『この星で、最後の愛を語る。』~The Phantom World War~

青葉かなん

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第二章 神苑の瑠璃 前編

第十三話 剣聖結界 ―エーテルバースト― Ⅳ

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「何よもう、五月蝿いなぁ」

 寝室で寝ていたシトラはあたりの騒ぎに目を覚ました、隣には静かに寝息を立てるメルの姿がある。その寝顔をみて不機嫌だった顔に緩みが生まれた。

「本当、レイ君も罪な男の子になったわねぇ」

 笑顔でメルの髪の毛を撫でる、二度、三度撫でたところで外から一発の銃声が鳴り響いた。

「何、今の」

 轟音と共にシトラはベッドから飛び降りた、壁に掛けている自分の獲物を手に取りドアを開くとそこはまるで戦争でもあったかのようにボロボロになったリビングと形を残していない玄関が目に映る。

「……何が起きてるの?」

 とっさに表へ出る。目の前には吹雪の中戦う四人の姿が映った。

「無力化出来るならそれだけで良いじゃないか剣聖、それ以上する必要は無い!」

 睨みながらそうカルナックに銃口を向ける、だが状況は一変する。
 レイの体に付けられた怒涛の攻撃痕が見る見るうちに修復を開始した、深いダメージを追ったその体はまるで何事も無かったかのような回復速度で治癒していきレイの体を動かした。右手に握る霊剣に力をこめ、刀身を後ろに静かに引いた。

「先生、危ない!」

 声の正体はシトラだった。一瞬でカルナックの元へ近づき杖で霊剣を受け止めた。鉄の杖は法術を施されており鋼鉄の強度を誇る。そこに霊剣がぶつかり火花が散っている。

「まさかエーテルバースト!?」

 ガチガチと音を立てて火花を散らせる。そこにガズルが跳躍し右手に重力球を作りレイへと襲い掛かる。

「目を覚ませ!」

 攻撃がレイの頭へと襲い掛かる、少しの手ごたえを感じたガズルは次の瞬間奇妙な違和感を感じる。確かにあった手ごたえはすぐに消え目の前からレイが消えた。途轍もないスピードだった。瞬間的にレイは後方へと移動していた。とっさに頭を守ろうとしたのだろう。だが僅かながらでもガズルの攻撃を受けたレイは項垂れてフラフラとしている。
 ガズルは地面に着地するとレイの姿を探す、一瞬の事で彼を見失っていた。前方へ視界をやると項垂れているレイを目視しもう一度飛び掛かる。

「帰ってこい!」

 右腕を振りかぶって同じ攻撃をする、まっすぐに右手を伸ばしストレートを叩きこもうとするが何か目に見えない壁のようなものに阻止されてしまう。物理障壁だ。攻撃を弾かれたガズルはその反動で宙に舞う。項垂れていたレイは左手を前に出すとカルナックが見せた衝撃波をガズルに向かって放つ。それをまともに浴びたガズルは抵抗することもできずに大きく吹き飛ばされる。体制を立て直すことも許されず雪が積もる地面へと激突するが、雪がクッションとなり激突した衝撃はさほどでもなかった。だが真空の衝撃波を浴びたことで体中無数の切り傷ができた。

「障壁まで……こうなっては仕方ないですね」

 カルナックはガズルを庇う様に前に立った、シトラもカルナックの右に並んで立つ。二人は一度大きく深呼吸をすると目をつぶった。するとどうだろう、二人の足元に積もった雪が一瞬で空に舞い二人の髪の毛がバタバタとなびき始める。

「シトラ君、君まで付き合うことはないのですよ?」

 カルナックがそう言いながら左手を横に伸ばす。

「これ以上被害が出る前に私も協力します、先生にだけ任せたら彼本当に死んじゃいますから」

 シトラも同じように右手を横に伸ばす。二人を中心に風が暴れ、降っている雪をブワっと吹き飛ばした。ゆっくりと二人は目を開き、エーテルバーストを引き起こしている対象者を見つめる。
 後ろで成すすべもなく見ていることしかできないガズルとギズーは二人が一体何をしているのか全く分からなかった、途轍もない量のエーテルが二人を覆い、揺ら揺らとしたオーラのようなものが二人から出ている。そしてこの後カルナックとシトラが何をしようとしているのかを知る。

「インストール」「インストール」

 二人は同時に叫んだ。
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