冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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88 わたしは飲めない

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「フレイア様もいかがですか?」
「いただくわ。」

 幼馴染ジェフは唐突にわたしの自慢の従者ジェフリーの顔になって、美しい日の打ちどころのない所作で美しくシトラスのフレーバーティーを淹れてくれた。悔しいくらいに上手で、思わず見惚れてしまう。

「お熱くなっておりますので、十分に注意して飲むようお願い申し上げます。」

 恭しく頭を下げる仕草も、胸に手を当てる所作も、お手本のようだ。まるで教本と向き合っているかのような心地になってしまう。

「っ、」
「うん、美味しいわ。」

 熱くて身体をビクッと身体を跳ねさせた。舌を出してヒーヒーしていると、ジェフリーが冷たいお水を渡してくれる。このお茶はあと10くらいしないと、わたしには飲めないらしい。わたしと違ってなんの躊躇いもなくごくごく美味しそうに飲んでいるフレイアさまが羨ましい。

「ジェフも座って飲みなさい。従者モードオフよ。」
「………僕のお仕事はボタンでオン・オフするようなモードで切り替わるとでも思っているのですか?気持ちの問題ですよ。。」
「はいはい、さっさと座んなさい。レティーが舌を火傷していて可哀想でしょ。慰めてあげなさい。」

 地味に失礼なことをガシガシ言っているフレイアさまはさておき、本当に困ったような苦笑いを浮かべているジェフは少しだけムカつく。

「僕は『熱いから気を付けて』ってちゃんと言ったよ?」
「………………こんなに熱いとは思っても見なかったのよ。」

 魔法を使って舌を癒してから、わたしはジェフに恨めしい気分で返事をした。彼はわたしに紅茶を筆頭としたあったかい飲み物を出す際、決まって少しだけ低めのするする飲むことのできる温度で淹れてくれる。けれど、今日はそれをしてくれなかったのだ。恨めしくもなってしまうし、恨み言も言いたくなってしまう。

「レティー、飲み物を淹れるのは僕やエミリーだけじゃないんだよ。君の好みを知らない人が淹れることもある。」
「………………、」
「そんな時、君は今日みたいになんの躊躇いもなく流し込もうとして火傷を負ってしまうかもしれない。今からでも遅くないから、ちょっとずつ熱い飲み物をちびちび飲む練習をした方がいいと、僕はそう思うよ。いつまでも、僕1人が君を守り続けるなんてこと不可能だからね。」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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