冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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93 わたしは気に入られているらしい?

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 び、びっくりしたー。
 というか、アドルファスお兄さまに人の表情が読める能力があったことの方が驚きだわ。
 急いでフレイアさまたちの待つお部屋に急いで逃げ込んだわたしは、へなへなと座り込みながらも、顔がわずかにニヤつくのを抑えることができなかった。

「レティー?どうしたの?」
「………さっきお兄さまに出会ったの。そしてね、わたしの表情を読んでみせたの。それでびっくりしてしまって………、」
「へえー、じゃあ僕の予想の方が当たりだね。」
「?」

 わたしは身体を起こしてカウチにぼすっと座り込みながら、首を傾げた。ジェフは時々わたしの斜め上の発想をするから、お話についていけなくなるのだ。

「公爵閣下がレティーのことを気に入っているっていうこと。」
「………、」

 ジェフは何を言っているのかしら。突拍子もないにも程がある。わたしは呆れた瞳で彼のことを見つめながら、わざとらしく肩をすくめて見せる。そのくらいしないと、わたしの感情は伝わらないことが多いからだ。自然に身についたことだが、これがなければ、わたしは微笑みを浮かべるだけの人形となってしまう。

「………そうだといいわね。それじゃあ、ゲームを再開しましょう。」

 その日は空が明るくなるまでゲームを続けて、わたしが次に目覚めた時には、フレイアさまはもう帰ってしまっていた。
 それからジェフの過保護はどんどん度を増していき、わたしはお客さまと会うことも、お兄さまと1人で会うことも無くなった。ただ与えられる仮初の平穏に身を任せ、お兄さまとジェフが睨み合うのをくすくすと見守って過ごし、そして、あっという間にわたしの社交界デビューの日がやってきた。

「お嬢様!お綺麗ですわ!!お髪はどういたしますか!?編み込み?シニヨン?それともお姉さんらしくハーフアップ?」

 大きな鏡の前には微笑みを寸分も動かさないお人形のような少女が佇んでいる。ノースリーブの真っ白なレースでできたエンパイアラインのドレスには、金糸のきらきらと乱反射する糸で大柄の鈴蘭が刺繍されている。首元で輝きを放つアクアマリンのチョーカーの紐も、今日はドレスに合わせて真っ白なレース生地だ。アクセサリーの類はいつもつけているチョーカーに合わせたのか、純白のレース手袋の上にはアクアマリンでできたブレスレット、レースで覆われたピンヒールにも飾りとしてアクアマリンがついていて、アンクレットもアクアマリンだ。耳元でしゃらしゃらと揺れているイヤリングも同じくアクアマリンで、机に置かれている重そうなティアラもアクアマリン。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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