬間奇妙な違和感を感じる。確かにあった手ごたえはすぐに消え目の前からレイが消えた。途轍もないスピードだった。瞬間的にレイは後方へと移動していた。とっさに頭を守ろうとしたのだろう。だが僅かながらでもガズルの攻撃を受けたレイは項垂れてフラフラとしている。
ガズルは地面に着地するとレイの姿を探す、一瞬の事で彼を見失っていた。前方へ視界をやると項垂れているレイを目視しもう一度飛び掛かる。
「帰ってこい!」
右腕を振りかぶって同じ攻撃をする、まっすぐに右手を伸ばしストレートを叩きこもうとするが何か目に見えない壁のようなものに阻止されてしまう。物理障壁だ。攻撃を弾かれたガズルはその反動で宙に舞う。項垂れていたレイは左手を前に出すとカルナックが見せた衝撃波をガズルに向かって放つ。それをまともに浴びたガズルは抵抗することもできずに大きく吹き飛ばされる。体制を立て直すことも許されず雪が積もる地面へと激突するが、雪がクッションとなり激突した衝撃はさほどでもなかった。だが真空の衝撃波を浴びたことで体中無数の切り傷ができた。
「障壁まで……こうなっては仕方ないですね」
カルナックはガズルを庇う様に前に立った、シトラもカルナックの右に並んで立つ。二人は一度大きく深呼吸をすると目をつぶった。するとどうだろう、二人の足元に積もった雪が一瞬で空に舞い二人の髪の毛がバタバタとなびき始める。
「シトラ君、君まで付き合うことはないのですよ?」
カルナックがそう言いながら左手を横に伸ばす。
「これ以上被害が出る前に私も協力します、先生にだけ任せたら彼本当に死んじゃいますから」
シトラも同じように右手を横に伸ばす。二人を中心に風が暴れ、降っている雪をブワっと吹き飛ばした。ゆっくりと二人は目を開き、エーテルバーストを引き起こしている対象者を見つめる。
後ろで成すすべもなく見ていることしかできないガズルとギズーは二人が一体何をしているのか全く分からなかった、途轍もない量のエーテルが二人を覆い、揺ら揺らとしたオーラのようなものが二人から出ている。そしてこの後カルナックとシトラが何をしようとしているのかを知る。
「インストール」「インストール」
二人は同時に叫んだ。
寝室で寝ていたシトラはあたりの騒ぎに目を覚ました、隣には静かに寝息を立てるメルの姿がある。その寝顔をみて不機嫌だった顔に緩みが生まれた。
「本当、レイ君も罪な男の子になったわねぇ」
笑顔でメルの髪の毛を撫でる、二度、三度撫でたところで外から一発の銃声が鳴り響いた。
「何、今の」
轟音と共にシトラはベッドから飛び降りた、壁に掛けている自分の獲物を手に取りドアを開くとそこはまるで戦争でもあったかのようにボロボロになったリビングと形を残していない玄関が目に映る。
「……何が起きてるの?」
とっさに表へ出る。目の前には吹雪の中戦う四人の姿が映った。
「無力化出来るならそれだけで良いじゃないか剣聖、それ以上する必要は無い!」
睨みながらそうカルナックに銃口を向ける、だが状況は一変する。
レイの体に付けられた怒涛の攻撃痕が見る見るうちに修復を開始した、深いダメージを追ったその体はまるで何事も無かったかのような回復速度で治癒していきレイの体を動かした。右手に握る霊剣に力をこめ、刀身を後ろに静かに引いた。
「先生、危ない!」
声の正体はシトラだった。一瞬でカルナックの元へ近づき杖で霊剣を受け止めた。鉄の杖は法術を施されており鋼鉄の強度を誇る。そこに霊剣がぶつかり火花が散っている。
「まさかエーテルバースト!?」
ガチガチと音を立てて火花を散らせる。そこにガズルが跳躍し右手に重力球を作りレイへと襲い掛かる。
「目を覚ませ!」
攻撃がレイの頭へと襲い掛かる、少しの手ごたえを感じたガズルは次の瞬間奇妙な違和感を感じる。確かにあった手ごたえはすぐに消え目の前からレイが消えた。途轍もないスピードだった。瞬間的にレイは後方へと移動していた。とっさに頭を守ろうとしたのだろう。だが僅かながらでもガズルの攻撃を受けたレイは項垂れてフラフラとしている。
ガズルは地面に着地するとレイの姿を探す、一瞬の事で彼を見失っていた。前方へ視界をやると項垂れているレイを目視しもう一度飛び掛かる。
「帰ってこい!」
右腕を振りかぶって同じ攻撃をする、まっすぐに右手を伸ばしストレートを叩きこもうとするが何か目に見えない壁のようなものに阻止されてしまう。物理障壁だ。攻撃を弾かれたガズルはその反動で宙に舞う。項垂れていたレイは左手を前に出すとカルナックが見せた衝撃波をガズルに向かって放つ。それをまともに浴びたガズルは抵抗することもできずに大きく吹き飛ばされる。体制を立て直すことも許されず雪が積もる地面へと激突するが、雪がクッションとなり激突した衝撃はさほどでもなかった。だが真空の衝撃波を浴びたことで体中無数の切り傷ができた。
「障壁まで……こうなっては仕方ないですね」
カルナックはガズルを庇う様に前に立った、シトラもカルナックの右に並んで立つ。二人は一度大きく深呼吸をすると目をつぶった。するとどうだろう、二人の足元に積もった雪が一瞬で空に舞い二人の髪の毛がバタバタとなびき始める。
「シトラ君、君まで付き合うことはないのですよ?」
カルナックがそう言いながら左手を横に伸ばす。
「これ以上被害が出る前に私も協力します、先生にだけ任せたら彼本当に死んじゃいますから」
シトラも同じように右手を横に伸ばす。二人を中心に風が暴れ、降っている雪をブワっと吹き飛ばした。ゆっくりと二人は目を開き、エーテルバーストを引き起こしている対象者を見つめる。
後ろで成すすべもなく見ていることしかできないガズルとギズーは二人が一体何をしているのか全く分からなかった、途轍もない量のエーテルが二人を覆い、揺ら揺らとしたオーラのようなものが二人から出ている。そしてこの後カルナックとシトラが何をしようとしているのかを知る。
「インストール」「インストール」
二人は同時に叫んだ。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説


アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる