冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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50. わたしのお家

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「……これにて私は失礼する。各々先代公爵閣下のご尊顔を確認するなりなんなりして勝手に帰ってれ。」
「「………………。」」

 踵を返したお兄さまにわたしジェフリーは無言で深々と頭を下げた。わたしはわざと臣下や淑女のお辞儀ではなく、手をお腹の前で組んで頭を下げる、召使いのお辞儀を選択した。自分は兄よりも下の人間であるという明確な格差を周りに周知させるためだ。

 普通のご令嬢はがこのお辞儀を取ったのならば、おそらくはマナーを知らなかったとなるだろうが、わたしの場合は司祭さまが去るときにカーテシーを披露しているので、そうはならない。これまでの言動から、あえてそのお辞儀を選択したとしか考えられないからだ。

「………わたしもこれにて失礼するわ。何か用がある者は使用人を通してわたしかお兄さまに伝えてちょうだい。しっかりと対応させてもらうわ。行きましょう、ジェフリー。」
「はい、お嬢様。」

 お兄さまの時同様に深々と頭を下げた人々を横目に、わたしは大きくて豪奢な扉を後にした。

 会場の外である廊下には中と違って閑散とした空気が漂っていた。
 護衛の騎士たちも入場した際と同じように寸分狂わず、突っ立っている。目の保養にもならない見慣れたつまらない光景だ。
 けれど、至る所から聞き慣れない大きな声が聞こえる。

「御屋敷がこんなに騒がしいのは2年ぶりですね。」
「……これからはこの光景が当たり前となるでしょうね。」
「お嫌なのですか?」
「………。」

 無言は肯定を意味しているようなものだが、わたしは何も答えられなかった。
 本来ならば当たり前の光景を嫌だとは言ってはいけない気がしたし、これは、この嫌な気持ちになる理由は、完全なるわたしのわがままであるからだ。

 言ってはいけない。

 心の中の賢い自分がそう叫ぶのだ。
 このお屋敷は、王都に建てられているこのお屋敷は、王家主催のパーティーの際当主らが滞在したり、王都でパーティーを開いたりするためのお屋敷だ。
 今までの気に入っていた閑散とした雰囲気が間違っていたのだ。本来ここは、豪奢で華やかで明るい雰囲気の似合う、そんな場所なのだ。
 わたしの思考が間違っている。
 当主であるお父さまがずっとここに来ずに、タウンハウスを利用していたのも、パーティーを開かなかったのも全部全部わたしとお母さまの所為なのだ。

 元からここは、わたしとジェフリーの住む2人だけの穏やかなお家ではないのだ。
 あってはいけないのだ。

 だから、この気持ちは決して言葉にしてはいけない。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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