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55. 呼び方

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 わたしの小指にするりと自分の小指を絡めたジェフは、満足そうに微笑んで目を細めた。
 そして、あの時と同じようにどちらからともなく額をくっつけた。

 何年経っても変わらないこの関係は、わたしにとって何者にも変えられないかけがえのないものだ。

 ーーあの約束から4年、律儀なジェフは約束通りにどんどん強くなってわたしを守り続けてくれている。ジェフは極力わたしに嘘を吐かないし、約束も守ってくれる。だから、さっきの誓いを立てた彼は、尚の事彼らしくなかった。いつもの彼ならば、あれほど簡単に誓いなんて立てない。

「……懐かしいね。」
「ふふ、……多分、同じこと考えてた。」
「そっか……。僕、ちゃんとレティーのこと守れてるよね?」
「…もちろんよ。ジェフはずっとわたしの騎士さまだよ。」

 遠い目をした後、わたしを正面から見据えたジェフに対して素の笑顔がするりと出てきた。

「えー、王子様がいいな。」
「……分かったわよ、ジェフリー殿下」

 ぷくぅーっと頬を膨らませたジェフを、王子の敬称で読んでみた。

「え、なんか嫌だ。」
「……むぅー、せっかく呼んであげたのに。」

 今度はわたしが頬を膨らませる番になってしまった。

「う~ん、やっぱりレティーには“ジェフ”って呼ばれたいなって。」
「……それはわたしがジェフに対して常々思っていることね。」
「え、それは仕方なくない?」
「……ないわね。」

 表向きわたしとジェフはお嬢さまと専属従者だ。
 本来ならば愛称で呼びあったり、気軽にお話しして良い間柄ではない。

「まぁでも、レティーは僕のことジェフリーじゃなくてジェフって読んでもいいと思うけど?」
「……ジェフって呼んじゃうと、どうしてもわたしの気が抜けちゃうから……。」
「あぁ……、成る程。うん、じゃあ今まで通り、表ではお嬢様とジェフリー呼びにしておこう。」
「……そうね。」

 わたしとジェフはお互いに困ったように笑いあった。

「それでは震えも収まったことですし、お嬢様、私はお茶とお湯を用意して参りますので、ごゆるりとお過ごし下さい。」
「……一言余計よ。……ジェフリーも、しっかり休まないとダメよ。」
「では、ともにお茶をいただいても?」
「うん!!」

 この時のわたしの表情は、キラキラと輝いてしまっていた気がする。
 けれど、嬉しかったのだから仕方ない。
 ジェフの淹れるお茶はとても美味しいし、ジェフと一緒にお茶をいただくのはわたしにとって至福の時なのだから。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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