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48. 震える司祭さま

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「……此度は我が家に来ていただき感謝する。今は時間がない。さっさと先代公爵を弔ってくれ。」
「あ、あのー……。」
「……質問は聞かない。疾くと弔え。」

 お兄さまの元にたどり着くと、震え上がって困っている司祭さまと、絶対零度の瞳を司祭さまに向けるお兄さまの推し問答が行われていた。

「ま、マイグレックヒェン公爵令嬢ぉ~……。」
「……お兄さまのお望み通りにしてちょうだい。」

 司祭さまの懇願を一掃してしまったのは申し訳ないけれど、今のわたしはお兄さまに従うのが1番いいの。

 ごめんなさいね?

 あんぐりと大きなお口を開けてしまった司祭さまは、ただの間抜けなおじさまにしか見えない。

「で、ですが……。」
「……聞こえなかったの?お兄さまはお忙しいから、早めにお葬式を終わらせてと言っているの。」
「……お前も殺されたいのか?」
「ひぃ!!」
「………。」

 おじさまがプルプル震えて上目遣いをしても、可愛いどころか、気持ち悪いわよね。

「……さぁ、司祭さま、先代マイグレックヒェン公爵閣下たる、偉大なるお父さまの弔いをお願いするわ。お父さまは長時間の拘束を嫌っていらっしゃったから、くれぐれも急いで、ね?」

 わたしは後半に嘘を織り混ぜて言った。

 わたしのお父さまたる先代公爵閣下は長時間の拘束を嫌っていた。けれど、これはわたしが実際に見て知っていたのではなく、お父さまの執事から聞いたことがあるだけである。ご存知の通り、わたしは父親に会ったことがないのだから、確かめようにも確かめられなかったのだ。
 だが、先程の会話ではわたしが父親の性格をよく知っているふうに話した。嘘に誠を混ぜ込むと、嘘だとは気付かれにくい。ましてや、今日初めて出会った者同士ならば、尚のこと気がつくことができないだろう。

 急いだお葬式、これは先代マイグレックヒェン公爵閣下のご意思だと。

 わたしは司祭さまにこう言ったのだ。ならば、司祭さまはわたしとお兄さまに従う他ない。司祭は死人の意思を踏みにじってはいけないからだ。もしも、死人の意思を踏みにじれば、その司祭は神々の教えに反いたことになる。死んだ人間を尊重するという大切な神々の教えに。

「………ーーしょ、承知、いたしました。」
「「………。」」

 怯えた雰囲気の司祭さまは可哀想だけれど、これでお兄さまのご機嫌がこれ以上悪くなる可能性は低くなるわよね……?

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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