冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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79 フレイアさまとお兄さまの邂逅

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「………そうですか。フレイアさま、こちらわたしの兄です。」
「アドルファス・マイグレックヒェンだ。妹が世話になっている。」
「あら、ちゃんとご挨拶できるのね。噂では精神が未熟のぼんぼんって聞いてたけれど、レティーを任せられそう。レティーはもちろんだけれど、新しいマイグレックヒェンの若造も、先代公爵夫妻よりはマシかしら?」

 わたしとお兄さまはおそらく同時に眉間に深い深い皺を寄せた。何故なら、わたしたちにとって、あの2人と比べられることは最大にして最高の嫌がらせだからだ。碌でなしでクズの父親と、わがままで傲慢で手のつけようのない母親、比べられて喜ぶような特異な人間がいるのならば、是非とも拝んでみたいものだ。

「………フレイアさま、あの2人と比べないでほしいと何度も言っているはずよ。」
「………………あのクズ共は、クズが故に、しかるべきところにしかるべきように屠られたのです。私とは比べないでいただきたい。」
「あら、息ぴったりそうね。じゃあご挨拶も終わったし、レティーと楽しい時間を過ごさせてもらうわ。今日はお世話になるつもりだからよろしくね。マイグレックヒェンの若造。」

 フレイアさまは言いたいことを言いたように言って去っていった。方向から言って、わたしのお部屋に向かったのだろう。彼女のことを側から見ていると、時々彼女が異能者であることをわたしは忘れてしまう。けれど、さっきのフレイアさまの傲慢で自分勝手なところは、どこからどう見ても異能者だった。世界を傍観している、世界の変化を娯楽と捉える異能者だった。

「………わたしも失礼させていただきます。ご機嫌よう、お兄さま。」
「失礼いたします。」

 わたしとジェフリーはお兄さまに頭を下げてフレイアさまの後を追った。適切な足音と肩の力を抜いた歩き方は、傍目からはわたしが武術に精通して見えなくしているだろう。

「………………ねえジェフリー、後で狐さんの特徴と一致する人間を探すわ。戸籍帳を持ってきて。」
「承知いたしました。」
「………フレイアさま、迷っていないといいのだけれど。」
「大丈夫かと。いつもの侍女がっいておりましたので。」
「そうね。」

 フレイアさまは比較的迷子になりやすい。興味のある方向に突き進んでいくから、気がつくと知らない場所に迷い込んでしまうのだ。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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