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手始めに
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あの後、私は長の声もほとんど聞こえないほど舞い上がって個室を出て、さっそく森に入ろうとしたところをミレイとデュランに引き留められてものすごく説得された。
曰く、スキルが解らない間に猛獣に突進してってはもふもふを最大限もふもふする前に私の命がない可能性の方が高い、と。
回避率については結構自信があるんだけど、確かに一理あるなぁって思ったからその後二人から提案された内容に頷いた。
要は、家に居るほぼ無害なもふもふを相手に経験値を貯めつつスキルの実態を探ってみようってことだ。
「確かに、スキルの使用経験がゼロじゃ発動条件判ってても無理があるわね」
「そうよ! だから、まずはあんたから逃げ出す家畜たちを実験台にしなさい。その魅了の手だってどれくらい効果があるのか分からないし、そもそも触らないと発動しないんでしょ?」
「そうなのよねぇ……。ミレイの笑顔みたいに笑うだけでほいほい来てくれたらいいのにさー」
「お前が笑ってても何か企んでそうに見えるんだろうよ」
「デュラン酷い! ただもふもふを堪能したいって思ってるだけよ!」
「動物たちにはそれが恐怖なんだろ」
私のしみじみとした声に苦笑するミレイと呆れたように言葉を落としてくるデュラン。
幼馴染な上に散々色々やらかしている手前仕方ないとは思うけど、思うけど! 言葉にされると腹が立つから油断してる横っ腹にこぶしを突っ込んどいた。
ぐふって言いながらうずくまってるからざまあって思うわね。これでも家畜の世話だってちゃんとするのよ、私。
その辺のか弱い可愛らしい女の子とは多少逞しさが違う自覚はあるけど、こうじゃないともふもふを探し求めて森に入れないしね!
それはともかく、幼馴染の言うことはもっともだと思ったからまずは家に居る家畜たちでスキルの検証をすることにした。
とはいえ、うちの家畜たちは私の行動を知り尽くしているので半径二メートルくらいまで近づくと察知して逃げ出し始める。
ん……? ということはつまり? 私のスキルの効果確認にうってつけじゃない!
条件は触れることだけど、触れない内でも気にされるのかどうかとかその辺も検証しないと本当に武者修行しないと野生のもふもふなんて魅了できないってことだもの!
「あ、リーフが復活したわね」
「あれは悪だくみ考えてる顔だろうよ」
「そういうこと言うからリーフに脇腹えぐりにこられるのよ?」
「そんなこ、ぐふぅっ」
「そんなことあるのよ、デュラン」
全く、本当に失礼だよね、デュラン。幼馴染の気安さで脇腹一発で許してるんだから私ってば寛大。
ちなみに、本気でイラッとした時は脇腹に一撃じゃなくてこしょぐりの刑。デュランてば面白いことに脇腹をぐっと押されるより擽られる方が大の苦手で手をわきわきさせて見せるだけでびくりと身体を跳ねさせてざっと一メートルは後ずさるの。
ミレイはデュランを残念そうな目で見てるけど、人間一つや二つはダメなところがあるものよね。
さて、それはともかく、スキルの検証をすると決めたらまずは両親に相談しなくては!
「ミレイ! 私、家に帰って両親に相談してみるわ! 触れることが発動条件ではあるけれど、スキルって使おうとすればするほどレベルアップする場合もあるのよね?」
「そうね。スキルによっては使うことでコツが掴めたり、威力が上がったりという冒険者向きのものもあるし。でも、リーフのは……」
「だって! 呼べるように何か工夫しないと私Sランク冒険者並みに強くならないともふもふをもふもふできない!!」
「……そうね。そういう子よね」
力いっぱい叫んだら、一瞬遠い目をしたミレイが深く深く息を吐いて隣で復活したデュランも頭を振っていたけどしょうがないじゃない?
今だってかなり素早くはなってるのよ? うちの家畜たちも素早いから大変だとか両親も言うけどその家畜捕まえないともふれないもの。
一度張り付いたら離れないから家畜たちと格闘になるし。だから森に入るのは黙認されてるといえばそうなんだけども。
手を掲げたら寄ってきてくれるならその方が楽じゃない!
ほら、だって、そうしたら森の入り口で手を掲げて、もふもふ来いー、もふもふ来いーーって念じるだけで愛しのもふもふたちがわんさと……!!
夢が広がるわぁ……。あ、でもそういえば魅了の手というスキルは動物限定だったけど、どこまでなのかしら?
