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95 2人でおめかし
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優しい焦茶色の髪をおめかしをする際のいつも通りの髪型、つまり右側だけを上げた髪型をしたジェフに、わたしは幼馴染として笑いかけた。お洋服も今日は貴族令息ガルシア侯爵令息としての服を着てピシッと決めている。
濃紺の礼服に白いラバリエール、リボンの中心にはわたしが送ったアクアマリンの大粒の宝石が輝いている。
「レティー、幼馴染の僕でいたいのは山々だけど、今日はガッツリ編み込んであげたいから、もう私に戻りますね。」
「ん、右側だけ前髪から編み込んでくれたら、それ以外はお任せするわ。そこにあるレースリボンとアクアマリンのピンを自由に使っていいみたいよ。あぁ、あと、そのティアラをつけられる髪型にしててょうだい。」
「承知いたしました。」
ジェフリーはそれからシュルシュルと真面目な顔つきで髪を結い込み、どんどん豪奢な髪型にしていく。リボンを巻き込んでみたり、アクアマリンのヘアピンをところどころに刺してみたりして、虹色に輝く髪に色彩を足していく。
「はい、完成。」
そして最後に、わたしの頭にきらきらと輝くティアラを乗せた。予想通り重たいが、我慢できないレベルではない。わたしは満足げに頷いて、髪が編み込まれていないところがないくらいにふわふわくるくるに見えるシニヨンをした髪をしげしげと見つめた。
「ありがとう、ジェフ。………流石の出来栄えよ。」
「ん、僕としても久方ぶりに満足のいく出来栄えだね。レティーはいっつも縛らせてくれないから。」
「………だって邪魔じゃない。それに、わたしの髪はあなたのおもちゃじゃないわ。」
「玩具だったら最高なのに。」
肩をすくめた彼に対して、わたしはふうっと溜め息をついた。彼は昔からそうだ。弁えているようで弁えていない。けれど、それも不快だと思わない範囲内での行動。賢すぎて、時々怖くなってしまう。
「………そろそろお兄さまがくる時間かしら。」
「そうじゃないかな?あ、報告だけど、僕は引き続き、レティシア・マイグレックヒェン公爵令嬢の従者としてパーティーに出るから、そのつもりで。」
「あら、ガルシアとして出るかと思っていたわ。」
顎に人差し指を当てて、こてんと首を傾げたわたしに対して、ジェフはふっと肩をすくめた。なんだか含みのある微笑みだ。後ろにうっすらと真っ黒な雲が見えるのは気のせいかしら?
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
濃紺の礼服に白いラバリエール、リボンの中心にはわたしが送ったアクアマリンの大粒の宝石が輝いている。
「レティー、幼馴染の僕でいたいのは山々だけど、今日はガッツリ編み込んであげたいから、もう私に戻りますね。」
「ん、右側だけ前髪から編み込んでくれたら、それ以外はお任せするわ。そこにあるレースリボンとアクアマリンのピンを自由に使っていいみたいよ。あぁ、あと、そのティアラをつけられる髪型にしててょうだい。」
「承知いたしました。」
ジェフリーはそれからシュルシュルと真面目な顔つきで髪を結い込み、どんどん豪奢な髪型にしていく。リボンを巻き込んでみたり、アクアマリンのヘアピンをところどころに刺してみたりして、虹色に輝く髪に色彩を足していく。
「はい、完成。」
そして最後に、わたしの頭にきらきらと輝くティアラを乗せた。予想通り重たいが、我慢できないレベルではない。わたしは満足げに頷いて、髪が編み込まれていないところがないくらいにふわふわくるくるに見えるシニヨンをした髪をしげしげと見つめた。
「ありがとう、ジェフ。………流石の出来栄えよ。」
「ん、僕としても久方ぶりに満足のいく出来栄えだね。レティーはいっつも縛らせてくれないから。」
「………だって邪魔じゃない。それに、わたしの髪はあなたのおもちゃじゃないわ。」
「玩具だったら最高なのに。」
肩をすくめた彼に対して、わたしはふうっと溜め息をついた。彼は昔からそうだ。弁えているようで弁えていない。けれど、それも不快だと思わない範囲内での行動。賢すぎて、時々怖くなってしまう。
「………そろそろお兄さまがくる時間かしら。」
「そうじゃないかな?あ、報告だけど、僕は引き続き、レティシア・マイグレックヒェン公爵令嬢の従者としてパーティーに出るから、そのつもりで。」
「あら、ガルシアとして出るかと思っていたわ。」
顎に人差し指を当てて、こてんと首を傾げたわたしに対して、ジェフはふっと肩をすくめた。なんだか含みのある微笑みだ。後ろにうっすらと真っ黒な雲が見えるのは気のせいかしら?
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