冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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89 わたしは苦笑する

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「………いや。」
「え?」

 わたしのぼそっとした言葉に、お耳がびっくりするくらいに良いジェフは目をまん丸にした。わたしは嫌なものは嫌だと言えるすごい子なのだ。

「………ジェフとは離れ離れにならない。絶対に。だから、わたしには熱いお茶に慣れる必要ない。」
「えぇー、」

 不満そうな彼の声に、わたしはきゅっと眉間に皺を寄せる。こんな反応をされれば、わたしも普通に傷つく。

「………ジェフは、………ジェフはわたしのこと、嫌い?」

 少しだけ思わぬところで声がうわずってしまった。やっぱりわたしは、彼には、彼にだけは少しだけ弱い。

「好きだよ。」
「っ、」
「好きだからこそ、僕は君に熱いお茶に慣れておくべきだと言っている。」

 ジェフは間髪入れずに、好きという言葉を連呼した。幼馴染として友達として好きだと言われているのだと分かっていたとしても、どうしてもわたしのお顔は赤く染まってしまう。わたしはお風呂上がりで未だにほかほかしているお手々を頬に当てて、必死になって顔を隠した。目の前の席からくすくすとしたフレイアさまの笑い声が聞こえる。

「ふふふっ、ジェフ、あなた何回レティーに告白するの?」
「へ?」
「『好きだよ、好きだからこそ、』だったかしら?熱烈ねー。」
「っ、」

 失態に気がついたジェフもお顔も真っ赤に染まる。そんなに恥ずかしいと感じるのならば、好きという言葉を連呼しなければ良いものを、と、わたしは他人事のように遠い思考で考えた。

「ご、ごめん。レティー。」
「………気にしないで。わたしはあなたが心配してくれてるって思ったら嬉しかったから。それに、わたしもジェフが大好きよ。」

 わたしは小さく微笑みを浮かべてアクアマリンの瞳を細めた。首を傾げて微笑むのは、ジェフを見上げる時の癖だ。

「見ました?フレイア様。うちのレティー可愛すぎません!?」
「えぇ、そうね。私のレティーはいつも可愛いわ。」
「そうですよねー。」
「ねー。」

 微妙に噛み合っていない会話に、わたしは苦笑した。
 これでいて、本人たちは噛み合っていると思っていると思っているこの会話は、本当に傍目から見ると不思議で不思議で仕方がない。どこをどう見たら、これが噛み合っていると言えるのだろうか。
 わたしには一生分かることのなさそうな世界のお話だ。

「………平和ね。」

 お兄さま訪れないこのお部屋は、馬鹿話ができるくらいにとても平和だ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

新作、
『仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪』を開始しました。

紹介文は

 愛良と晶は仲良しで有名な双子だった。
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 落ち込むどころか舞い上がって喜んでいた。
 そして、意気揚々と自分の夢を叶えてお針子になって自由気ままなスローライフ?を楽しむ!!
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「あぁ、なんと美しい人なんだ。絹のように美しく真っ白な髪に、サファイアのような知性あふれる瞳。どうか俺の妃になってはくれないだろうか」

 なんと婚約破棄をされた時と真反対の言葉でマリンソフィアだと気が付かずに褒め称えて求婚してくる。

「あぁ、もう!!こんなうっざい男、裸の王子さまで十分よ!!」

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