冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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83 迷惑メイドの特技

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「承知いたしました。」

 メイド長が深々と頭を下げると同時に、控えめなノックの音が室内に響いた。

「め、メイド長。フィリニャ、ふわわ、間違っちゃった。えーっと、フィリアザフィロ公爵閣下をお連れいたしました。」
「入りなさい。」
「し、失礼いたします。」

 クラリーがフレイアさまを連れて、メイド長室にビクビクしながら入ってきた。今日は歴代最短記録でフレイアさまを捕獲もとい、発見できたのではないだろうか。わたしの口元に小さな笑みが浮かんだ。

「ごめんなさいね、レティー。また迷っちゃったの。」
「でしょうね。………クラリー、フレイアさまを見つけて連行してきてくれてありがとう。大変だったでしょう。」
「い、いえ、行くとこ行くとこぶつかってしまうのでそこまでは………。」

 クラリーは恐縮し切って震えてしまっている。姉妹揃ってわたしの声で泣くという失態はできればしないでほしいが、これは可能性が非常に高そうだ。迷惑な姉妹なことこの上ない。

「そうそう、この子とは気が合うみたいで、行く先々でどんなに迷っても見つけてくれるのよ。」

 だが、そんな考えもすぐにふっ飛んでしまった。だって、自由気ままなフレイアさまに行く先々で出会えるなんてとんでもない偉業だ。大体メイド10人かかりで1時間近く屋敷を総捜索しなければ発見は難しいというのに。

「へえー。………ジェフリー、これがあなたの言っていた、この子の使い道?」
「はい、そうです。お気に召しましたか?」
「えぇ、とっても。」

 わたしは今とんでもなく悪役な微笑みを浮かべてしまっていることだろう。けれど、それもこれも全て1~10まで全部このクラリーという興味深くて楽しいメイドさんのお陰だ。

「ふふふっ、とっても楽しくなりそうね。ねえクラリー、あなたは人探しが得意なの?」
「は、はい。というか、探し物がいっつもすぐに見つかるんです。」
「へえー、………じゃあ、ちょっと前にわたしが無くしたイヤリングを探してきて。サファイアの付いている細いシャラシャラしたやつ。お仕事ついでに見つけたらでいいから。」

 これは試験だ。彼女の能力が本物か偽物か見極めるための。

「意地が悪いわね、レティー。私はあなたをそんな子に育てたつもりはなくってよ。」
「ふふふっ、フレイアさまに似ただけよ。」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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