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56. わたしはちょっと不機嫌
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ジェフが退出していった後、有頂天になっていたわたしはやっとのことで、ジェフの休息の少なさに思い至った。『休まないとダメよ。』とわたしが言っても、いつも彼は休まない。今回もそうだろう。
今日だけで何回もお灸に据えなくてはと思った事柄があったが、わたしは実際にお灸に据える気はなかった。だが、彼の体調に関わる事柄ならばそれは別だ。わたしの魔法でなんとかなってしまうが、だからこそ彼は自分の身体を粗末にする傾向がある。今回お兄さまに斬られたのだって、その傾向が強くなってしまっていることによって起こった事柄だろう。
「……はぁー、……今回ばっかりは美味しいお茶なんかで許してあげない。」
ソファーにあったアクアマリン色の蔦柄の反物で作られたクッションをポフポフとパンチしながらわたしは呟いた。ちなみに、このクッションに使っている生地は東の大陸でお洋服に使われているという、機の美しい反物で作られている。触り心地が良いのと、見た目がきらきらとしていて綺麗だからと、フレイアさまがわたしの誕生日プレゼントとして2年前に輸入してくださった布地だ。本来の使い方ならば、お洋服を仕立てるのが正解なのだが、あいにくわたしは成長期だからすぐに着れなくなってしまうということで小物や雑貨を作ることにしたのだ。
このクッションはその時に作ってもらった物のうちの1つだ。本当にアクアマリンを砕いて染色しているらしい糸で織ったこの布地は、怖くてお値段が聞けていない。
安めに見積もったとしても、おそらく立派なお屋敷が1つ買えてしまうだろう。
ブルブルと身体に悪寒が走ってしまったのは仕方がないと思う。
うん、お値段は考えないようにするのが1番よね。
見た目はとっても綺麗で肌触りもとっても良いもの。
最高の品よ。
次にフレイアさまにお会いする日に思いを馳せて、クッションをぎゅうっと抱いたわたしは、これ以上自分の身体を無下にさせないために、わざと痛みを感じさせるように酷い怪我の回復を後回しにしているジェフが戻って来るのを待った。
▫︎◇▫︎
コンコン
ちょっとだけ癖のあるノック音に、わたしは頬を緩めた。
「……どうぞ。」
「失礼いたします、お嬢様。」
声と扉の開くともに、フルティーな紅茶の華やかな香りが漂ってきた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
今日だけで何回もお灸に据えなくてはと思った事柄があったが、わたしは実際にお灸に据える気はなかった。だが、彼の体調に関わる事柄ならばそれは別だ。わたしの魔法でなんとかなってしまうが、だからこそ彼は自分の身体を粗末にする傾向がある。今回お兄さまに斬られたのだって、その傾向が強くなってしまっていることによって起こった事柄だろう。
「……はぁー、……今回ばっかりは美味しいお茶なんかで許してあげない。」
ソファーにあったアクアマリン色の蔦柄の反物で作られたクッションをポフポフとパンチしながらわたしは呟いた。ちなみに、このクッションに使っている生地は東の大陸でお洋服に使われているという、機の美しい反物で作られている。触り心地が良いのと、見た目がきらきらとしていて綺麗だからと、フレイアさまがわたしの誕生日プレゼントとして2年前に輸入してくださった布地だ。本来の使い方ならば、お洋服を仕立てるのが正解なのだが、あいにくわたしは成長期だからすぐに着れなくなってしまうということで小物や雑貨を作ることにしたのだ。
このクッションはその時に作ってもらった物のうちの1つだ。本当にアクアマリンを砕いて染色しているらしい糸で織ったこの布地は、怖くてお値段が聞けていない。
安めに見積もったとしても、おそらく立派なお屋敷が1つ買えてしまうだろう。
ブルブルと身体に悪寒が走ってしまったのは仕方がないと思う。
うん、お値段は考えないようにするのが1番よね。
見た目はとっても綺麗で肌触りもとっても良いもの。
最高の品よ。
次にフレイアさまにお会いする日に思いを馳せて、クッションをぎゅうっと抱いたわたしは、これ以上自分の身体を無下にさせないために、わざと痛みを感じさせるように酷い怪我の回復を後回しにしているジェフが戻って来るのを待った。
▫︎◇▫︎
コンコン
ちょっとだけ癖のあるノック音に、わたしは頬を緩めた。
「……どうぞ。」
「失礼いたします、お嬢様。」
声と扉の開くともに、フルティーな紅茶の華やかな香りが漂ってきた。
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