動物と言えば犬、猫、牛、豚、その他いろいろ居るけど、魔物とも区別されてるのは間違いないわよね。
でも魔物でも家畜化されたミンクとかが居るくらいだから動物に含まれるのかしら? その辺りも検証しなきゃ。
「やることいっぱいだわ! とりあえずは二人の言うことももっともだし、スキルの詳細を理解するためにも家の手伝いに力を入れるわね! ということで、今日から早速手伝うから帰るわ!」
「あ、後で牛乳貰いに行くっておばさまに伝えといて」
「了解ー!」
「倒れるほど無理するなよー」
「はーい!」
言うだけ言って駆け出した私の背中にミレイとデュランの声が聞こえたからそれぞれに返事をして家に駆けだす。
家に駆けこむと両親が驚いた顔をしてたけど、成人の儀はきちんと受けてきたことを伝えればホッとしていたのでどれだけかな。
まぁ、私ももふもふのためにかなりやらかしてる自覚はあるから仕方ないかな。
部屋に戻って汚れても良い作業着に着替える。一応は成人の儀っていうイベントだったから、ミレイからの厳命で綺麗めな恰好してたのよ! 本当よ?!
作業着は木の皮を揉んで繊維を取り出した糸で作ってある凄く丈夫な布地のツナギのズボン。中は薄い布で作ってある長袖のシャツを着こんでるから、ちょっと転んだくらいじゃケガなんてしないの。
まぁ、打ち身はがっつり出来るけど、それくらいはご愛敬でしょ?
「さぁ、やるぞー!」
紙の束を糸で束ねた物と羽ペンとインクを片手に、反対の手のこぶしを天井に突き上げて気合を入れたら行動開始だ。
と言っても、まずは家の手伝いをしなくちゃいけないから早朝から外の牧草地に放していた牛たちを小屋へ追い込むところから。
というのも今日は牛たちの健康診断がある。家畜でも、むしろ家畜だから健康には気を使わなくちゃいけないということでうちではひと月かふた月に一度健康診断をお願いしてる。
今日はその日で、私は成人の儀があったからその後は幼馴染たちとどこかへ出かけるんじゃないかと思われてたみたいだけど帰ってきたならって小屋への追い込みを頼まれた。
魅了の手の使いどころとか良く判らないけど、とりあえずスキルは置いといて追い込みをしようと思うので筆記具一式はカバンに入れて邪魔にならない場所に置いておく。
準備体操をして足を痛めない様にしたら、牛たちを追い込むためにそろそろと走り出す。
「うふふふふっ! もふもふしちゃうわよぉーッ!」
「ンモーーーーーーッ!!」
「モォーーーーーーゥ!!」
一番遠くに行っていた牛に追い付いてからが本番です!
両手をわきわきさせて抱き着く仕草をしながら叫ぶと、私の撫で回しを一度は経験している牛たちは一斉に慌てて走り出す。
私が居る方向が背後なので、当然ながら走り出す方向は小屋の中。
ちなみに、私は小屋に居るのが危険と思われると困るからと外でしか撫で回しをしたことがないので当然ながら牛たちが逃げ込むのは小屋の中なのである。
一度牧草地を小屋と反対方向に逃げた哀れな犠牲牛が居たわけなんだけど、もうね、一頭だけ逃げ出したからここぞとばかりに追いかけまわして捕まえたからね。
みんな小屋以外の安全地帯はないって学習したらしいのよね。家畜と言っても知能は高いんじゃないかと思った瞬間だったよね。
まぁ、それはともかく私がスキップしそうな勢いで走りながら追い込んでいくと連鎖して小屋に近かった牛たちも慌てて走り出す。
逃げろー! とでも言っていそうな鳴き声も聞こえるから、きっとこの声を聞きつけた子から順番に逃げ出してると思うわ。
「早く小屋に入らないと撫で回すわよぉーーーッ!」
「リーフはいつ見ても楽しそうねぇ」
「そうだねぇ」
ひゃっふーッ!! って楽しんで牛たちを追い回して小屋に追い込んでたら遠くから両親ののんびりとした声が聞こえてくる。
この両親、似たもの夫婦なんだけどなんでこのおっとりした人間から私みたいなハイテンションの子供が産まれるんだかと町の七不思議になりつつある。ほっとけ。
それはともかく牛たちを全部小屋に追い込んだか確認したところで後は両親にバトンタッチ。
まぁ、小屋に居る間は私も我慢を覚えたから牛たちだってビクビクはするけど逃げはしないしお世話は普通にさせてもらえるの。
させて貰えるんだけどお医者様が来るときに牛を興奮させたらちゃんとした記録が取れないからこの日は私、出入り禁止。
仕方がないからミンクの小屋に行く。こちらも私の姿を見た途端にザッ! と勢いよく隅に逃げていくんだけど今日は両親の許可は取ってるからスキル検証に使うわけです。
今日の健康診断は牛だけだっていうからね!
