冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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99 愚かなわんちゃん

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 そこで、1人だけこの場に似合わず、少しだけ古い流行の地味なドレスを着ている人たちを見つけて、わたしは真っ白な扇子でその人たちを軽く指しながらフレイアさまに尋ねた。

「………じゃあ、あの男爵家もお金に苦労しているのかしら?確か、3代前の伯爵が不正を働いたとかで、降格と領地を没収されていたわよね?」

 顔と家名を一致させながら、わたしは慎重に尋ねた。

「いいえ、あの子爵家は苦労していないわ。靴を見て。しっかりとした老舗の名店のもので、素材がいいしょう?ドレスは爵位相応のものだけれど、小ぶりのアクセサリーの類は全部イミテーションではなくて、本物の宝石。お金には一切困っていない証ね。」
「へー、」

 わたしはすうっと瞳を細めた。

「………ねえ、あの男爵家って何か新しい事業を始めたのかしら?確か、しがない家具屋を営んでいたって記憶しかないのだけれど………?」
「そう言われてみれば変ね。最近羽振りがいいって聞いていたのだけれど、違和感しかないわ。どうして領地も何もなくて、しがない商会しか持っていないのに、ここまでお金に余裕があるのかしら?それに、なぜ今日はドレスがあんなに見窄らしいわけ?」

 扇子を口元に持っていって眉を顰めたであろうフレイアさまに、わたしじゃ楽しくなってきてニヤっと笑った。こう言うブラックなお話が、ことの他わたしは好きなようだ。

「………裏帳簿がありそうですね?」
「今度人を派遣しておくわ。でも、いいの?アレはマイグレックヒェンの派閥の人間でしょう?」
「………不正をする人間がマイグレックヒェンに必要ですか?」

 わたしは思わずキョトンとしてフレイアさまに向けて首を傾げてしまう。

「いいえ、必要ないわね。」
「えぇ、………我が家に必要なのは、忠実なわんちゃんだけだもの。」

 ふふふっと笑ったわたしに、フレイアさまが明らかに引いた顔をした気がしたが、わたしには関係ない。だって、実際に選別するのは他ならぬ利害のみを計算する我が兄アドルファスお兄さまだ。どうせお兄さまは、使えない愚かなわんちゃんを全てを綺麗さっぱり切り捨てるに決まっている。
 ここ数ヶ月、お兄さまは見事に使えない、愚かなで滑稽なわんちゃんを全て処分して、傲慢で救いようのない先代の作った大きな大きな膿を出し切ってしまったのだから。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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