冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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61 わたしとジェフの企み

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「な、何か粗相をしてしまったのでしょうか?」

 入室してきた若いメイドは困惑したような声を上げて、視線をうろうろとさせた。
 ………最近入ってきたメイドね。身に覚えがないわ。

「………いいえ、なんでもないわ。気にしないで。」
「で、ですが、あのー………。」
「大丈夫ですよ、クラリーさん。私とお嬢様は違うことで笑っていただけですから。」
「そ、そうなのですか………。」

 目に見えて安心したメイドを退室させ、わたしとジェフはまたもやくすくすと笑い声を上げた。

「あの娘、クラリーという名前なのね。」

 ジェフを横目に見ながらぽつりと呟くと、頷きと共に珍しく疲れ切った声が返ってきた。

「1週間前に孫の面倒を見ると言って退職したメイドの後任として入ってきた娘だよ。………一生懸命なところはいいんだけど、その必死さが思いっきり空ぶっちゃっている娘なんだよねー。」
「ジェフが文句を言うってことはよっぽどなのね。」

 無理をしていることが簡体に分かる空笑いにこのお屋敷におけるある程度の権限を持つわたしは、彼の負担になるのならば辞めさせようかと考え始めた。

「メイドの中には明らかに仕事を取り上げたり、無視したりする人もいるくらいには、ね。」

 けれど、彼の次の返答からは哀愁が滲んだものが出てきて、気にしている理由が違うことを悟った。

「そう………。無能は要らないって言いたいところだけれど、彼女、訳ありよね。」
「あぁ、ろくでなしの父親の所為でお取り潰し寸前の男爵家の娘だよ。さらに、母親が病気で医者料が半端ないらしいよ。」

 ろくでなしの父親はさておき、母親の病気というのに引っ掛かりを覚えたわたしは、大きな溜め息を吐いた。

「それは、………辞めさせられないわよね………。」
「何か彼女が得意なことを探さないといけないね。」

 ニヤリと笑った彼の表情に、彼に何か作戦があることを知ったわたしはお嬢さまの仮面を被り、ジェフリーがこの屋敷で好き勝手に動きやすいように命をくだした。

「………彼女のことを、いえ、クラリーのことを任せられるかしら、ジェフリー。」
「仰せのままに、お嬢様。」

 含みのある悪ーい笑みを浮かべたわたしたちは、次の瞬間に部屋に響いたノック音に、身体をビクッと硬直させた。

「次こそ、かしら………。」
「だろうね。」

 緊張を含む声音を出しながら、わたしとジェフは扉を見つめた。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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