冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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97 わたしは蹴散らす

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 そこからは筆舌し難い狸と狐の化かしあいが始まった。わたしはにこやかに笑ってお兄さまからの流れ弾を叩き落としながら、時折わたしも流してしまう弾をジェフリーが叩き落とすというのをずっと繰り返していた。ダンスパーティーであることもあって、わたしはお兄さまが離れた一瞬の隙を狙って何度もダンスを申し込まれるが、見た目麗しい貴公子たるジェフリーに、お兄さまが離れるわずかな間だけエスコートされていることもあって、男たちはすぐにしょぼしょぼとどこかに行ってしまう。
 まあ、お兄さまとジェフリーがいる中でも堂々と求婚してくるぐらい度胸のある方でないと、わたしは踊らないけれど。………これなら、一生うざったらしい連中と踊らなくて済みそうね。次に誘ってこようとしたバカの前で、わたしはくすくすと笑いながら、世間話の途中で言った言葉のようにして、ジェフリーに話しかける。

「ふふふっ、わたし、お兄さまとジェフリーの目の前で堂々と誘ってくる人としか踊ろうと思いませんのよね。2人の前で求婚する気概くらいなくては、わたし、自分の身を任せられませんもの。」

 顔色を青ざめさせた男数人がひょろひょろと倒れて、休憩室へと運ばれていく。
 ………なんともまあポッキリ折れやすいお心だことで。というか、同じ空気を吸っていることすら不愉快ね。弱い男はお呼びじゃないっていうの。というか、わたしはジェフリーよりも強い男というのが最低ラインなのだけれど?
 お兄さまがカツカツと革靴を鳴らして戻ってきて、意地の悪い表情を浮かべた。お兄さまの鉄仮面がから微表情を読めるようになってしまうなんて、わたし、どんどん人間離れしてきているわよね。

「随分派手にやっているな、レティシア。」
「………あら、それはお兄さまもではないですか?」
「………そうだな。あちらの方にフィリアザフィロ公爵がいた。挨拶に行くついでに、匿ってもらえ。流石に疲れてきただろう」
「では、お言葉に甘えて。ご機嫌よう、お兄さま。」

 わたしはそういうと、ジェフリーにエスコートをしてもらってフレイア様の元へと向かった。今日も、深い緑色に金色の刺繍が施されたマスクにドレスを着ている。いつまで経っても、旦那さまのことを思い続けるフレイアさまは控えめに言ってとても素敵だ。

「ご機嫌よう、フレイアさま。」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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