冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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81 割れたお皿は

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「ごめんなさい、ごめんなさい!!」
「………謝らなくていいから。それより怪我は?」
「あり、ません。」

 メイドは未だにわんわん泣いてしまっている。まるでわたしがいじめたみたいに見えるではないか。周りに人がいないのが不幸中の幸いだ。

「………どのお皿?」
「菫のやつです。」

 わたしの脳内に死んだわがままお母さまのお気に入りだったすみれの描かれたお皿とティーカップ、ソーサー、そしてティーポットが思い浮かんだ。どんなにひどい癇癪を起こしても、唯一投げなかった奇跡の品だ。

「あぁ、アレね。………元々処分予定のものだから、気にする必要ないわ。」

 お守り代わりに手元に残していたが、見なくて済む方が清々するだろう。それに、そういう因縁付きの品物は持っていると停滞を呼び寄せる。早く処分するに越したことはないだろう。処分するきっかけをくれたこのメイドには感謝をしないといけないくらいだ。

「メイド長にはわたしから伝えておくわ。もう休みなさい。」
「は、はい。」
「あ、そうそう、フレイアさまは見た?」
「ごめんなさい。分からないです。」
「そう、ありがとう。」

 去っていくメイドにひらひらと手を振ったわたしは、くるりと振り返ってジェフリーと向き合った。顎に手を当てて思考をまとめているとき、彼の表情を見るのが1番落ち着くのだ。

「………わたし、頑張れた?」
「えぇ、ちゃんとお話しできていましたよ。」
「………そう、フレイアさま、どこにいると思う?」
「分かりませんね。まあ、こちら方面に来ていないのは確かです。片っ端から聞き込み調査をしていきましょう。まずはメイド長のところからですね。」
「………えぇ、行きましょう。」

 ツインテールをひらりと揺らすようにターンをすると、視界の端で濃紺のリボンがひらりと揺れた。まるで猫さんに捕まえられずにひらりと逃げていく、紐状の猫さんのおもちゃのようだと思った。

「………今のわたしとフレイアさまもそうなのかしら。」

 ぽつりと呟き、歩き慣れているはずなのに違う場所に見える我が家の廊下を、わたしはてくてくと歩いて行った。すれ違う人からの奇異の視線は、全て笑顔で包み隠して無視をする。本当に、わたしは今何をやっているのだろうか。

「メイド長、少しいいかしら。」
「!! 少々お待ちください!!」

 この家のメイド長は、比較的わたしに友好的だ。優しい彼女ならば、わたしのお願いを聞いてくれるだろう。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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