というわけで、まずは発生条件について検証することにする。
「うーんと、魅了の手、癒しの手、聲を聞く者だっけ。全部動物に触れないとダメみたいな条件だったけど、これは初期段階だからって可能性もあるのよね。特に聲を聞く者と魅了の手は触れなくても翳してとか傍に居るだけで発動してくれるようになったらベスト!」
紙の束の白い面にまずは私のスキルを書き出す。スキルは一度協会で判定してもらうと、それ以降は自分のスキルは自分で確認が出来るようになる。
どんな感じかなってやってみると頭の中で黒板に書かれていた文字が浮かんでくる不思議。
「うわぁ……こんな風になるの? 目の前に何か出るとかじゃなくて? うわぁ……あ、でもなんか朝教会で見たのとちょっと変わってる?」
目を閉じてスキルの内容が見たいって念じたら確かに頭の中に浮かんだ協会で見た魔道具と同じ感じの文字が書かれた板。
目を開けるとそれは霧散するから目を閉じて見るモノみたい。嫌だ、無防備。いや、それは置いておこう。
なんか見えた内容が一部変わっている気がする。もう一度見ようと目を閉じて、表示を見て確かに変わっているのを見つけた。
聲を聞く者の発生条件だ。触れることって書いてあったと思ったんだけど今は消えてる。まぁ、出来ることは変わらない。何となく意思が読み取れるだけだ。
これって別に長年一緒に過ごす動物相手だったら誰でも可能なことなんじゃないだろうか? そう思ってしまうスキル。
思わずミンクを見て、わたわたと慌ててるのを見ると怯えてるんだなって私じゃなくても一目で分かるよね。
「スキルの検証って難しい……。それに、この範囲が変更になった理由もさっぱりだ! もしかして強く願ったら変わるとかいうオチなの?」
私はそこから動けずしばらく、とりあえず考えるのを止めようときっぱりさっぱり諦めるまで頭を抱えて考えることになった。
曰く、スキルが解らない間に猛獣に突進してってはもふもふを最大限もふもふする前に私の命がない可能性の方が高い、と。
回避率については結構自信があるんだけど、確かに一理あるなぁって思ったからその後二人から提案された内容に頷いた。
要は、家に居るほぼ無害なもふもふを相手に経験値を貯めつつスキルの実態を探ってみようってことだ。
「確かに、スキルの使用経験がゼロじゃ発動条件判ってても無理があるわね」
「そうよ! だから、まずはあんたから逃げ出す家畜たちを実験台にしなさい。その魅了の手だってどれくらい効果があるのか分からないし、そもそも触らないと発動しないんでしょ?」
「そうなのよねぇ……。ミレイの笑顔みたいに笑うだけでほいほい来てくれたらいいのにさー」
「お前が笑ってても何か企んでそうに見えるんだろうよ」
「デュラン酷い! ただもふもふを堪能したいって思ってるだけよ!」
「動物たちにはそれが恐怖なんだろ」
私のしみじみとした声に苦笑するミレイと呆れたように言葉を落としてくるデュラン。
幼馴染な上に散々色々やらかしている手前仕方ないとは思うけど、思うけど! 言葉にされると腹が立つから油断してる横っ腹にこぶしを突っ込んどいた。
ぐふって言いながらうずくまってるからざまあって思うわね。これでも家畜の世話だってちゃんとするのよ、私。
その辺のか弱い可愛らしい女の子とは多少逞しさが違う自覚はあるけど、こうじゃないともふもふを探し求めて森に入れないしね!
それはともかく、幼馴染の言うことはもっともだと思ったからまずは家に居る家畜たちでスキルの検証をすることにした。
とはいえ、うちの家畜たちは私の行動を知り尽くしているので半径二メートルくらいまで近づくと察知して逃げ出し始める。
ん……? ということはつまり? 私のスキルの効果確認にうってつけじゃない!
条件は触れることだけど、触れない内でも気にされるのかどうかとかその辺も検証しないと本当に武者修行しないと野生のもふもふなんて魅了できないってことだもの!
