冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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67 兄の興味の先と後悔

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「いただきます。」

 わたしはクリームスープにクロワッサン、サラダといういつもの朝食に手をつけた。当然ながら、サラダには一切口をつけない。スープやお菓子にしてもらったら平気なのだが、生のお野菜はどうしても苦手なのだ。
 お腹を空かせているジェフリーのためにも素早く朝食を終えたわたしは、両手を胸の前で合わせた。

「ごちそうさまでした。」
「………野菜は食わないのか?」
「え?」

 今日初めて交わされた言葉がお野菜を食べるか否かということに、わたしは目をぱちくりとさせた。

「………生のお野菜、というか、そのままの形をしているお野菜が苦手なのです。スープにしたり、お菓子にしたりしたら食べられるのですが………。」
「………………」
「………アドルファスお兄さま?」
「………随分と甘やかされて育ったようだな。」

 わたしはふんっと鼻を鳴らしながら言われたお兄さまの言葉に、カチンときた。

「………昨日は1皿完食いたしましたわ。ですので、決して全く食べないというわけではございません。わたしはこれにて失礼致します。」
「………………」

 売り言葉に買い言葉とはまさにこういことを指すのではないかと思うほどに、わたしは顔をぎゅっと歪めて兄に対して意味の分からないことを吐いて立ち去ることになってしまった。

▫︎◇▫︎

 わたしは自室に戻ってカウチの上でドタバタと手足をバタつかせていた。

「レティー見事に失敗したね~。」
「うぅー、………完っ全に、やらかしたわ。」

 ほくほくとした表情で朝食を食べているジェフは、楽しそうに笑って他人事のように言った。わたしがアドルファスお兄さまに切り捨てられたら真っ先に自分が危険に晒されるのにも関わらず、彼は何故ここまで飄々としていられるのだろうか。

「レティー、安心していいよ。公爵閣下は、簡単にレティーを切り捨てられないから。」
「むぅー、………そんな訳ないわ。だってお兄さまわたしを無視したんだもの。わたしのことが不愉快に違いないわ。」
「………なんでこんなに似た者兄妹なんだろう………。」
「何か言った?」
「いいや、何にも。」

 ジェフが何かをぼそっと呟いたが、わたしには聞き取ることができなかった。そこそこ大切なことのはずだから、聞き取れなかったことが痛い。本当に、最近のわたしはついていない。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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