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65 うきうき
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▫︎◇▫︎
翌朝、朝からわたしは、今日はフレイヤさまが来てくださるということに浮き足立っていた。
髪を整えてもらっている間に思わず鼻歌を口ずさんでしまうほどには、本当に機嫌がよかった。
「………♪~~~♪♪」
「ご機嫌ですね、お嬢様。」
「………ここにはしばらく誰も来ないわ、ジェフ。」
「ーー分かったよ、レティー。」
「………そうね。わたしは今とても機嫌がいいわ。自分でもびっくりするくらいに、本当に機嫌がいいの。」
わたしは思わずふんわりと微笑みを浮かべた。幼い頃から育児放棄な両親に代わってフレイヤさまはわたしの面倒を見てくださっていた。
「…フレイヤさまはね、わたしにとってお母さまのような存在なの。」
「そうだね。レティーにとって育ての親であるフレイヤ様は、母親みたいだよね。」
ジェフは穏やかに微笑んで、わたしの髪にくるくるとカーラーをかけた。
「髪、カールさせないとダメなの?」
「今日はまだお葬式から帰っていないお客様が多いから、しっかり身なりを整えないとダーメ。」
「は~い、」
びっくりするくらいにストレートなわたしの髪は、ちょっときつめにカーラーをかけてもあまり癖は付かず、毛先だけふんわりさせたような感じに仕上がった。
「髪型はどうする?」
「………今日はツインテールにするわ。おっきな濃紺色のリボンで縛ってくれる?」
「分かった。耳の上くらいでいいかな?」
「うん。」
今日はまだお葬式から帰っていないお客さまもいるということで、わたしは濃紺のワンピースを選んでいた。白いレースがふんだんに使われたふりっふりのデザインは、今だからこそ着ることができるデザインだ。
「ちょっと幼い?」
「………そういう演出よ。」
「まぁ、レティーは可愛いから何着ても似合うからいいけどね。」
わたしの髪を綺麗に縛り上げ終えたジェフは、にこっと笑ってお世辞を並べた。そして、普段のわたしを知っている人ならば、圧倒的な違和感を抱くであろう出立に、わたしは満足げに頷いた。
「………猫ちゃん完璧。」
「あ、それで猫被ってるつもりなの?」
「純粋な幼子って設定。」
「………そっか……、純粋な、ぶふっ、幼、子、ふふ、あはははは、ははは、あははは!!」
似ても似つかない自分に変身するからこそ、猫をかぶるというのではないかとわたしは首を傾げた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
翌朝、朝からわたしは、今日はフレイヤさまが来てくださるということに浮き足立っていた。
髪を整えてもらっている間に思わず鼻歌を口ずさんでしまうほどには、本当に機嫌がよかった。
「………♪~~~♪♪」
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「………ここにはしばらく誰も来ないわ、ジェフ。」
「ーー分かったよ、レティー。」
「………そうね。わたしは今とても機嫌がいいわ。自分でもびっくりするくらいに、本当に機嫌がいいの。」
わたしは思わずふんわりと微笑みを浮かべた。幼い頃から育児放棄な両親に代わってフレイヤさまはわたしの面倒を見てくださっていた。
「…フレイヤさまはね、わたしにとってお母さまのような存在なの。」
「そうだね。レティーにとって育ての親であるフレイヤ様は、母親みたいだよね。」
ジェフは穏やかに微笑んで、わたしの髪にくるくるとカーラーをかけた。
「髪、カールさせないとダメなの?」
「今日はまだお葬式から帰っていないお客様が多いから、しっかり身なりを整えないとダーメ。」
「は~い、」
びっくりするくらいにストレートなわたしの髪は、ちょっときつめにカーラーをかけてもあまり癖は付かず、毛先だけふんわりさせたような感じに仕上がった。
「髪型はどうする?」
「………今日はツインテールにするわ。おっきな濃紺色のリボンで縛ってくれる?」
「分かった。耳の上くらいでいいかな?」
「うん。」
今日はまだお葬式から帰っていないお客さまもいるということで、わたしは濃紺のワンピースを選んでいた。白いレースがふんだんに使われたふりっふりのデザインは、今だからこそ着ることができるデザインだ。
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「まぁ、レティーは可愛いから何着ても似合うからいいけどね。」
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「………猫ちゃん完璧。」
「あ、それで猫被ってるつもりなの?」
「純粋な幼子って設定。」
「………そっか……、純粋な、ぶふっ、幼、子、ふふ、あはははは、ははは、あははは!!」
似ても似つかない自分に変身するからこそ、猫をかぶるというのではないかとわたしは首を傾げた。
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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
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