「あ、リーフが復活したわね」
「あれは悪だくみ考えてる顔だろうよ」
「そういうこと言うからリーフに脇腹えぐりにこられるのよ?」
「そんなこ、ぐふぅっ」
「そんなことあるのよ、デュラン」
全く、本当に失礼だよね、デュラン。幼馴染の気安さで脇腹一発で許してるんだから私ってば寛大。
ちなみに、本気でイラッとした時は脇腹に一撃じゃなくてこしょぐりの刑。デュランてば面白いことに脇腹をぐっと押されるより擽られる方が大の苦手で手をわきわきさせて見せるだけでびくりと身体を跳ねさせてざっと一メートルは後ずさるの。
ミレイはデュランを残念そうな目で見てるけど、人間一つや二つはダメなところがあるものよね。
さて、それはともかく、スキルの検証をすると決めたらまずは両親に相談しなくては!
「ミレイ! 私、家に帰って両親に相談してみるわ! 触れることが発動条件ではあるけれど、スキルって使おうとすればするほどレベルアップする場合もあるのよね?」
「そうね。スキルによっては使うことでコツが掴めたり、威力が上がったりという冒険者向きのものもあるし。でも、リーフのは……」
「だって! 呼べるように何か工夫しないと私Sランク冒険者並みに強くならないともふもふをもふもふできない!!」
「……そうね。そういう子よね」
力いっぱい叫んだら、一瞬遠い目をしたミレイが深く深く息を吐いて隣で復活したデュランも頭を振っていたけどしょうがないじゃない?
今だってかなり素早くはなってるのよ? うちの家畜たちも素早いから大変だとか両親も言うけどその家畜捕まえないともふれないもの。
一度張り付いたら離れないから家畜たちと格闘になるし。だから森に入るのは黙認されてるといえばそうなんだけども。
手を掲げたら寄ってきてくれるならその方が楽じゃない!
ほら、だって、そうしたら森の入り口で手を掲げて、もふもふ来いー、もふもふ来いーーって念じるだけで愛しのもふもふたちがわんさと……!!
夢が広がるわぁ……。あ、でもそういえば魅了の手というスキルは動物限定だったけど、どこまでなのかしら?
動物と言えば犬、猫、牛、豚、その他いろいろ居るけど、魔物とも区別されてるのは間違いないわよね。
でも魔物でも家畜化されたミンクとかが居るくらいだから動物に含まれるのかしら? その辺りも検証しなきゃ。
「やることいっぱいだわ! とりあえずは二人の言うことももっともだし、スキルの詳細を理解するためにも家の手伝いに力を入れるわね! ということで、今日から早速手伝うから帰るわ!」
「あ、後で牛乳貰いに行くっておばさまに伝えといて」
「了解ー!」
「倒れるほど無理するなよー」
「はーい!」
言うだけ言って駆け出した私の背中にミレイとデュランの声が聞こえたからそれぞれに返事をして家に駆けだす。
家に駆けこむと両親が驚いた顔をしてたけど、成人の儀はきちんと受けてきたことを伝えればホッとしていたのでどれだけかな。
まぁ、私ももふもふのためにかなりやらかしてる自覚はあるから仕方ないかな。
部屋に戻って汚れても良い作業着に着替える。一応は成人の儀っていうイベントだったから、ミレイからの厳命で綺麗めな恰好してたのよ! 本当よ?!
作業着は木の皮を揉んで繊維を取り出した糸で作ってある凄く丈夫な布地のツナギのズボン。中は薄い布で作ってある長袖のシャツを着こんでるから、ちょっと転んだくらいじゃケガなんてしないの。
まぁ、打ち身はがっつり出来るけど、それくらいはご愛敬でしょ?
「さぁ、やるぞー!」
紙の束を糸で束ねた物と羽ペンとインクを片手に、反対の手のこぶしを天井に突き上げて気合を入れたら行動開始だ。
と言っても、まずは家の手伝いをしなくちゃいけないから早朝から外の牧草地に放していた牛たちを小屋へ追い込むところから。
というのも今日は牛たちの健康診断がある。家畜でも、むしろ家畜だから健康には気を使わなくちゃいけないということでうちではひと月かふた月に一度健康診断をお願いしてる。
今日はその日で、私は成人の儀があったからその後は幼馴染たちとどこかへ出かけるんじゃないかと思われてたみたいだけど帰ってきたならって小屋への追い込みを頼まれた。
魅了の手の使いどころとか良く判らないけど、とりあえずスキルは置いといて追い込みをしようと思うので筆記具一式はカバンに入れて邪魔にならない場所に置いておく。
準備体操をして足を痛めない様にしたら、牛たちを追い込むためにそろそろと走り出す。
「うふふふふっ! もふもふしちゃうわよぉーッ!」
「ンモーーーーーーッ!!」
「モォーーーーーーゥ!!」
一番遠くに行っていた牛に追い付いてからが本番です!
