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110 わたしは死ぬのかな………?

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 きらきらな世界はあまりにも綺麗で、けれどわたしはどうしても感動することができなかった。
 わたしは、自分のことをと呼んでくれたフレイアさまに、ずっとずっと呼びたかった声を叫ぶ。

「フレイアかあさま!!」「フレイア母上!!」

 ぎゅっと全員の抱き寄せる力が強くなった次の瞬間、眩い光がわたしの目を襲った。全てが溶かされるような灼熱の光。目の前がチカチカとして、視界全てが奪われる。

 あぁ、死ぬのね。

 死ぬのはあっけないものだと苦笑したわたしは、ぎゅっと2人を抱きしめた。暖かくて、安心するわたしの大事な大事な居場所。ずっとずっと大切な、生まれた時からの居場所。
 正直に言って、早死にはしたくなかった。あの2人、わたしを1度も顧みてくれなかったお父さまと、わたしを散々虐待したお母さまと同じには、同じにだけはなりたくなかった。
 けれど、2人となら、フレイア母さまとジェフとならば、構わないかなと思った。2人となら、死ぬのも本望だと思った。単純な性格の自分に、いっそのこと笑いが持ち上がってくる。
 異能者でも、感情の起伏が残っているというのは、実際のところは珍しいことだ。けれど、フレイア母さまとわたしは奇跡的に感情がある程度残っている。だからこそ、ここまで親身になって、泣いて抱き合える。ぽっかぽっかとする心を持っていることができる。
 ふっと、自分は本当にという疑問が漠然と、けれど大きな壁のように思い浮かぶ。だが、そんなことを考えるのが無粋だと自分に言い聞かせてかぶりをふる。治癒の異能でも、即死級なら死ねるはずだと言い聞かせて、わたしは無邪気に笑う。
 ここまで純粋に、それでいて心から、心の底から笑えたのは、本当に久しぶりじゃないだろうか。ぽってりとした桜色のくちびるをふわっと持ち上げて、わたしは心からの言葉を呟く。言いたくて仕方がない言葉を呟く。

「だいすき………、」

 呟くと、身体が、心が、全てが温かくなってきてすりっと2人に擦り寄った。

▫︎◇▫︎

********************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

レティシアって書いてて何故か心がダークになっていきます………。
あれれ?これ描き始めた時期の私って、病んでましたっけ?
以上、ちょっとお疲れ気味な桜咲でした!!

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