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71 わたしの自慢の従者

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「………アレを使ったの?」

 フレイアさまはわたしが異能者であることを知っている。そして、どのようなものなのかも知っている。だからこそ、彼女だけは伏字にしても察してくれる。

「うん、………でも、わたしからのお叱りじゃ反省してくれないみたいだから、フレイアさまからも叱ってやってください。」
「ジェフ、レティーは心配性なのだから怪我しちゃダメでしょう?」
「うっ、でも、危険に突っ込んで行ったレティーも悪いと思います。あと、勝手にお名前を使いました。ごめんなさい。」

 ジェフはガバッと頭を下げた。自分の怪我よりも、お名前を借りたことの方が重要になっている気がするけれど………。

「後で何があったかお話ししてくれる?」
「………はい。」

 わたしはフレイアさまに圧力のある笑みで言われて、たじたじになりながらもこくんと頷いた。
 フレイアさまの尋問は厳しいし、一切の躊躇ちゅうちょ躊躇ためらいもないので怖いのだ。

 真夏の日の光を遮るためのパラソルが付いているお茶会の席に着くと、ジェフが今回のために用意したローズヒップティーを、目にも楽しくなるように華やかに淹れてくれた。相変わらずの恐ろしい腕前だ。彼が異能者ではないというのが本当に理解不能だ。

「ジェフは従者としての能力が物凄く向上したわね。」
「ありがとうございます。」

 従者としての礼をとったジェフリーは、甘やかな微笑みの仮面を身につけた年齢に不相応な少年だった。

「あなたって本当に異能者っぽいわよね。」
「恐れ多いことです。」
「レティーもそう思うでしょう?」
「うん、わたしもいっつもそう思ってるわ。自慢の従者なの。」

 ジェフリーは本気で困ったのか微笑んだまま眉を下げた。本当に器用なものだ。わたしにはいつまで経っても出来そうにない高度な芸当だ。

「レティシアお嬢様が優秀なので、ついて行こうと必死になっているだけですよ。」
「………ジェフリーの方が髪を結うのも、お茶を淹れるのも、マッサージをするのも、体術や剣術、暗器の扱いは上手よ。」

 拗ねたようにほっぺを膨らませて言うと、ジェフは苦笑した。

「お勉強などの教養ではいくら努力しても勝てません。」
「得意分野が違うもの。」
「ぐはっ、」

 遠くから人が倒れる音がした。振り返るとジェフリーの手には投げナイフが4本握られている。
 元々は5本持っていたはずだ。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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