両手をわきわきさせて抱き着く仕草をしながら叫ぶと、私の撫で回しを一度は経験している牛たちは一斉に慌てて走り出す。
私が居る方向が背後なので、当然ながら走り出す方向は小屋の中。
ちなみに、私は小屋に居るのが危険と思われると困るからと外でしか撫で回しをしたことがないので当然ながら牛たちが逃げ込むのは小屋の中なのである。
一度牧草地を小屋と反対方向に逃げた哀れな犠牲牛が居たわけなんだけど、もうね、一頭だけ逃げ出したからここぞとばかりに追いかけまわして捕まえたからね。
みんな小屋以外の安全地帯はないって学習したらしいのよね。家畜と言っても知能は高いんじゃないかと思った瞬間だったよね。
まぁ、それはともかく私がスキップしそうな勢いで走りながら追い込んでいくと連鎖して小屋に近かった牛たちも慌てて走り出す。
逃げろー! とでも言っていそうな鳴き声も聞こえるから、きっとこの声を聞きつけた子から順番に逃げ出してると思うわ。
「早く小屋に入らないと撫で回すわよぉーーーッ!」
「リーフはいつ見ても楽しそうねぇ」
「そうだねぇ」
ひゃっふーッ!! って楽しんで牛たちを追い回して小屋に追い込んでたら遠くから両親ののんびりとした声が聞こえてくる。
この両親、似たもの夫婦なんだけどなんでこのおっとりした人間から私みたいなハイテンションの子供が産まれるんだかと町の七不思議になりつつある。ほっとけ。
それはともかく牛たちを全部小屋に追い込んだか確認したところで後は両親にバトンタッチ。
まぁ、小屋に居る間は私も我慢を覚えたから牛たちだってビクビクはするけど逃げはしないしお世話は普通にさせてもらえるの。
させて貰えるんだけどお医者様が来るときに牛を興奮させたらちゃんとした記録が取れないからこの日は私、出入り禁止。
仕方がないからミンクの小屋に行く。こちらも私の姿を見た途端にザッ! と勢いよく隅に逃げていくんだけど今日は両親の許可は取ってるからスキル検証に使うわけです。
今日の健康診断は牛だけだっていうからね!
というわけで、まずは発生条件について検証することにする。
「うーんと、魅了の手、癒しの手、聲を聞く者だっけ。全部動物に触れないとダメみたいな条件だったけど、これは初期段階だからって可能性もあるのよね。特に聲を聞く者と魅了の手は触れなくても翳してとか傍に居るだけで発動してくれるようになったらベスト!」
紙の束の白い面にまずは私のスキルを書き出す。スキルは一度協会で判定してもらうと、それ以降は自分のスキルは自分で確認が出来るようになる。
どんな感じかなってやってみると頭の中で黒板に書かれていた文字が浮かんでくる不思議。
「うわぁ……こんな風になるの? 目の前に何か出るとかじゃなくて? うわぁ……あ、でもなんか朝教会で見たのとちょっと変わってる?」
目を閉じてスキルの内容が見たいって念じたら確かに頭の中に浮かんだ協会で見た魔道具と同じ感じの文字が書かれた板。
目を開けるとそれは霧散するから目を閉じて見るモノみたい。嫌だ、無防備。いや、それは置いておこう。
なんか見えた内容が一部変わっている気がする。もう一度見ようと目を閉じて、表示を見て確かに変わっているのを見つけた。
聲を聞く者の発生条件だ。触れることって書いてあったと思ったんだけど今は消えてる。まぁ、出来ることは変わらない。何となく意思が読み取れるだけだ。
これって別に長年一緒に過ごす動物相手だったら誰でも可能なことなんじゃないだろうか? そう思ってしまうスキル。
思わずミンクを見て、わたわたと慌ててるのを見ると怯えてるんだなって私じゃなくても一目で分かるよね。
「スキルの検証って難しい……。それに、この範囲が変更になった理由もさっぱりだ! もしかして強く願ったら変わるとかいうオチなの?」
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