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102 わたしはぶちまける

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 もしもこの場を抜け出す方法を知っているのならば、自分の命を差し出す勢いで進言してくれると、とてもありがたい。ちなみに、わたしは同じ立場に持って行かれても、ジェフが巻き込まれていない限りは、絶対に進言しない。我が身の方が可愛いのだ。

「………フィリップ、私の愚痴が言いたいから、後処理で散々働かされたあの件を言っているのだろうが、それは無理だぞ。」

 お兄さまが苦虫を噛み潰したような表情で、腕を組んで言った。

 ………これは本当のことを教える気ね………………。

 わたしは逃げ出したいのを必死に我慢して、微笑みを崩さないようにしてアドルファスお兄さまの後ろに立ったまま、王太子殿下の顔色を伺った。意気揚々と楽しげに揺れている瞳は、もう少しすれば地獄をみて細々と揺れることとなるだろう。

「残念ながら、私が無能な貴族どもを混乱と混沌の渦巻く地獄の底に叩き落としたわけではない。可愛い顔をして悪魔みたいにえげつないことを、実の父親の葬式で、満面の微笑みをたたえたままやってのけたのは、他ならないお前が愚痴っている相手であるそいつだ。」
「は?」
「え、えへへ?」

 えぇ、貴族が不正を犯したという証拠の書類を、お父さまお葬式でばら撒いたのはわたしだから、主犯格は一応わたしになるのよね………。

 ごめんなさいね?王太子殿下。わたし、お兄さま曰く、可愛い顔をした悪魔らしいの。

 わたしは穏やかに笑うと、もうどうにでもなれ!!といった気分で本心をぶちまけてしまうことにした。もし何かあっても、お兄さまやジェフリー、フレイアさまががサポートをしてくださるだろう。

「………だって、お父さまは散々やらかして下さっていたのですよ?本館の方にはそこそこやらかしの跡が残っていましたし、屋敷に来て間もないお兄さまよりも、わたしの方が書類の場所については詳しいと思いましたの。それに、お兄さまへの初めてのプレゼントで面倒くさい愚犬のお片付けは適切かと思ったのですが、間違っていたのでしょうか?あぁ、でも、わたしはあくまで真っ黒々助な過去を語った、暗殺者の手配書や裏帳簿、人殺しや強奪、脱税に、不倫などの書類をばら撒いただけで、血祭りにしてしまったのはお兄さまですわ。わたしは鉱山に送って死ぬまで働かせて腐り切った性根を叩き直すべきだって思っていましたけれど、お兄さまお1人で全部勝手にお掃除してしまったんですの。」

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
ちょっとというか、だいぶサイコなレティシアちゃん💦

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